見たことが無い強い光が、一瞬周囲を濃厚に照らし、激しい音と、振動が起こった。
前方の人間が吹っ飛んだのが見えた。
うお…っ、驚きの声が上がった。
光の元を注視する。やはりケフカ。これが、魔法、凄まじい力。
よく見ると、ケフカは笑い、叫び声をあげていた。まるで、殺戮の化身のように。
「殺人兵器…。」誰かが口にしたのが聞こえた。
少しの時間で、敵兵は全滅した。
見渡せば、顔も分からないほどに焼け焦げ、手足が吹き飛んでしまった無惨な死骸が散乱していた。
私を含めて部隊はまともに動くことが出来なかった。
黒い煙と、土煙と、人間の焼ける臭いと、熱い風が一気に吹き付けた。
「ケフカを、魔導士を探そう!」私は我に帰り、気がつけば叫んでいた。
どれくらい時間が経っただろう。「いました!」兵の声が届く。
私は走った。既に数人の人だかりが出来ている。
「どいてくれ。」遮る者を手で除けて歩み寄る。人影が見えた。
力を使い果たしたかのように地面に座り込んでいた。
焦点の合わぬ虚ろな目をしている。
味方の誰しもが、衝撃から覚めずにいて、近寄ろうとはしなかった。
「さあ、行きましょう。」私は傍まで寄って声をかけた。
まるで聞こえていないかのように反応は無かった。周りでざわざわと声がする。
私はケフカの手を引っ掴んで、立ち上がる気の無い体を背負う。
前に垂れた、手。ケフカの手がずたずたに傷ついているのに気がついた。
魔法の力に耐えられなかったのかもしれない。皮膚は裂け、血が手を伝った。
ケフカは未だ鈍く動く手足を以て私から離れようとする。
まだ、息が整っていない中ケフカは何度も「殺せ。」と呟いていたが、それは私にしか聞こえなかっただろう。
戦いは終わりを見たのに戦場に戻りたいのか。
周囲の者は、私たちを避けるように後退る。
見世物じゃない。騒然とした様子の人の波をかき分け、前線から戻った。
同行していた研究所の所員がいた。
ケフカをよく知っているはずなのに、少なからず動揺しているようだ。
寝具に横たえたが、ケフカは見えぬ何かを見て、手で空をつかむ。
「しっかりしろ、ケフカ。」声を張り上げて話しかけたが、届いていないようだった。
明らかに正気ではない。
体力が戻りつつあったようで、大声を上げて暴れようともがきだした。
急に発せられる大声に、所員の男は、怯えて物陰に隠れようとする。
動作はますます激しくなって、時折こぶしが顔に当たる。
「ケフカ!俺だ!レオだ!分からないのか!」
私を敵と認識しているのか、目を見開き「死ね!」と叫んで殴りかかってくる。
力はさほど強くないとはいえ、大の大人が襲ってくるのだ。
強引に押さえつけるも、このままでは埒があかない。
容赦なくケフカの爪が腕にぎりぎりと食い込み突き刺さり、血がにじむ。
「鎮静剤を取ってくれ!」
及び腰の研究所員は慌てて薬を取り出した。
片手で押さえつけながら、もう一方を伸ばして、何とか受け取って咄嗟に打った。
数秒で全身の力が抜け、ぐったりと気を失った。
幾分ほっとした。
しかし、それはこれから起こりうる不安と比較すればそれは微々たるものだった。
どうしてこのようなことになってしまったのか。