ランプの灯りが揺らめいた。
私は一つ一つ思い出しながら話し、シド博士は黙って聞いていた。
「彼のことを多少知っていますし、始まる前にも少し話をしました。その時は普通だったのに、戦場では、まるで別人だった。」
「そうか。」
「なんというか、普通じゃなかった。あんなに楽しそうに人を殺すなんて。信じられない。」
「…。」
「叫び声を上げて、笑って、敵に突っ込んでいったんです。魔法を放ちながら。全く容赦しなかった。
戦いが終わった後は正気を失ったようで、ここへ運ぶ途中もずっと殺せ、殺せ、と呟いていた。」
悪夢の様な光景が思い出される。
「博士、彼は、」
「強大な力を持った人間が過信し、己の残虐性に目覚めてしまったんだろう。戦場ではよくあることだ。そうだろう。」
博士は遮って話し出した。
「…。」
また、灯りが揺らめいた。
「初めて人を殺した時、誰しも高揚感を覚えるものだ。君はそういう経験は無かったか?」
「いえ、あります。」否定は出来なかった。
「戸惑っているんだろうな。強力な力を使えるようになったことに。それが魔法というものだ。」
「さあ、君も疲れただろう。後は私が引き継ぐから、戻ったらどうだ。」
私は釈然としなかった。
どうしても戦場でのケフカと、自分が知っているケフカとが一致しない。
内なる残虐性に目覚めてしまったということか。
シド博士の言っていることは、真実なのだろうか。
「失礼します。」外から伝令係の声が聞こえた。
「何だ。」
「陛下が到着されました。」
「分かった。」私は答えた。
皇帝陛下が戦場を訪ねることは珍しかった。
この後、報告会が予定されている。
「お見えになったか。」シド博士は言った。
少し沈黙が流れる。
「さて、参ろうか。」シド博士は言った。