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ケフカについて書きます。二次創作あり(文章) 小話「数年前121~123」更新しました。(2015年8月9日)
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 ケフカも私の前では、小さい頃から知っているケフカだった。
お互い、今していることの酷さといったら、人の恨みを幾ら買っても買いきれないほどだろう。
そうしなければ生きていけないと言っても、果たしてそれが免罪符となるだろうか。

私とケフカは魔導注入を受け、魔法を使うことが出来る。
その影響は一部には知られる所だが、それは私にもあった。
稀にどうでも良くなって、全てを壊したくなる。
理性が働いていれば問題無いのだが、暴れ馬に乗っているようで、制御出来ないことがある。
気付いた事だが、ケフカのそれは、私よりも激しい気がする。
それでも研究を進め、地位を確立していくその姿に尊敬の念を抱かずにはいられなかった。
出来ることならこの人の側で助けになりたい、幼い時からそう思っていた。

ジドールを訪れていたある時。
アクセサリーを売る店。
道すがら、偶然目に留まった。
キレイな指輪だった。
「やすらぎの指輪」そう名を冠された指輪を、私は値段も効果も大して確認せず、衝動的に買った。

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「ケフカ、指輪よ。ジドールで買ったの。キレイでしょう?」
ベクタに戻った私は真っ先にケフカの部屋を訪れ、得意気に渡した。
「ふうん。」ケフカは手に取り、まじまじと眺める。
「やすらぎの指輪というの。これを付ければ気分が落ち着くんじゃないかしら。」
「セリス、それはバーサクやコンフュを防止するための物さ。対魔法用だね。」
僕らには効果は無いよ。そう言った。
まさか指輪の事を知っているとは思わなくて、私はしどろもどろになる。
「良いじゃない。もしかしたら、バーサクをかけられることがあるかもしれないでしょう?」
ケフカがそんなヘマをするとは思えなかったが、口をついで出てしまう。
「ありがとう。付けるかどうか分からないけど、セリスが拗ねると後々厄介だから、いただいておくよ。」
ケフカは笑って指輪を引き出しにしまった。
本当は身に付けて欲しかったが、それでも受け取って貰えた事に満足した。

「さあ、もう行くんだ。」いつまでも帰ろうとしない私を、ケフカは促した。
「分かったわよ。…じゃあまたね。」
ケフカの目は優しく、私も見つめ返した。

数日後、服のポケットに指輪を忍ばせたケフカがいた。
それに触れるとセリスの顔が浮かんで、少しだけ、気持ちが和らいだ気がした。
そんな効果は無いはずなのに。
セリスへの想いに気付かされる。
機嫌の良さそうなケフカを気味悪げに見つめる兵の姿が、いくつか見られた。
 

 その日、彼は機嫌が良さそうに見えた。
鼻歌混じりで廊下を闊歩している、目立つ服装をした男。
歩きながらも、あれこれ思い浮かべているようで、落ち着きが無かった。
すれ違う人間は、慣れているようだったが、目を合わせるどころか、見る事もしなかった。

「ただいまー。」勢いよくドアを開けると、彼は部屋の奥に向け声をかけた。
少女がいた。椅子に行儀良く座っている。
背筋はきれいに伸びていて、手はきちんと膝の上に置いてある。
彼は少女の目の前まで来て、話しかけた。
「待ったかい?」
彼はしゃがみこんで少女の顔を見上げたが、彼女は真正面を見たまま、何も言わない。
「そうかー。」
彼はありもしない少女の応えに相槌を打った。
「僕におかえりなさい、って言ってごらん?」
彼は上機嫌そのものといった様子で促した。
「おかえりなさい。」
少女は言われたとおりに、彼の顔を見て、言った。
「良く言えたねー。」そう言って笑みを浮かべ、彼は少女の頭を乱暴に撫でた。
そのせいで長く下ろされた彼女の髪が少し乱れたが、彼はあまり気にしなかった。
「ちょっと待ってて。これ脱いでくるから。」彼は自分の上着を指して言った。
脱ぎながら急いで移動したもんだから、テーブルにドンとぶつかった。

その間も、少女はずっと同じ体勢、同じ表情で座っていた。

 

  少女の額には金属の装飾具が嵌められていた。
あやつりの輪、といった。
身に付けた人間の意思を奪い、意のままに操る事の出来る道具。
元々は軍事用の名目で、彼ケフカが作った物だった。
少女は操られていた。

「元気にしてたかい?」
「ふーん、そう?それで?」
彼は何も言わない少女から、今日あったことを聞いて、会話をした。
途中、火傷しない温度のお茶を飲み、飲ませながら、それは続いた。
いつの間に少女は、彼の方を向いていた。

「そうだね。今度はね、北の国に行こう。」
彼は仕事のパートナーでもある彼女に、今後の予定を話し出した。
「君ならきっとやり遂げられる。」「ナルシェなんて君の力にかかれば、イチコロさ。」
彼女が不安がっていたので、彼は褒めて自信を付けさせようとする。
「どうしたの?そうか、女の子だもんね。少し怖いかもしれないな。」
「大丈夫、君はとっても強いんだ。」
彼は少女の手を取り、不安を取り去ってやるかのように、元気付ける。
「君は僕と同じだからねー。」
彼は立ち上がって、少女を眺めた。

「僕みたいな持ち主がいて、君は幸せだよ。」
そう呟いて、彼はゆっくりと、少女のその小さな顔を両手で包み込む。
あたたかな、体温。
ほんの少しウェーブの掛かった髪の毛を潜り、白く細い首に手のひらを添える。
そして力を込めた。
握りつぶすつもりで、ぎりぎりと締め上げた。
それでもあやつりの輪を付けられた少女は、身じろぎもしなかった。
ただ、少し苦しそうに、口を開けた。

少しして、彼は手に込められた力を抜いた。
真っ赤になっていた少女の顔色が、少しずつ元に戻る。
死んでしまうのが惜しくなった。
もう遊べなくなるのが、嫌だった。

「そうだ。今日は何をして遊ぼうか?あ、かわいい服を見つけたんだ。似合うかなー?」
気を取り直して彼は言う。
少女もまた、いつもの表情でおとなしく座っていた。
彼は包みを開け、買ってきた物を広げて見せた。
赤を基調とする花の模様が散りばめられた女の子らしい服。
それはケフカから少女に贈られた5番目の服だった。

 まったりと茶を飲む、ケフカとセリス。
ズンズンと足音が近づいてくる。
「おい、ケフカ。陛下は私を呼んでなどいないと仰っていたぞ!それにお怒りでもないと!」
ばぁん、と扉を開け、レオが踏み込んでくる。

2人が談笑するテーブルには空になった菓子の箱。
「はあ?何を言ってるんだ?」
ケフカはカップを持ったまま、顔だけ向けて言った。
「何をって…。さっき、陛下が私に対して大変お怒りになっている。
だから、すぐにでも謝りに行けと言ったではないか。だから私は…。」
レオは菓子箱をちらりと見て言った。
「そんなことを言った覚えはないな。」
ケフカは言った。
「そんなはずはない。頂き物の菓子を置いてまで向かったんだ。
それに、残しておいてくれと、あれ程言ったのに。」
「菓子は別に良いだろ。セリス、私はそんなことを言ったか?」
聞かれたセリスをレオは注視した。
「いいえ。」
セリスは無情にも首を振った。

セリスの仕草にレオは目を見開いた。
「なっ!君も「本当ですか!?それは行かれた方が良いかもしれないですね」と言ってたじゃないか。」
レオは高い声を出して、セリスの真似をする。
その気味悪さに、目を背けながらケフカは口を開いた。
「レオは確かに、私たちに言われたんだな?」
「ああ。」レオは答える。
「本当に?」
「本当だ。」
「本当の本当に?」
「ふざけるのも大概にしろ。」レオは怒りでふるふると震えている。
「ふざけているのではない。」ケフカは急に真面目な表情をした。
「もしかして、それはドッペルゲンガーかもしれない。」
ケフカは言った。
「ドッペルゲンガーだと?」
「そうだ。」
「まさか、我々の身にそれが降りかかるとは…。」
ケフカは青い顔をして言った。
セリスも神妙な表情をしている。
「レオ、信じてくれ。もうそれしか考えられない。」
「どうしたんだ。そんなに大変なことなのか。」
2人の様子にレオはジリジリと後ずさる。
「謎の人物ドッペルさん…。」
「えぇっ。」
ケフカが呟くと、セリスは口元に手を当てよろめいた。
「ドッペルさんは、我々人間の影の部分…。それが出てきたということは…。」
「出てきたということは…。」
「出てきたということは…?」
「……。」
コンコン。ノックがされた。
ドアに注目する面々。
がちゃり。ドアが開いた。

 

ドアから覗いたのは将軍○○だった。
その場の雰囲気にそぐわぬ様子で彼は話かける。
「あれ?皆おそろいで。もうネタバレしちゃいました??」
「ネタバレ?」レオはそちらを振り向いて言った。
「やだな。エイプリルフールですよ。あー僕も参加したかったなぁ。レオさん、こういうのも良いですよね?」
「エイプリルフール?」事態を把握しきれず、レオは目を点にした。
「来年こそ、呼んで下さいよ?じゃあ。」
と言って、将軍○○は去った。

「エイプリルフール…そういうことか…。」
やっとの思いでレオは口にした。
「すまん。騙すつもりだった。」
ケフカは言った。
「私は毎年騙されているな。」
去年、一昨年の事を思い出し、レオは言った。
「ああ。」
ケフカは答え、レオは遠い目をしていた。
「私の菓子は一つも無いのか。食べたのは、セリス、君だな。」
レオはふらりとテーブルに寄り、手をさ迷わせる。
「すみません。おいしかったです。」
セリスは言った。

「毎年毎年…。」
レオは両手をついて、がっくりとうな垂れた。
「悪かった。」
「こっちにも良いのがあるから。」
ケフカは謝罪し、隠していた菓子箱を差し出した。
「呆れて食欲は無いが、貰っておこう。」
レオが片手でごっそりと鷲づかみにしたのを、ケフカは見逃さなかった。
「しかし、わざわざ陛下に会わせるなんて。」
お怒りになっても知らんぞ。
レオは言った。
「大丈夫さ。陛下は今日、機嫌が良い。その程度で気分を害されることはない。」
ケフカは言った。
「来年は騙されないからな。」
レオは菓子の袋を開けながら言った。
「無理だ。お前は何を言っても信じるし、嘘もつけない。」
「ほっとけ。」ケフカが言うとレオはそっぽを向いた。
「褒めてるんだが。」
「いらん。」
「その菓子は口がパサパサになるぞ。茶でも…」
「ふぃらん」レオは口から菓子をぼろぼろこぼした。
「ほら、茶。」
「・・・。ありがとう。」レオは呟く。
「いいえ。」ケフカは言った。
セリスはそんなやりとりを見ていた。

そんなある日の昼下がり。

 

瓦礫の塔の戦いから数年が経ったある日、私はツェンの町にいた。
アルブルグへ行く船乗りに頼み、この近辺で降ろしてもらったのだ。
私はかつて塔があった、あの場所を訪れるつもりだった。
かつてケフカがいた場所。

私の肩書きと名は、罪人の証だった。
元帝国将軍セリス・シェール。
帝国が無くなった今、戦争に加担した人物として、表に出られる人間ではなくなっていた。
実際この手でたくさんの命を奪い、計り知れない傷を多くの人に与えてしまった。
私は小さい頃から帝国で育った、生粋の軍人だ。
居場所を失い、寄るものの無くなった私は、自然と人から隠れるようになった。
長かった髪を切り、顔を隠す格好をする。
苦しむ人がいる限り、永久に罪は消えない。
私は何にすがって生きていけば良いのか。

数年ぶりに訪れたツェンは活気に溢れ、人々は笑顔に満ちていた。
あの崩れてしまった家の場所にも、今は新しく立派な家が建てられている。
多くの建物に空いていた穴も補修され、無くなっていた。
この町は、今は無き帝国首都ベクタに近かった。
それ故、以前は良く訪れた馴染みの土地であり、今なお知り合いが数多くいる町だった。
私は長居すべきでないと考えていたので、すぐに去るつもりで出口へ向かった。
偶然、そこに子供の花売りがいた。
貧しい格好をしていた。孤児かもしれなかった。
私はそこで、白い花で出来た小さな花束を1つ買い、町を出た。
 

目的の場所に着くと、あの瓦礫の山はきれいに片付けられていた。
そこには植物が青々と茂っていた。
塔など初めから無かったかのようだった。
皆、辛い過去よりも、希望に満ちた未来に思いをはせるのだ。
私は跪いて花束を置き、そして、黙祷を捧げた。
その時だった、強い風が吹き付けて、私は思わず顔を上げた。
夏の眩しい日差しが目に入り、過去を思い出す。
あの時と同じ空。

あの日、ケフカは何日も研究所に詰めていた。
私はその日も、空いた時間に部屋を訪れていた。
ケフカは仕事が思うようにはかどらず、ずっと難しい顔をしていた。
もう、何時間、何日同じ事をあの机で、考えているのだろう。
「一緒に休憩取りましょうよ。何飲みたい?」その様子に、私は見かねて申し出た。
「いらない。そこにあるのは、もう全部飽きた。」
私が今手にしているお茶も含め、棚にある全ての飲み物に飽きたらしい。
ケフカはこちらを見ずに、あーあ、と小さく背伸びをして、分厚い本に手を掛けた。
「難しそうな本ね。」私は近づいて、覗き込んだ。
「ああ。何で昔の人間はこんなに回りくどい書き方をするんだ。」
はぁ、とため息をついて、また文字を睨めた。
左手にある辞書を何度もめくりながら、数分が過ぎたが、ケフカは立ち上がった。
「駄目だ。進まない。セリス、お茶を入れてくれないか?」
「良いわ。」私は飲んでいたお茶を置いて、立ち上がる。
カップを手にしたケフカは、ありがとう、と言った。
飲みながらも、仕事が進まない苛立ちからか、ため息が止まらない。
窓の外の天気の良さとは反対に、部屋の中はどんよりとしていた。
「外の空気を吸いに行かない?」私は言った。
「暑いし、疲れるからいいよ。」ケフカは気が乗らないようだった。
「ずっと部屋の中だと、息が詰まるでしょう。気分転換も必要よ。」
ちょっとで良いから。
私は強引に連れ出した。
 

 「暑い。」
扉から出た途端、ケフカは暑さと強い日差しに嫌な顔をして、呟いた。
研究所には芝の敷地に樹木が少し生えた広場があった。
「その上着、脱いだら?」暑苦しい服着てるから暑いのよ、と思ったが言わなかった。
ケフカは億劫そうに、袖の長い重たい服を脱いで、芝の上に置く。
「涼しい。」意外そうな顔をして言った。
「でしょ。」
日差しは強く気温も高かったが、風があって不快ではない。
私は外の空気が気持ち良くて、背伸びをする。
ふと振り返ると、ケフカは地面に寝転がっていた。
「子供の時に、こんなことをしたような気がする。」
ケフカは空を見上げて言った。
「そうね。」
私も横に腰を掛けて、寝そべる。
芝と土の匂いがした。
青く澄んだ空と、流れる雲。明るい日差し。
「良い天気ね。」
「うん。」
ケフカは気持ち良さそうに、大きく深呼吸をし、それから目を閉じた。

そうだった。あの時はそうして2人でしばらく時間を過ごしたのだ。

私は現実に戻った。
目の前には何もない広い野原。
そういえばあの時の仕事はどうなったんだっけ。
そんなことも思いながら、再び天を仰ぐ。
あの時と同じ、空はとても青く澄んでいて、雲が流れていた。

私は、何年も空を見上げていなかったことに気が付いた。

私が忘れなければ良いんだ、そう思った。
私はこの人と長い時を過ごしてきた。この人は私の一部。
あの時間を否定することは出来ない。
思い出せばいつでも会えるのに、そうしなかったから寂しかった。
独りで投げ出されたと思っていたのは間違いだった。

私は顔を上げて、その場を後にした。

白い花びらが風で揺れた。

 
 

 サウスフィガロからセリスが消えて1日経った。
ずっと僕は必死でセリスを探していた。
どうしていなくなったのか分からない。
処刑はしないと伝えたのに。
僕たちの夢は確実に叶えられているのに、何が不満なんだ。
縛り付けて、自分の部屋にでも隠しておいた方がましだった。
人の目に触れる所に置くんじゃなかった。
後悔してもしきれない。
僕が手に入れようとしたものはなんだって奪われる。
僕の望むものくらい手に入れさせてくれても良いはずだ。
もう、何も失いたくない。
奪うものなんて残っていない。
セリス、何処へ行ったんだ。

ナルシェの風も冷たくはなかった。
谷の奥でやっと見つけたセリス。
その側にいるのは、僕じゃない。
何て悪い夢だ。
おかしい。間違っている。
僕というものがありながら、虫けらを選んだ。
嫌だ。そんなわけない。
息が乱れてしまって、それが癪だった。
「ほー……裏切り者のセリス将軍もおいでですか……丁度良い。まとめて始末してさしあげましょう。」
僕は努めて平静を装ったが、出たのはヒステリックで嫌な声。
ちっとも回らない頭で出た言葉は、きっと僕の本音に違いない。
いっそ、殺してしまいたい。
そう思っていたんだ。
こんなにも想っているのに、いつもいつも素知らぬ顔で僕を傷つける。
こんなにも想っているのに、憎い。

僕が凝視していたら、セリスは悲しそうな顔をして僕を睨んだ。
何で、君がそんな顔を?
だったら、だったら、どうして僕から離れたんだ!?
僕は叫びそうになった。

「あなたには、いつも私の言葉が届かない。」
剣を交えながらセリスは僕に言った。
?意味が分からない。
君の事を一番理解しているのは僕だ。
思う間もなく肩に強い衝撃、よろめいて尻餅をつく。
セリスが僕を突き放したのだと気付いた。
見下されている格好になった。
瞳が冷たい気がする。
見捨てられた。
裏切り者。
裏切り者。
悲しい。
酷い女だ。
こんなはずじゃなかった。
あいつらといるセリスは、生き生きしているように見える。
僕にはずっと暗い顔しか見せなかった癖に。
凄く動揺してしまう。
こんな所にいたくない。
早く負かして、セリスを持って帰りたい。
でも。その思いばかりが空回りして、普段の半分も実力が出せない。
命まで危なくなってきて、とうとう僕は敗走するしかなかった。

殴られた顔がズキズキと痛む。
手鏡を覗くと腫れてしまっているようだ。
髪の毛もファイアのせいで傷んでしまった。
ケアルをかけて痛みが少し和らぐ。

走りながら、セリスの顔、姿形、声、匂い、全てを思い出す。
僕はまた会いたくなってきてソワソワしてきた。
もっと強くなって、君を連れて帰ってあげる。
僕は楽しくなって、胸が踊る思いだった。

「セリス将軍がサウスフィガロから逃げた」
ナルシェ侵攻の最中、その一報を聞いて、私は少なからず驚いた。
あの子供が逃げ出せる要素は、サウスフィガロの包囲網には無いと思っていた。
しかし、現実に脱走していて、それには第三者が関与している。
それは間違いのないことだった。
私は真っ先に、シドを疑ったが、どうやら違う。
博士は初め、セリスが帝国から逃げたのに、おそらく関与していた。
私の勘に過ぎないが、多分そうだ。
たかが研究所の博士では、私の息のかかった兵たちから、セリスを逃がすことは出来なかったらしい。

だとすれば。リターナーか。
老獪と言われるバナンを長とした集団。
フィガロ国王とも組している。
我々の駒である幻獣の娘もいつの間にか、引き入れられた。侮れない。
あやつらならば、ひょっとしたら。
もし、脱走した将軍がここに捕らえられていて、かつ魔封剣を使う事が出来ると知っていたら。
それを仲間にするために…。
いや、そんなはずはない。
私は即座に自分の思考を否定した。
セリスを捕まえてまだ日が浅い。
知っているのは、帝国の人間と、一部の町の人間のみ。
 いくらなんでも、リターナー側が情報を掴むのは時間的に不可能であり、バナンとてそこに人員を割く余裕は無いはずだ。

ナルシェの幻獣。新たな幻獣を手に入れられるとすれば、それは数年ぶりの事だ。
氷つげということは、生きている可能性もある。
魔法の研究には欠かせない、非常に貴重な素材だ。
「何としても手に入れるんだ。」
一度奪取に失敗している。他は信用出来ない。
私自ら、ナルシェに行くことにした。

 炭坑都市ナルシェ。
以前訪れた時とは違い、ざわめいている。
ここにいるのは、ナルシェの兵だけでは無いようだ。
北の崖に行くまでにある入り組んだ谷には、バナンを含め8人がいた。
その中には金髪の女を見とめた。
私の勘はまた当たってしまった。
あれはセリスに違いない。
「バカなことを。」私は呟いていた。
よりにもよって、テロリストの仲間になるとは。
まだ仕置きが必要なのかもしれない。
軍しか知らないお前が、外に出たって良いことは何も無いのに。
それにしても、魔封剣の使えるセリスを引き込むとは食えない奴らだ。
他に、幻獣の娘に、あれはドマの兵。知らぬ間に戦力が集まりだしている。
早い内に潰した方が良い。
谷を挟んで連中と対峙する。どうやら渡す気は無いらしい。
「ほー……裏切り者のセリス将軍もおいでですか……丁度良い。まとめて始末してあげましょう。」私は谷の向こう側に向けて挑発した。
セリスは、私をまっすぐ睨んでいた。
あの子供は叱られたりすると、いつもあんな顔をする。
相変わらずだな。
私はたぶん、少し笑っていた。
セリスの表情が幾分硬くなったのを見て、そう思った。

私は連中が我々の兵をクリアし近づいてくるのを、動かずに待った。
敵としてのセリスと剣を交えることになろうとは。
何年ぶりだろうか。
昔は剣が重くて腕も挙げられなかった。よく転んではビービー泣いていた。
それが今は。
思い出に浸っていると、不意に突き出された剣が僕の顔を掠め、痛みが走る。
セリスの剣だ。
少し、血が流れてしまった。
あのチビが頼もしくなったものだと思う。
もはや剣の扱いは私より上手いだろう。

私は、これで良かったのかもしれないと思った。
セリスは誰の庇護も無く歩くことを、ようやく覚えたようだ。
今は赤ん坊のように新しい世界を探検するのに、夢中になっている。
再び、彼女が剣を振り上げ、私はそれを受ける。
「目が覚めたら、戻っておいで。」近づいた時に、私はセリスに耳打ちをした。
セリスは目を見開いて私を見た。
私は他には何も言わず、切り返した。
私は確信していた。
そうするのが、セリス自身にとって一番幸せな選択だと気付くはず。
だから、また許してしまった。

他国に比べ圧倒的な軍事力を誇る帝国は、西方へ遠征に向かった。
今回私の友人が初めて、帝国の魔導士として参加することになった。
彼は数年前に設立された、魔導研究所にいた。
以前、魔導の注入を受け、とうに失われたと言われる力、魔法を使うことができる。
友人とは言っても、最近研究所の事はベールに包まれていて、今は疎遠だ。
実際、顔を合わせるのはいつぶりだろうか。

「覚えてるか?レオだ、レオ・クリストフだ。」
私は再会の握手を求めた。
「…ああ覚えてるさ。久しぶりだな。」
ケフカは以前と比べ、落ち着いた静かな様子で手を握り返す。
「俺は魔法を見るのは初めてだ。部隊には見たことがある人間はいないだろう。」
どうするんだ?私は聞いた。
「そうだな。今日は死なない程度に好きに動けと言われている。雑兵程度なら1回で倒せるはずだが、実際本番ではどうなるか。
将軍も魔導士相手に命令を出した事は無いだろうから、ある程度自分の事は自分でするさ。」
「そうか。気を付けろよ。」
「あ、そうだ。ここは戦場だから、やらなきゃやられるんだよな。」
思い出したかのように、ケフカは妙な事を言った。
緊張しているのだろうか、幾分表情が暗いのが気になる。
「ああ。相手はこちらを殺す気で来る。大丈夫か?」
「ああ、せいぜい戦果を挙げてみせるさ。」
ケフカは顔を上げた。

見たことが無い強い光が、一瞬周囲を濃厚に照らし、激しい音と、振動が起こった。
前方の人間が吹っ飛んだのが見えた。
うお…っ、驚きの声が上がった。
光の元を注視する。やはりケフカ。これが、魔法、凄まじい力。
よく見ると、ケフカは笑い、叫び声をあげていた。まるで、殺戮の化身のように。
「殺人兵器…。」誰かが口にしたのが聞こえた。
少しの時間で、敵兵は全滅した。
見渡せば、顔も分からないほどに焼け焦げ、手足が吹き飛んでしまった無惨な死骸が散乱していた。
私を含めて部隊はまともに動くことが出来なかった。
黒い煙と、土煙と、人間の焼ける臭いと、熱い風が一気に吹き付けた。
「ケフカを、魔導士を探そう!」私は我に帰り、気がつけば叫んでいた。
どれくらい時間が経っただろう。「いました!」兵の声が届く。
私は走った。既に数人の人だかりが出来ている。
「どいてくれ。」遮る者を手で除けて歩み寄る。人影が見えた。
力を使い果たしたかのように地面に座り込んでいた。
焦点の合わぬ虚ろな目をしている。
味方の誰しもが、衝撃から覚めずにいて、近寄ろうとはしなかった。
「さあ、行きましょう。」私は傍まで寄って声をかけた。
まるで聞こえていないかのように反応は無かった。周りでざわざわと声がする。
私はケフカの手を引っ掴んで、立ち上がる気の無い体を背負う。
前に垂れた、手。ケフカの手がずたずたに傷ついているのに気がついた。
魔法の力に耐えられなかったのかもしれない。皮膚は裂け、血が手を伝った。
ケフカは未だ鈍く動く手足を以て私から離れようとする。
まだ、息が整っていない中ケフカは何度も「殺せ。」と呟いていたが、それは私にしか聞こえなかっただろう。
戦いは終わりを見たのに戦場に戻りたいのか。
周囲の者は、私たちを避けるように後退る。
見世物じゃない。騒然とした様子の人の波をかき分け、前線から戻った。

同行していた研究所の所員がいた。
ケフカをよく知っているはずなのに、少なからず動揺しているようだ。
寝具に横たえたが、ケフカは見えぬ何かを見て、手で空をつかむ。
「しっかりしろ、ケフカ。」声を張り上げて話しかけたが、届いていないようだった。
明らかに正気ではない。
体力が戻りつつあったようで、大声を上げて暴れようともがきだした。
急に発せられる大声に、所員の男は、怯えて物陰に隠れようとする。
動作はますます激しくなって、時折こぶしが顔に当たる。
「ケフカ!俺だ!レオだ!分からないのか!」
私を敵と認識しているのか、目を見開き「死ね!」と叫んで殴りかかってくる。
力はさほど強くないとはいえ、大の大人が襲ってくるのだ。
強引に押さえつけるも、このままでは埒があかない。
容赦なくケフカの爪が腕にぎりぎりと食い込み突き刺さり、血がにじむ。
「鎮静剤を取ってくれ!」
及び腰の研究所員は慌てて薬を取り出した。
片手で押さえつけながら、もう一方を伸ばして、何とか受け取って咄嗟に打った。
数秒で全身の力が抜け、ぐったりと気を失った。
幾分ほっとした。
しかし、それはこれから起こりうる不安と比較すればそれは微々たるものだった。
どうしてこのようなことになってしまったのか。

 

 数時間後、ケフカは熱を出した。
限界以上の力を出したためだろうか。
研究所員の男はあそこまで強力な魔法は見たことがないと言っていた。
目覚めてから、再び暴れるかも分からず、所員や衛生兵に任せきりにするのは難しい。
シド博士も来ているはずだが、他に用があり、ここには来られないらしい。
他の者は誰一人として、近寄りもしなかった。
肝心の研究所員はまだ経験が浅く、戦場自体も始めて来たそうで、びくびくしている。
「私が見よう。」申し出た。
「拘束した方が良いかもしれません。次はあの魔法が来るかもしれないです。」
まさか、暴走するなんて。
彼は恐ろしげに呟いた。
「この人なら大丈夫だ、その時は私が責任を持って防ごう。」
「様子がおかしいようでしたら、おっしゃってください。」
気をつけて。
そう言い所員の男は出て行った。

夜間になり、ケフカは苦しげな表情をして、ガタガタと震える。酷い熱だ。
うめき声を上げ、意識は無いのに、うわ言を呟いた。うなされている。
肩まで上着をかけてやる。
今日のことを思い出しているのだろうか。
治療を施した手のひらが痛々しい。

深夜も過ぎ、人が訪れた。
「おお、君か。すまなかったな。」
「シド博士。」私は立ち上がる。
「様子はどうだ?」
「だいぶ、落ち着きましたよ。」
視線をケフカに移す。
「直後は、錯乱状態でした。手荒だとは思ったのですが、鎮静剤を使って、気絶させました。」
「そのことは聞いている。問題ない。面倒をかけた。」
「こうなるのはよくあることなのですか?」
「無いよ。私も驚いているんだ。普段魔法を使っても別段取り乱すことなど無い。」
「では、何故。」
「さあな。実戦は今回が初めてだから。私にもまだはっきりしたことは分からないよ。」
博士は不思議そうな顔をして言った。

 ランプの灯りが揺らめいた。
私は一つ一つ思い出しながら話し、シド博士は黙って聞いていた。
「彼のことを多少知っていますし、始まる前にも少し話をしました。その時は普通だったのに、戦場では、まるで別人だった。」
「そうか。」
「なんというか、普通じゃなかった。あんなに楽しそうに人を殺すなんて。信じられない。」
「…。」
「叫び声を上げて、笑って、敵に突っ込んでいったんです。魔法を放ちながら。全く容赦しなかった。
戦いが終わった後は正気を失ったようで、ここへ運ぶ途中もずっと殺せ、殺せ、と呟いていた。」
悪夢の様な光景が思い出される。
「博士、彼は、」
「強大な力を持った人間が過信し、己の残虐性に目覚めてしまったんだろう。戦場ではよくあることだ。そうだろう。」
博士は遮って話し出した。
「…。」
また、灯りが揺らめいた。
「初めて人を殺した時、誰しも高揚感を覚えるものだ。君はそういう経験は無かったか?」
「いえ、あります。」否定は出来なかった。
「戸惑っているんだろうな。強力な力を使えるようになったことに。それが魔法というものだ。」
「さあ、君も疲れただろう。後は私が引き継ぐから、戻ったらどうだ。」
私は釈然としなかった。
どうしても戦場でのケフカと、自分が知っているケフカとが一致しない。
内なる残虐性に目覚めてしまったということか。
シド博士の言っていることは、真実なのだろうか。

「失礼します。」外から伝令係の声が聞こえた。
「何だ。」
「陛下が到着されました。」
「分かった。」私は答えた。
皇帝陛下が戦場を訪ねることは珍しかった。
この後、報告会が予定されている。
「お見えになったか。」シド博士は言った。
少し沈黙が流れる。
「さて、参ろうか。」シド博士は言った。
 

間近で見る皇帝は、威圧感に溢れていた。
他にもずらりと、階級の高い方が顔を揃えている。
「魔導士の働きを言え。魔導士はどうした。」
皇帝は席に着くなり、他のことには全く触れずに、ケフカについて言及しだした。
顛末をシド博士が話す。
皇帝は私の方をちらりと見た。
「そうか。経過を観察し、次回以降使えるようであれば使おう。暴走の危険が減れば、より実戦に使えるということだな。」
よく通る大きな声だ。
「そうです。」
「よくやった。シド博士。」
皇帝は晴れがましく言った。
「これで、飛躍的に武力が伸びますな。帝国の一層の繁栄が約束されたも同然。」
将軍は話した。
「今回は大変実りある事例だと思います。今日のために、多くの労力、時間、犠牲を払いました。
皇帝陛下を始め、魔導研究のために協力いただいた方々に感謝いたします。」
「シド博士。まて、感極まるのは早いぞ、成果は生み続けなければならない。」
皇帝は鋭い眼光をシド博士に向けた。
「聡明な博士なら、言うまでもなかろうが。私は世界をガストラ帝国として、全て治めたいのだ。よって今回だけでは話にならない。
今日の魔導士と同じ、いや、それ以上の物が必要だ。たくさんな。出来るか。博士?」
皇帝はゆっくりと一言一句聞き取れる声で言った。
「可能です。ご期待に応えることが出来るでしょう。」
「量産が可能だということで良いか。」
「はい。」
「すばらしい、褒美を取らそう。魔導士の階級も上げて然るべきだ。
今後も我々が何よりも優先して、博士に協力しよう。何なりと要求を言ってもらいたい。」
「めでたいことだ。」
湧き上がる拍手と賞賛の声。
私の心は今、眠っているであろうケフカにあった。
 

西での戦いから少し時が経って、季節が変わった。
偶然、普段見ない所でケフカを見かけた。
「どうしたんだ、こんなところで。」
下を向いていたケフカは、私に気づかなかったようで驚いていた。
次の遠征に参加するようで、その打ち合わせだという。
どちらからともなく、話しだした。
「最近、忙しいみたいだな。」
「ああ。遠征や魔導アーマーの試作機の完成も近いから。」
「魔導アーマーか。あれが普及すれば、帝国に敵うものはいなくなるだろうな。俺も乗ってみたいよ。」
「そうか。」
「今は何をしてるんだ?」
「当分は遠征と魔導アーマーだな。自分の仕事に没頭してる時が一番だ。軍人はうるさい。」
ケフカはため息をついた。
「そうかもな。まあ俺は研究所の雰囲気に未だ慣れないが。」
「みんな変わってるからな。」
「お前も相当変わってるけどな。」
「軍の中じゃ、お前は変人扱いだぞ。」
「ちょっと待て、聞き捨てならない。」
そういってお互い少し笑った。

再び遠征に行くと聞き、前の事を思い出した。
「そう言えば、体調は、大丈夫か?」
「え、ああ。」
「実はこないだの遠征の時に、お前をベッドに運んだのは俺なんだ。あれから大丈夫か?」
「すまない、迷惑をかけた。」
「戦場では何を考えていたんだ?」私は気になっていた。シド博士の言葉。
「…さあ、敵を殲滅させることかな。」
「真面目に答えてくれよ。」
「よしてくれ、思い出したくない。」ケフカは話したくなさそうだ。
戦場での事を得意気に話すようなタイプではない。私は話を逸らした。
「すごかったよ。」
「あれで階級も上がったからな。」
「手は良くなったか?」
「手?ああ」
あの時血だらけになっていた手のひらは、痕は残っていたが治癒していた。
「魔法使いか。お前の他にもいるのか?」
「さあ。想像に任せるよ。近々色々分かる。」
「そうか。色々大変なんだろうな。」
「じゃあ、また。」
そう言って、別れた。

さっきまで話していたのは自分の知っているケフカで、戦場で見た殺人兵器では無かった。
ケフカなら、あの時したことも事実として受け止められる。
誰だって、武器を持って、殺して良いと言われれば試したくなる。
戦場に出れば誰だってそうだ。
私は目の前にぶら下がった答えに安心して飛び付いた。
臆して、真実に手を伸ばす事は出来なかった。

私は魔導について調べようと決めた。

 私は、魔導についてあまりにも無知だった。
そもそも魔導の力は幻獣の命を奪って作られるということも知らなかった。
魔導注入には、失敗があった。
また、現在においても未だ数多くの失敗があった。
失敗で無くとも、副作用で精神の均衡が失われる場合が少なくない。
それ故、過去に魔導注入を受けた者は、哀れな末路を辿っている場合が多い。
軍、研究所の上層部の一部のみがそれを知り、地の底まで隠蔽していた。
ケフカもまた隠していた。
私はそのような力とは知らずに、喜んで享受していた。
己の愚かさに腹が立つのと同時に、現実に酷く打ちのめされた。
魔導は既に深く根を下ろしていた。
魔導戦士の誕生、魔導アーマーの完成。
どちらももはや帝国に欠かせない力となっていた。
力を得た帝国軍は再び遠征に於て大勝利を収めた。
気付くのが遅かった。
戦果とともにケフカの「活躍」が伝えられる。
シド博士とともに、ケフカの名も日に日に広まっていく。
女々しい言い方をすれば、私は裏切られたような気さえしていた。
残虐な魔導士ケフカの活躍を聞く度に、どうしてしまったんだ?
と焦燥感に駆られた。
大事な事は何も分からず、ただ事実のみが飛び込んでくる。
私は意を決してケフカのいる部屋を訪れた。
ドアが開くとケフカが覗いた。
「ああ、どうしたんだ?」
入れよ。怪訝な顔をしながらも招き入れてくれた。
「何か言いたそうだな。」
背を向けたまま言った。
「話があって来たんだ。魔導について調べた。」私は口を開いた。
話を終えると、ケフカはよく調べたなと呟いた。
「こうして今目の前にいるのはお前なのに、遠征の話を聞くとまるで別人のように感じる。
お前が本当は何を考えているのか、知りたくて来た。」
それが私の気持ちだった。
ケフカは水を飲みグラスを置いた。
「魔法が使えるようになって、お前は平気で人を殺せるようになった気がしてしまう。
西での遠征の時を思い出す。正気を失っていて、見えない何かと戦っているみたいだった。」
「魔法のせいだと言いたいのか。」
「ああ。俺はそう思った。言えない事はあったと思うが、言って欲しかった。すごくモヤモヤする。」
「お前にだって言えない事はある。分かるだろう。それに、話してどうにかなるものでもない。」
「錯乱が進んだ人に対して、幻獣に魂を食われたと言うそうだな。あの時のお前はちょうどそんな様子だったんじゃないかと、今にしてみれば思う。」
だから、そう言いかけた所でケフカは笑いだした。
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