西での戦いから少し時が経って、季節が変わった。
偶然、普段見ない所でケフカを見かけた。
「どうしたんだ、こんなところで。」
下を向いていたケフカは、私に気づかなかったようで驚いていた。
次の遠征に参加するようで、その打ち合わせだという。
どちらからともなく、話しだした。
「最近、忙しいみたいだな。」
「ああ。遠征や魔導アーマーの試作機の完成も近いから。」
「魔導アーマーか。あれが普及すれば、帝国に敵うものはいなくなるだろうな。俺も乗ってみたいよ。」
「そうか。」
「今は何をしてるんだ?」
「当分は遠征と魔導アーマーだな。自分の仕事に没頭してる時が一番だ。軍人はうるさい。」
ケフカはため息をついた。
「そうかもな。まあ俺は研究所の雰囲気に未だ慣れないが。」
「みんな変わってるからな。」
「お前も相当変わってるけどな。」
「軍の中じゃ、お前は変人扱いだぞ。」
「ちょっと待て、聞き捨てならない。」
そういってお互い少し笑った。
再び遠征に行くと聞き、前の事を思い出した。
「そう言えば、体調は、大丈夫か?」
「え、ああ。」
「実はこないだの遠征の時に、お前をベッドに運んだのは俺なんだ。あれから大丈夫か?」
「すまない、迷惑をかけた。」
「戦場では何を考えていたんだ?」私は気になっていた。シド博士の言葉。
「…さあ、敵を殲滅させることかな。」
「真面目に答えてくれよ。」
「よしてくれ、思い出したくない。」ケフカは話したくなさそうだ。
戦場での事を得意気に話すようなタイプではない。私は話を逸らした。
「すごかったよ。」
「あれで階級も上がったからな。」
「手は良くなったか?」
「手?ああ」
あの時血だらけになっていた手のひらは、痕は残っていたが治癒していた。
「魔法使いか。お前の他にもいるのか?」
「さあ。想像に任せるよ。近々色々分かる。」
「そうか。色々大変なんだろうな。」
「じゃあ、また。」
そう言って、別れた。
さっきまで話していたのは自分の知っているケフカで、戦場で見た殺人兵器では無かった。
ケフカなら、あの時したことも事実として受け止められる。
誰だって、武器を持って、殺して良いと言われれば試したくなる。
戦場に出れば誰だってそうだ。
私は目の前にぶら下がった答えに安心して飛び付いた。
臆して、真実に手を伸ばす事は出来なかった。
私は魔導について調べようと決めた。