「ひどいな。」そうケフカは笑った。私には何がおかしいのか分からない。
ケフカはテーブルに腰をかけ話す。
「お前は俺が魔導の力を入れた事で、幻獣に魂を食われたと思ってるのか。
それでおかしくなったから、虐殺するようになったと。
そんな話は連中が面白半分に言ってるだけさ。お前は鵜呑みにしたのか?笑えるな。」
私の顔に指を差して言う。
「…少なくとも、平気で人を殺すような人間じゃなかった。」
「俺は常に自分の意思で行動している。今もな。俺は狂ってなんかいない。
それを幻獣に魂を食われたと思うなら、そう思えばいい。」
「本当に自分の意思でやりたくてやってるのか?先日の遠征もか?」
「だからそう言っている。」
目の前の人物がケフカの顔をしているのに違和感がある。
「お前は変わってしまったのか?」
「人は変わるだろ。」
「俺は、前のケフカに戻って欲しい。無意味に人を殺して欲しくない。」
「無意味じゃない。」
「虐殺は無意味だ。」
そう言って少し沈黙が流れた。
「…もういいか。真面目に話しすぎて頭が痛い。」
ケフカはこめかみを押さえた。
「…分かった。また来る。」
私は部屋を出て、ケフカは何も言わなかった。
それから何度か部屋を訪れたが、不在だった。
ずっと研究所にいると聞いた。
その日も部屋を訪れた。やはり不在で、戻ろうとした時に偶然出会った。
ケフカは目を逸らして、通り過ぎようとした。
「待ってくれ。」
「一人になりたいんだ。話を聞ける気分じゃない。」
ケフカは歩みを止めずに口を開いた。
「明日にしてくれ。」
そう言ってドアを閉められてしまった。
「明日、また来る。」私はドアの先に向かって約束をした。
翌日。
ノックをするといらついた表情でケフカは現れた。
「誰が見てるか分からないんだ。何度も来られたら困る。」
「すまない。」
「面倒だから、聞こう。」
私は魔導の研究を止めてほしい、戦場へ行くのを止めてほしいとの旨を伝えた。
友人に無意味に命を奪う行為をしてほしくなかった。
ケフカは終始不機嫌そうな顔をし、指をカツカツと机に当てていた。
「…いい加減にしてくれ。」話の途中でケフカは声を荒げた。
「どうしてそんなに邪魔をするんだ?誰かにアイツを辞めさせろとでも言われたのか?そうなんだな?誰だ?教えろよ。」
ケフカは射抜くような視線で探るように私を睨む。
あまり見たことの無い表情に怯みそうになった。
「違う、俺はお前に人を殺して欲しくないんだ。戦場でのお前も、もう見たくない。」
祈るような気持ちで伝えたが、ケフカは首を傾げた。
「意味が分からない。お前も、ここにいる人間は誰だって戦いに勝つために集まっているんだろう。どうしていつも俺だけのけ者にするんだ?魔法が使えるからか?軍人じゃないからか?」
伝えたいことが、伝わらない。
「そういうことじゃない。俺はただ」
「何が違うっていうんだ。いつも邪魔ばかりして。そんな姑息な真似をしてまで自分の手柄が欲しいのか?」
ケフカの目は怒りに満ちていた。
「今のお前は普通じゃない。前のお前を知ってるから分かる。だから離れて欲しいんだ。」
私はただ分かって欲しかった。
「お願いだ。俺を信じてくれ。」
ケフカは舌打ちをした。
「くだらないことで時間を取った。俺は出かける。」
ケフカはバタンと大きな音を立ててドアを閉めて、出て行った。
私は一人部屋に残された。