「どうした。」
「えっ。」
急にケフカがこちらを見て声を掛けてきたので、セリスの心臓は跳ね上がった。
かなりの時間、横顔を見ていたことに気が付く。
怪訝に思われても仕方がなかった。
「……何でも。」
苦し紛れにセリスは答えた。
体型の変化を指摘するのは幾らなんでも失礼だと思い、セリスは口を閉ざした。
ケフカはふうんと呟き、さほど興味も無さそうに、再び前を向いた。
数歩歩いて、ふとケフカが口を開く。
「そういえば、背が伸びたんじゃないか?」
セリスは思ってもいなかった事を言われて驚いた。
「そうですか?」
そう言って少し考える。
言われてみれば、以前は見上げていたケフカに対しての目線が、今は見上げずとも良くなっているような。
「そういえば……。」
セリスはそう呟いて、そちらを見るとケフカは嫌な顔をした。
「…………失礼な奴だな。」
「あっ、そんなつもりじゃ。」
セリスはギクりとする。
ケフカは眉を顰めた。
「じゃあどういうつもりだって言うんだ。」
ケフカは低い声を発して、いよいよ険しい顔をした。
ケフカの苦々しい表情を見て、セリスは自分が口を滑らせた事に気が付いた。
無意識に自分とケフカの背の高さを見比べていた。
ケフカの身長は軍の中でも高くは無い方だ。
このまま、背を追い越してしまうかもしれない。
(もしかして気にしていたのかな。)
セリスは思った。
ちょっとしたことで機嫌を損ねてしまったかもしれない。
セリスは焦りを覚える。
「あの、えっと……。」
何かを言わなければと思うが、言葉が見つからない。
ケフカはその様子がおかしく感じたのか
「別に良いさ。」と言って他に目線を向けて笑った。
(良かった。)
セリスはケフカが笑ったことにほっとする。
それと同時にセリスはその笑顔に懐かしさを感じた。
いつもよりも少し時間をかけて2人は歩き、城に着いた。
門を通って、部屋へと向かう。
途中、3人の将軍たちが前方から向かってくるのが見えた。
彼らはこちらに気が付くと、小声でひそひそと話だした。
普段とは違う彼らの様子にセリスは戸惑いを覚える。
そして、すれ違いざまにはこちらを睨んでいった。
否、睨まれていたのはケフカだ。
あからさまに向けられた敵意にセリスは困惑した。
少し前までは同僚だったはずなのに。
ケフカもまるで彼らが目に入っていないかのように振る舞っている。
ケフカは意に介していないようだったが、セリスがベクタを離れていた数ヶ月の間に、ケフカは随分嫌われてしまったようだと感じた。
セリスには目に見えた変化(痩せてしまった事は別にして)が無かっただけに、それがいっそう困惑を深くさせた。