数時間後、ケフカは熱を出した。
限界以上の力を出したためだろうか。
研究所員の男はあそこまで強力な魔法は見たことがないと言っていた。
目覚めてから、再び暴れるかも分からず、所員や衛生兵に任せきりにするのは難しい。
シド博士も来ているはずだが、他に用があり、ここには来られないらしい。
他の者は誰一人として、近寄りもしなかった。
肝心の研究所員はまだ経験が浅く、戦場自体も始めて来たそうで、びくびくしている。
「私が見よう。」申し出た。
「拘束した方が良いかもしれません。次はあの魔法が来るかもしれないです。」
まさか、暴走するなんて。
彼は恐ろしげに呟いた。
「この人なら大丈夫だ、その時は私が責任を持って防ごう。」
「様子がおかしいようでしたら、おっしゃってください。」
気をつけて。
そう言い所員の男は出て行った。
夜間になり、ケフカは苦しげな表情をして、ガタガタと震える。酷い熱だ。
うめき声を上げ、意識は無いのに、うわ言を呟いた。うなされている。
肩まで上着をかけてやる。
今日のことを思い出しているのだろうか。
治療を施した手のひらが痛々しい。
深夜も過ぎ、人が訪れた。
「おお、君か。すまなかったな。」
「シド博士。」私は立ち上がる。
「様子はどうだ?」
「だいぶ、落ち着きましたよ。」
視線をケフカに移す。
「直後は、錯乱状態でした。手荒だとは思ったのですが、鎮静剤を使って、気絶させました。」
「そのことは聞いている。問題ない。面倒をかけた。」
「こうなるのはよくあることなのですか?」
「無いよ。私も驚いているんだ。普段魔法を使っても別段取り乱すことなど無い。」
「では、何故。」
「さあな。実戦は今回が初めてだから。私にもまだはっきりしたことは分からないよ。」
博士は不思議そうな顔をして言った。