少女の額には金属の装飾具が嵌められていた。
あやつりの輪、といった。
身に付けた人間の意思を奪い、意のままに操る事の出来る道具。
元々は軍事用の名目で、彼ケフカが作った物だった。
少女は操られていた。
「元気にしてたかい?」
「ふーん、そう?それで?」
彼は何も言わない少女から、今日あったことを聞いて、会話をした。
途中、火傷しない温度のお茶を飲み、飲ませながら、それは続いた。
いつの間に少女は、彼の方を向いていた。
「そうだね。今度はね、北の国に行こう。」
彼は仕事のパートナーでもある彼女に、今後の予定を話し出した。
「君ならきっとやり遂げられる。」「ナルシェなんて君の力にかかれば、イチコロさ。」
彼女が不安がっていたので、彼は褒めて自信を付けさせようとする。
「どうしたの?そうか、女の子だもんね。少し怖いかもしれないな。」
「大丈夫、君はとっても強いんだ。」
彼は少女の手を取り、不安を取り去ってやるかのように、元気付ける。
「君は僕と同じだからねー。」
彼は立ち上がって、少女を眺めた。
「僕みたいな持ち主がいて、君は幸せだよ。」
そう呟いて、彼はゆっくりと、少女のその小さな顔を両手で包み込む。
あたたかな、体温。
ほんの少しウェーブの掛かった髪の毛を潜り、白く細い首に手のひらを添える。
そして力を込めた。
握りつぶすつもりで、ぎりぎりと締め上げた。
それでもあやつりの輪を付けられた少女は、身じろぎもしなかった。
ただ、少し苦しそうに、口を開けた。
少しして、彼は手に込められた力を抜いた。
真っ赤になっていた少女の顔色が、少しずつ元に戻る。
死んでしまうのが惜しくなった。
もう遊べなくなるのが、嫌だった。
「そうだ。今日は何をして遊ぼうか?あ、かわいい服を見つけたんだ。似合うかなー?」
気を取り直して彼は言う。
少女もまた、いつもの表情でおとなしく座っていた。
彼は包みを開け、買ってきた物を広げて見せた。
赤を基調とする花の模様が散りばめられた女の子らしい服。
それはケフカから少女に贈られた5番目の服だった。