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ケフカについて書きます。二次創作あり(文章) 小話「数年前121~123」更新しました。(2015年8月9日)
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「ひどいな。」そうケフカは笑った。私には何がおかしいのか分からない。
ケフカはテーブルに腰をかけ話す。
「お前は俺が魔導の力を入れた事で、幻獣に魂を食われたと思ってるのか。
それでおかしくなったから、虐殺するようになったと。
そんな話は連中が面白半分に言ってるだけさ。お前は鵜呑みにしたのか?笑えるな。」
私の顔に指を差して言う。
「…少なくとも、平気で人を殺すような人間じゃなかった。」
「俺は常に自分の意思で行動している。今もな。俺は狂ってなんかいない。
それを幻獣に魂を食われたと思うなら、そう思えばいい。」
「本当に自分の意思でやりたくてやってるのか?先日の遠征もか?」
「だからそう言っている。」
目の前の人物がケフカの顔をしているのに違和感がある。
「お前は変わってしまったのか?」
「人は変わるだろ。」
「俺は、前のケフカに戻って欲しい。無意味に人を殺して欲しくない。」
「無意味じゃない。」
「虐殺は無意味だ。」
そう言って少し沈黙が流れた。
「…もういいか。真面目に話しすぎて頭が痛い。」
ケフカはこめかみを押さえた。
「…分かった。また来る。」
私は部屋を出て、ケフカは何も言わなかった。


それから何度か部屋を訪れたが、不在だった。
ずっと研究所にいると聞いた。
その日も部屋を訪れた。やはり不在で、戻ろうとした時に偶然出会った。
ケフカは目を逸らして、通り過ぎようとした。
「待ってくれ。」
「一人になりたいんだ。話を聞ける気分じゃない。」
ケフカは歩みを止めずに口を開いた。
「明日にしてくれ。」
そう言ってドアを閉められてしまった。
「明日、また来る。」私はドアの先に向かって約束をした。
翌日。
ノックをするといらついた表情でケフカは現れた。
「誰が見てるか分からないんだ。何度も来られたら困る。」
「すまない。」
「面倒だから、聞こう。」
私は魔導の研究を止めてほしい、戦場へ行くのを止めてほしいとの旨を伝えた。
友人に無意味に命を奪う行為をしてほしくなかった。
ケフカは終始不機嫌そうな顔をし、指をカツカツと机に当てていた。
「…いい加減にしてくれ。」話の途中でケフカは声を荒げた。
「どうしてそんなに邪魔をするんだ?誰かにアイツを辞めさせろとでも言われたのか?そうなんだな?誰だ?教えろよ。」
ケフカは射抜くような視線で探るように私を睨む。
あまり見たことの無い表情に怯みそうになった。
「違う、俺はお前に人を殺して欲しくないんだ。戦場でのお前も、もう見たくない。」
祈るような気持ちで伝えたが、ケフカは首を傾げた。
「意味が分からない。お前も、ここにいる人間は誰だって戦いに勝つために集まっているんだろう。どうしていつも俺だけのけ者にするんだ?魔法が使えるからか?軍人じゃないからか?」
伝えたいことが、伝わらない。
「そういうことじゃない。俺はただ」
「何が違うっていうんだ。いつも邪魔ばかりして。そんな姑息な真似をしてまで自分の手柄が欲しいのか?」
ケフカの目は怒りに満ちていた。
「今のお前は普通じゃない。前のお前を知ってるから分かる。だから離れて欲しいんだ。」
私はただ分かって欲しかった。
「お願いだ。俺を信じてくれ。」
ケフカは舌打ちをした。
「くだらないことで時間を取った。俺は出かける。」
ケフカはバタンと大きな音を立ててドアを閉めて、出て行った。
私は一人部屋に残された。

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 肩を落として、建物から去ろうとしたとき、背後から声をかけられた。
「何をしている。」
私の上官だった。
「来い。」命じられ、私は着いて行かねばならなくなった。
薄々感じていた。私は魔導という極秘の事象について、大して隠れもせずに嗅ぎまわっていた。
その事かもしれない、そう思った。
通された部屋には、驚いたことに、他に4人もの人物がいた。
彼らは一様に険しい表情をしていた。
そして、私がスパイではないかと疑っていると告げた。
研究所に出入りしていたこと、関係者にコンタクトを取っていたこと、その時の質問の内容まで事細かに知られていた。
友人であるケフカに会いに行き、何やら魔導について聞こうとしているということも当然のように知っていた。
何故魔導について調べているのか、何を知ったのか、全て話せと詰問された。
スパイではないかと疑われたことに私は少なからず驚いたが、その件については否定し、調べた内容について話した。
私は冷静ではなかったかもしれない。
魔導の力は多くの犠牲の元に成り立つ力であり、これ以上の犠牲を生むべきでは無い。
今では、魔導の力に頼ってはいけないと考えていると、帝国の方針と反する事を伝えた。
「馬鹿なことを言うな。」上官は慌てた様子で遮った。
面々の口調がより厳しいものになった。
「ようやく、研究が身を結んだというのに。」
「貴様は尊くも死んでいった犠牲者を無碍にするつもりか。」
「亡くなった彼らの無念に応えるのが我々の義務ではないのか。」
「同じ悲劇を繰り返さないためにも、成果を生かさなければならない。」
「これまでの月日を全て無駄にするつもりか。」
私は歯を食いしばり、彼らの言い分を聞くことしか出来なかった。
彼らの言い分は正しいが、正しくない。
長い時間が経ったような気がする。
疑われるような行動をしたことに対し、謝罪を命じられ、考えをすぐに改めるよう言い渡された。
帰り際、ある方に言われた。
「お前は経験を積んだ方が良い。出来るだけ遠くでな。」
数日後、私は異動を命じられた。
 私は明後日に迫った出発に備えて、準備を進めていた。
季節は秋も半ばを過ぎていて、ここのところ天気も悪かったが、今日は珍しく晴れていた。
部屋に差し込む日差しが暖かい。
異動の先は辺境の地で、年若い者がいく所ではなかった。
所謂左遷であることを知った。
同期の人間を初め近しかったはずの人物は、異動の公示を機に余所余所しくなり、無視する人までいた。
しかし、後悔はしていなかった。
魔導は甘んじて享受すべき力ではないことが分かり、軍の考えも分かったのだ。
それだけでも良かった。私はそう思おうとした。
ただ、私を失意の中に落とすのは、1つ。
ケフカに私の声が届かないこと、それだけだった。
私は間違っているのだろうか。その思いが頭を離れない。
不意にドアがノックされ、どうぞ、と声をかける。
入ってきた人物は、ケフカだった。
私は驚いて思わず立ち上がった。
「ど、どうしたんだ?」思わぬ来客に私は慌てた。
「この間は、酷い事を言ってすまなかった。」ケフカはそう言って目を伏せた。
「いや、気にするな。」
私の態度は軍人として取るべき態度では無かったかもしれない。
変わることが出来なかった私の方こそ、間違っているのかもしれない。
その思いが言葉を詰まらせた。
「聞いたよ。異動するんだって?」そのことで来たんだ、ケフカは言った。
「ああ、そうなんだ。俺は中央にいない方が良いらしい。」私はどうしても自嘲気味になってしまった。
「魔導の利用の反対をしたらしいな。皇帝も魔法を使えるんだぞ。冒涜してるも同然だ。」
ケフカは私を嗜める。
「…ああ。」
「馬鹿じゃないのか?」
「馬鹿でも良いさ。俺は今でもそう思ってる。」
「やっぱり変な奴だな。お前は。」
「悪かったよ。変人で。」
「お前はそういう奴さ。」半ば呆れたようにケフカは笑った。
あまりにもいつもどおりの会話をしていることに、私は内心戸惑っていた。
「いつ、発つんだ?」交わされるやり取り。
「明後日だ。今日明日、飯でも食いに行かないか?時間あるか?」
私は食事に誘った。
「今夜なら大丈夫だ。」ケフカは答えた。
異動になれば今度いつ会えるか分からない。
別れを惜しみたいだけではないような気がする。
繋ぎ止めたかったのかもしれない。霧のように掴めない何か。
「分かった。じゃあまた後で。」いつもと変わらず別れた。
閉じたドアから視線を逸らせぬまま、私はため息をついた。
軍人として私のしたことは誤っているのかもしれない。
だが、ケフカの行為は憎むべきもの、嫌悪すべきものであるはず。
それなのに私は友人を憎めない。
外灯が灯り始めて、待ち合わせ場所へ向かった。
研究所と隊の施設に面した道の交差路で、大体ここで待ち合わせた。

1分も待たず、反対側から来るケフカが見えた。
お互い揃ったので、時間より少し早いが、敷地を出た。
歩いて数分の所にある、以前はよく行った店だった。
遠征が近いこともあってか、店内は空いていた。
いつもの場所に座り、お互い食べたい物、飲みたい物を頼んだ。
取り留めのない話をする。
最近聞いている音楽、読んだ本、新しく買ったもの。
喧嘩をしたこと、よく石の階段に座って話したこと、入隊した直後のこと、
初めて会った時のこと、馬鹿な失敗をして大目玉を食らったこと。
共通の思い出を話して大笑いした。
時が過ぎるのを忘れるくらい、楽しかった。

私たちは魔導に関することを一度も話さなかった。

私はケフカの行為を許すことは出来ないし、ケフカもそれは分かっている。
お互い譲ることが出来ないのだ。
口に出せば言い争いになるのは分かっていた。
それが私の罪。
友を思うならば、私は止めなければいけなかった。
店を出た頃には0時を過ぎていた。
昼間は暖かかった外も、今は冷え込んで、息が白い。
それでもさっきまで暖かい所にいたせいか、寒さはそれほど感じなかった。
待ち合わせた、交差路で握手を交わす。これでまた当分会うことは無い。
「お互い、頑張ろうな。」私は言った。
「ああ。」ケフカは頷いた。

ケフカの手は温かかった。
 
数年後。私はある戦場にいた。
あれから何度かケフカに手紙を書いたが、返事は無かった。
忙しいのだろうか、そう思いながら、気づけば手紙を書かなくなっていた。
魔導戦士や魔導アーマーの投入を出来るだけ拒んだ私の作戦は、進度が遅かった。

そんな時だった。ケフカが来ると聞いたのは。

友人と会うのに私は心の準備をした。
遠くでケフカの笑い声が聞こえた。出来ればこの時が訪れ無ければ良い、そう思った。
数年ぶりの再会は酷く呆気なかった。
久しぶりに会ったケフカは、姿形、言動、思考、行動、全てが変わってしまっていた。
共に挨拶は無い。
別人と思えるほど痩せ、聞いた話の通り、顔には派手な化粧を施し、奇抜な道化のような格好をしている。
「からだの方は、大丈夫なのか?」私は口を開いた。
「見てのとおり、ピンピンしてるさ。頭の方はイカれちゃったけど。」
ケフカは指を頭の方でくるくると回した。
「それより、何なの?この体たらく。僕なら今日だけで十分なのに。やる気ないの?」
「レオの仕事が遅いから、僕がこんなところまで来なきゃならなくなったんだ。すごく迷惑。」
早口でまくし立てると、派手な靴で椅子を蹴った。
「傑作が出来たとこなのに、水差さないでくれる?」
そう言って、長く結わえた髪に挿した飾りを直す。

ゾッとした。
心臓を鷲?みにされたかのようだった。
私の知っているケフカは、本当に無くなっていた。
近くにいたはずの友人を救えなかったことに気付いた。
それなのに、私は他国の者を殺さぬよう、救おうとしている。
私はなんと無力なのか。
ケフカと共に過ごした時間は確かにあった。
お前は忘れてしまったかもしれないが、私はいつまでも覚えておこう。
忘れるべきではない。
手のひらに残るあの時の傷跡が見えた。
私はケフカと作戦について話しながら、思った。
 「レオ・クリストフです。よろしくお願いします。」
3年前のある日、私は地方からベクタに配属になった。
ベクタは私がいた所より、やはりあわただしく緊張感に溢れていた。
 
施設を案内してもらっている最中、奇抜な格好、不思議な化粧をした男が目の前を通り過ぎた。
「あの方は?」
「ケフカさ。ケフカ・パラッツオ、名前は聞いたことあるんじゃないかい?」
「ああ…あの方が。」
確かに聞いたことはあった。
魔導アーマーをはじめとする、数々の道具を発明した。そして自らも失われたはずの魔法を使う事が出来る、博士であり魔導師。
私は何年も軍にいながら、会った事が無かった。
「挨拶をしてきます。」
「いや、ちょっと待て。」
歩を進めようとしたところで、引き留められた。
「どうしました。」
「あの人はとても変わった人だ。機嫌がよろしくないと何されるか分からないから、気をつけた方が良いよ。」 
「そうですか。ご忠告ありがとうございます。」
格好を見れば変わった人物であることは、一目瞭然であるが、ベクタともなると癖の強い人間も多いのかもしれない。
 
失礼します。声を掛け挨拶をしたが、「ああ。」と興味無さげに一瞥しただけで、去ってしまった。
多少呆然としたが、何事もなくほっとした。

ケフカは変わった人、もとい普通ではない人だった。
ベクタでは周知の事実であったようだが、ケフカは魔導注入の影響により、精神の近郊を保つ事が出来ない。
ケフカの世代、私より数年前であるが、彼らの世代で魔導注入をを受け生存し、
且つ生活を営めている者について、私はケフカしか知らない。
ケフカの存在は奇跡に近かったのかもしれなかった。
さすがと言うべきか、ケフカの魔導に対する没入は凄まじく、破壊力の高い兵器を次々と開発した。
しかし、その姿は帝国諸とも得体の知れない力に溺れていくように見えた。
 
ドマにて。
ドマの兵は祖国を守るべく、勝てる見込みは無いと分かっていながら、籠城を試みていた。
数日もすれば降伏し、血も流れずに済むだろう。
しかし、私は皇帝のご命令により、ベクタに一時戻らねばならなくなった。
気がかりは、ケフカに後を託さなければいけないことだ。
気の迷いで大変な事をしないよう、何度も伝えたはずだった。
 
悪い予感ほど的中する。
ケフカが毒を用い、城内の者を全滅させたと一報が入った。
何故、そんな事を。
あまりの残虐さに戦慄する。
ケフカの残忍さを見抜け無かった、己の甘さに腹が立った。
 
 急ぎ、ドマへ引き返した私は、既に解散しつつある陣営の奥、ケフカの居場所に向かった。
話がある。私は切り出した。
「毒を使ったそうだな。」
それが何だ。悪びれもせずケフカは答えた。
「お前は、人の命を奪った事に対し何も思わないのか?」この男の真意を問うべきだ。
「敵と役立たずを殺して何が悪い?」
この男にとって役に立つか、立たないかなのか。
「胸に手を当てて聞いてみるが良い。人の子であれば心が痛むはずだ。」
「ドマごときに手こずっていたから、手を貸したまで。私のおかげで勝利を収めたんだから寧ろ感謝して欲しいくらいだね。」
「ふざけるな。」下種、という言葉を私は辛うじて飲み込んだ。
「は、帰ったお前が悪い。」笑うケフカに怒りで手が震えた。
「次は私が許さない。皇帝が許してもだ。帰れ。今すぐに。」
「せいぜい、ほざけ。」ケフカは鼻で笑って出ていった。
 
ベクタに戻った私は皇帝に進言した。
「あの男は死に値する罪を十分に犯している。少なくとも中枢に置くべき者ではありません。」
「まあ焦るな、レオよ。あの道化なら死ぬまで踊らせておけばよいのだ。
あのように哀れにも狂ってしまったが、従順でまだまだ使える奴だ。」
皇帝はケフカを利用するつもりのようだった。
「しかし、ドマの件はまずい。お前の意見ももっともだ。きちんと話を聞いてから、しばらく牢に入れよう。」
 
皇帝は聞き入れてくれたようだった。あの男は放っておいて良い人間ではない。
ケフカが力を失い、帝国を去るまで何度でも言うべきだ。
ケフカの件に関わるべきではない、経験が告げていた不安を奮い立たせた。
 
その夜。何か物音を認識して、目が覚めた。ケフカの笑い声だった。
ぶつぶつ喋る音と、腹の底から笑うような声。
ろくでもない事を考えているのだろうと思う反面、気にはなった。
哀れではあるかもしれない。
ケフカは近く牢に入ることになるだろう。
 
 ケフカ側です。
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気がつけばいつも、嘲笑や憎悪、拒絶の声が聞こえるようになっていた。
ドマにいる今日もずっと聞こえていて、きりがなかった。
ピエロ野郎が、気狂いが、レオ将軍は立派だが、アイツはいない方が良い。
耳を塞いでも聞こえるのは一緒なので、そのまま聞いている。
レオを見るたびに不愉快な気分にさせられるから、特別な仕事を作ってあげた。
疎ましいレオはベクタに帰った。
 
「毒をもて。」
レオに嫌な思いをさせられたから、このくらいしないと気が晴れない。
反帝国の一味に邪魔されたが、ようやく僕の心に平安をもたらすきっかけが訪れた。
輝く美しい液体を、ゆっくりと掘りに流し込んだ。
汚ならしかった水が、鮮やかに変わっていくのを僕はうっとりと眺めた。
やがて、城内が少しずつざわめいてくる。
一人死んだ。
死んだ。死んだ。
聞こえるうめき声に、僕は目を閉じて聞き惚れる。
えもいわれぬ快感が体を包み、僕は満足感に酔いしれた。

ベクタに戻り数日が経った。
調べていた三闘神について新たな事が分かり、皇帝に話すため向かう。
近づくにつれて話声が聞こえてくる。
レオ・クリストフ。
皇帝は言った。
「あの道化なら死ぬまで踊らせておけばよい。哀れにも狂ってしまったが、従順でまだまだ使えるぞ。」
 
 
話す気が失せて、立ち去った。
その深夜。眠りにつけず、明かりの無い部屋をあてもなく見回す。
「あの道化なら死ぬまで踊らせておけばよい。」
皇帝の言葉を、反芻していた。
水を飲む手が酷く震えていることに気付く。
戦いの道具と化した体は、役に立たなければただのゴミだ。
レオはやはり私を陥れようとしていた。
レオと皇帝は本音で話し合うようだ。
大好きな皇帝を裏切った罪で死ね。
虚しさと情けなさにが込み上げてきて、盛大に笑った。
 
見せしめとして牢に入れられた私は、甘言を流す。
リターナーには幻獣の娘がいます。幻獣たちが力を貸す可能性は高いでしょう。
奴らが牙を向けたら脅威です。
しかし、あの力、サマサはあれを手に入れる絶好の機会だとは思いませんか?
私は牢を出て、サマサに向かった。
 
私用を済ませた私は皇帝に報告するため、ベクタに戻る。
途中でマントに血が着いているのに気付いて捨てた。
 
「陛下、レオ・クリストフは死にました。
サマサにて反逆組織リターナーの者に与し、我が兵を殺害、魔石を奪おうとしたため、私が手を下しました。」
 
皇帝の顔がこわばるのを見た。
 

 
  十数人の兵の前に立つのは、年若い青年。青年は帝国軍のある分隊の長だった。
軍の人間の大半は年上の人物で、歴戦の者たちである。
異例の昇進を遂げている青年の将来は、有望視されているといって良かった。
「研究員ふぜいが。」周囲の者の心中は穏やかでなかった。
経験の少ない若輩者、まして研究所上がりの人間など軍にはいらない。
それが本音だった。
彼が魔法という未知の力を使うことが出来る点も波を荒げた。
「魔法、か。珍しい力を持っているな。」
青年は振り向いた。今度の遠征で行動を共にする将軍だった。
「モンスターならそんな力も持っていてもおかしくはないが。我々は人間だ。ああすまん。
悪気はないんだ。陛下も戯れが過ぎる。そんな恐ろしい力を人間に宿そうなど、正気の沙汰ではない。」
将軍は顎を上げて、話した。
「君の里が知れるな。」意地の悪い男だ。
青年は無言でその男を睨み、立ち去った。
戦争は激化の一途を辿っていた。
急激に領土を拡大させようとしているガストラ帝国。反発するものの数は多い。
帝国は周辺の国を征圧せんとするため、躍起になっていた。
反政府勢力の居場所が分かり次第、持ち前の機動力で攻め込み、殲滅させる。
今日もある国をようやく攻め滅ぼし、既に陣地の解散をしている途中である。
青年も指示をしながら、手伝う。
そんな中、新たな伝令が舞い込んだ。重要な命らしく、すぐさま皆集められた。
前方に立つ将軍は威圧的な声色で文書を読み始め、空気が変わる。
「大陸内にある小国にて不穏な動きあり。小隊は待機し、命令を待て。」
その横に立つ青年も一言も聞き漏らすまいとしていた。
しかし、告げられた地名を聞いて、青年は戦慄し青ざめる。
その小国の街は、青年の故郷。
距離は近い。戦慄く青年をよそに、軍人たちはいきり立った。
態度を明確にしていない国を攻め落とす口実が出来た。
 

「お願いします。何かの間違いです。確かな事が分かるまで待っていただけませんか?」
青年は将軍に頭を下げた。
「本当ならば待つわけもないが、君の大切な人がいるならば待ってあげても良い。」
将軍は頷いた。
青年は急ぎ、帝国首都ベクタに向かった。
青年の故郷はきわめて平凡な国。争いごとは嫌いでのんびりとした土地だ。
反政府組織のアジトになっているなど考えられなかった。
その日の夜にはベクタに着くことが出来た。やはり情報は誤りだった。
早とちりと伝達のミス。くだらなすぎる。
「ふざけるな。」
不愉快な顔を顕にして、即座に陣地へ急いだ。
明るくなった頃、陣地に着いたが大勢の兵の姿無く、解体を任された少数の人間がいるばかりだった。
青年の姿を見た者はきょとんとして言った。
「あの後、作戦が変わって我々の隊を残して行ってしまいましたよ。お陰で片付けにあと2,3日掛かりそうです。
そういえば、一緒ではなかったのですか?」
どうしてだ。まだ進軍の命令は出ていないはずだ。
軍の後を追うより他無かった。
既に街は火の海。
「君か。パラッツォ。もう少し早く戻るんだったな。お陰で、ほら。わが軍は既に事を終えてしまったぞ。
ほう、そうか、誤りだったか。不運だったな。」
将軍は兜を脱ぎ脇に抱えて言った。
「何故、待っていただけなかったのですか。最終的な命令は出ていなかったはずです。」
青年は珍しく感情を顕にし、責めたてるように言った。
「君の知人がいることは分かったのだが、これも我々の仕事だと思い直してな。私情を挟むわけにはいかぬだろう。
もちろん、君がそのような甘い考えの持ち主とは思いたくもないが。」
将軍は、のらりくらりと答えた。
青年はギリギリと唇を噛んだ。
畜生以下の行いをしておいて、なお優位に立とうとするその汚さに吐き気がした。
「君はまだ若い。待っている間にも軍の士気は下がり、敵も力を蓄えるのだ。ましてや我々は君とは違って
血の気の多い者ばかりだ。敵がいると知れば、いても立ってもいられない。…お前にこの仕事が勤まるか。」
許せない。憎んでも憎みきれない。
畜生以下の将軍は汚らしい顔を上げ、空をうっとりと見つめた。
「あの村は綺麗な女が多かった。絹のような肌が忘れられない。」
瞬間、青年の眼前は真っ赤になって、気付けば手にサンダーという魔法を纏い殴りかかっていた。
しかし渾身の力を込めた攻撃は、軽々と除けられてしまい、手首を掴まれてしまう。
そのまま壁に押えつけられ、身動きが取れない。
「魔法?そんなもの、こうしてしまえば怖くも何とも無いわ。」
「離せ。」
「白衣じゃなければ動けんか?」
下劣な将軍はにやついた。

 

  魔導研究所。
「どうした、久しぶりに来たと思ったら。」
シドは椅子を回転させ振り向いた。
「博士。前に、言っていたあの幻獣。僕で試しませんか?」
「急に何を。」
急な申し出にシドは驚きを隠せない。青年は真剣そのものといった表情。
青年が言っているのは、既に魔導の抽出はされているが、強力すぎて未だ使用していない幻獣の力。
それを自分で試せと言う。
植えつけられる魔力は、幻獣が持つ元々の能力に比例している事が分かっていた。
それと同時に、注入後に生じる危険も比例して大きくなることも。
青年は手を広げ、少し何かをつぶやいた。そして手のひらには細かな氷塊が生じる。
「こんな力では、魔物はもちろん、人一人殺せない。役に立ちません。」
青年は生じた氷の粒を眺めて言った。
青年は気付けばベッドの上にいた。
ある日、研究室の一角で倒れているのが発見されたのだ。
床にはあの幻獣の抽出液の入っていた容器等が散乱し、中身は残っていなかった。
青年の体に入ってしまったのだろう。
そう考えるより他無かった。
その行為は青年が自ら行なったのかもしれないし、誰か協力者がいたのかもしれない。
結局目撃者もおらず、自分が協力したと名乗出る者もいなかったので、どういう経緯で注入がなされたかは分からないまま。
シドは苦々しい顔をした。
青年は目を開けた。
思考はぼんやりとしていて、ただ白い明かりが眩しかった。
記憶が無い。針が腕に刺さるのを見て、それからどうなったっけ。
針を持つ手は僕の物?それとも?
それから数ヶ月間、青年は公の場に姿を現すことはなかった。
 
「最近、活躍が目覚しいな。ケフカ。そしてシド博士。」
ガストラ皇帝は玉座に浅く腰をかけ、正面の年若い魔導師を見つめた。
ここは玉座の間。
魔導師ケフカと、魔導研究所の責任者シドは皇帝に呼ばれて参じていた。
「滅相もございません。陛下のご威光があればこそです。」
魔導師は慇懃に答える。
シドは勿体ないお言葉、と呟いた。
「魔法の力を見せよ。」
話も進み、皇帝はやや声を弾ませ言った。
「そのつもりで参りました。」
あれを。魔導師は後ろに控えていた兵に声をかけた。
シドは何の事か分からず背後を振り向いた。
「よろしいですよね?」
魔導師は微笑んだ。
兵士が連れてきたのは、顔を白い布で包まれ、手足を拘束された男。
魔導師はその白い布をゆっくりと取り払う。
魔導師の故郷を焼いた将軍だった。
シドは眼を見開いて魔導師を凝視した。
「多少、汚れますので、外へ。」
魔導師はエスコートするかのように、皇帝を促した。
廊下で歩を進めながらガストラは思っていた。
この者は変わった。
たった数ヶ月前この魔導師は、取るに足りない若者に過ぎなかった。
魔導の力を得たので少し注意して見てはいたが、たいしたカリスマ性があるわけでもなく、バカでは無いが、したたかでもない。
持った印象などそんな程度だ。
それがこの様だ。
気に食わない人間を処刑し、それを私に見せようとしている。なんと人は残酷になるのだろう。
(魔法の力とは恐ろしいものだ。)そう思うのと同時に、その力に魅力を感じた。
柱に拘束された将軍は必死の形相で哀願している。
魔導師は何も聞こえぬかのように、その首を掴んだ。
シドは立ち去る事も出来ず、顔を背け苦い表情をしていた。
「ヒッ、助けてください。」将軍は泣き出し鼻水まで流す。
それを満面の笑みで見つめながら、魔導師は手のひらに魔力を集め始めた。
「あ…あ…」じりじりと皮膚が、焼けていく。
ぎゃーと叫び声がして、将軍は一瞬にして炎に包まれた。
「いかがですか?」かつて将軍だった物が動かなくなってから、魔導師は言った。
「良かろう。強い力だ。」たいした時間も経たずに、炭となり果てるだろう。
この力はかつて人が持ち得なかった力だ。
「ケフカよ、お前には前線にも出てもらいたいが、その経験を生かすためにシドと組むがよい。
魔導の研究にも励み、我が帝国を最強にせしめる兵器を作るのだ。」
「仰せのままに。」魔導師は礼をし、シドは御意と言った。
お時間を取らせてしまいました。そう魔導師は去ろうとする。
「待て、ケフカ。」ガストラは呼び止め、魔導師は振り返った。
「期待している。」皇帝は言う。
「分かりました。」と、魔導師は微笑んだ。
研究所へ2人戻る途中、魔導師は不意に立ち止まり話しかけた。
「博士。僕は化け物ですか?」
少しの沈黙があった。
「君は、化け物なんかじゃない。」シドは答えた。
 ベクタ研究所
これから我が身に降り懸かる凶事を予感してか、泣き叫ぶ幼いセリス。
哀れに思ったケフカ青年は「僕が代わりに受ける」と名乗り出た。
実験が成功すると思ってた訳ではない。
ただ、あの小さな子どもにこの恐怖を味あわせるよりはマシだ。
実験室へストレッチャーで運ばれる途中、小さなフワフワの金髪が目に入った。
目が合ったが、その子は何を言うでもなく、ただ上目遣いで、ずっとこっちを見ていた。
私は少しだけ表情を和らげてみせた。

気がつけば、ベッドの上にいた。身体には幾つかの管が這っていた。
ああ、もう終わったのか。呆気なさと、どうにでもなれという気持ちが交差した。
パタン。部屋の中で音がした。
脚の先に目をやると、セリスが椅子から飛び降り、こちらにパタパタと走り寄る。
白いフワフワのワンピースと柔らかそうな金色の髪の毛、大きなパチクリとした瞳。
ベッドまでやっていた少女は身体を押し付けて、こちらをジーッと見ている。
相変わらず物言う訳ではないが、傍らに存在するこの少女が、私が一時でも守った命だと思えば、それはたいそう可憐なものに思えた。
自然に手が伸びて、頭を撫でてやった。

 物心付いた時から私は特別で、帝国を拡大させるために、何より生き残るために、強くなることは不可欠だった。
シドは私を厳しくも優しく育て、そして守ってくれた。
片隅に残る記憶は、幼い頃遊んでくれたケフカだ。
私は教育を受けるため、ベクタから離れ、気がつけば疎遠になっていた気がする。
数年ぶりにベクタに戻り、研究所に脚を踏み入れた。
私は15歳になっていた。
研究所は昔と変わっていないが、戦争の気配が漂い、どこか雑然としているように感じた。
人気のない長い廊下、一つだけ開け放たれ、明かりの漏れている部屋があった。
記憶の底、馴染みのある部屋だったような気がする。
ドアをノックし、部屋を覗いた。
常人とは思えぬ服装、道化のような化粧を施した、こけた頬をした男、ケフカだった。


数日間ベクタで暮らしただけで、ケフカが皆から嫌われているのが分かった。
癇癪を起こし、手を上げる、物を投げ付ける、つばを吐き付ける、気に食わない兵士を辞めさせる、辞めざるを得ない状況に追い込む、動物をゴミのように殺す、知能のある幻獣、他国の捕虜をも同じように殺した。
人の道に反した数々の道具もケフカが作ったという。
ケフカの良からぬ話だけでなく、本人のわめく声すら毎日のように耳に入ってくる。
珍しく、ボロボロに負けた戦があった。
命からがら、逃げ帰った。
全身はドロドロ傷だらけ、常勝将軍がどこから見ても敗残兵。惨めなものだった。
激痛に耐え兼ね、地面にへたりこんだ。
一瞬気を遠くへやってしまい、人影に気付いたのは直前だった。
顔を上げれば、あの、道化の格好をした、ケフカ。
ケフカは私のそばに寄り、跪き目線を合わせ、そして私の頭を優しく撫でた。
小さな声で「セリス」と言ったのを聞き逃さなかった。
まもなく、遠くでガシャガシャと多数の鎧が鳴る騒々しい音がして、ケフカはゆっくり立ち上がり、身を翻してどこかへと去った。
昔のような感触だけが残った。

  あれからどうして私はケフカに近付いたのか。
この人は変わっていないのかもしれない。だから確かめたかった?
優しいケフカに会いたかった?
ケフカには誰もいないから?
孤独なケフカを分かってあげられるのは、私だけだから?
10年以上の時は長すぎて、もはやケフカを元に戻すことは出来ない。
ケフカのしてきた罪が消えるわけでもない。
心に異常を来たしたとしても、善悪の判断までが崩壊したわけではないし、なにより罪の意識を感じていない。
ケフカがしてきたことは、ケフカが望んでしたこと。
それはケフカが生まれながら残忍な人間だったってこと?
私にあまり近付かない方が良い。
一度だけケフカは言った。
寂しさを埋めるために君を利用するだろう。
誰だって独りは嫌なんだ。
ケフカは身体を丸め、布団をすっぽりとかぶって眠る。
酷く落ち着かない日があれば、そんな時は抱き締めた。
出来るだけ強く、顔が埋まって苦しいくらいに。
いつも「ありがとう、もう大丈夫だ」といって離れるが、あれは大丈夫ではなかったのだ。
ケフカの残虐さ、横暴さは許されるものではなくなっていた。
ケフカが力を発揮すればするほど、微笑む者は減り、泣く者は増えた。


ケフカなら、世界を支配出来るだろう。
皇帝をも亡き者にしようとしている。
僕と一緒に生きてくれますか?
夢うつつに聞いた声。
私には支えることは出来ない。
ケフカはただ残虐行為に快楽を感じるサディストではない。
ケフカの言葉は空っぽの正義感よりも、有無を言わせない力があった。
ケフカを止めるほどの信念を、戦うことの意味を、私は持っていなかった。
私は、もう特別な存在であり続けることに疲れていた。
何のために戦っているのか。
帝国のため?自分のため?この戦いで誰が幸せになるの?
ある戦局の夜。悩んだ挙句、私は逃げ出した。
運命から、果たすべき役目から、ケフカから。
逃げ切るためには全力で駆けなければならなかったのに、
行く当ての無い身体はノロノロとしか動かなかった。
幾ばくもいかない所で私はあっさりと捕まった。
牢屋から連れ出して、私を守ってくれると言ったロックは、私にとっては、待ち望んだ王子様。
誰かに連れて行って欲しかった。
私は軍人の端くれ。簡単には心を動かさない。
息巻いたが、言動と心が一致していないのは自分が一番分かっていた。
「裏切り者のセリス」
私はケフカを裏切った。

 魔導を注入して、思いがけず魔導士になったのは遠い昔。
魔法なんて特別な力を得た代償は、頭がおかしくなったこと。
実験さえ受けなければ。帝国なんかに来なければ。
後悔したってもう遅い。
一生、治りゃしないんだ。
僕と魔導はもう一体だから。
僕は変わらないつもりだったが、少しずつ皆の目が変わっていった。
昔、僕はどんなんだったっけ。
僕は化け物になってしまって、この先ずっとこう生きて行くのか?
岩場にうずくまってる金色。
何故だか僕は近付いて、見に行った。
心細そうに肩を落として、うなだれている女の子。
ああセリス、立派になった。
鎧をまとい、剣を携えた、女戦士。
ああ、神様も粋なことをしてくれる。
傷付いてはいたが、命に関わるほどではないだろう。
ありがとう、現われてくれて。
無性に頭を撫でたくなった。
変わらない髪の柔らかさ。
セリスは顔をゆっくり上げて、目が合った。
大きな目が僕を見上げる。
ああセリス。
いつかの時みたいだ。
もうセリスが正気に戻りそうだったので、僕は立場をわきまえ、見つけたと兵士に告げ、去った。

 

その日をきっかけに、セリスは僕の部屋を訪れるようになった。
セリスは黙って傍らにいてくれた。
それだけで僕の心は随分落ち着いた。
駄目な時は助けてもらった。

一回だけ、僕から離れてくれと告げたことがある。
気持ちを整理して、意を決して告げた。
不安は永久に僕を支配する。
彼女に何かしてあげることは出来ないから。
本当は、心底、彼女を欲していた。
不安を、孤独を、寂しさを埋めるため、僕は都合良く彼女を利用した。
僕の心に愛なんて感情は生じなくなっていて
依存が深ければ深いほど、もう一人で生きていけなくなるのに。
彼女にいて欲しい。
僕は彼女のことなんてちっとも考えてない。
それでも彼女は傍にいてくれた。
「考えすぎよ」と僕をたしなめる。
セリス、僕と一緒に生きてくれますか?
お願いだから、離れないで。
でも彼女はあっさり僕を捨てた。
はじめから分かっていた。
それなのに、裏切られた虚しさといったら。
どんなに地位を固めても、まともじゃない人間と過ごすなんて負担なだけ。
面白そうだから、近付いて、構って、飽きたんだ。
未来を邪魔するだけの男なんて、価値は無いってことか。
それから、僕は真の絶望の中にいた。
眠りから覚めた時から、僕の心は低く垂れ籠める暗い雲。
唯一、ほんの少しだけ、心が落ち着くのは、僕以外の人間の不幸。
きっと君らは、僕より不運だ。
なんたって死の淵にいる。
死にたくないのに死にそうなのは、苦しいに決まってるんだから。
セリス、もう二度と僕の前に現れないで。
 

 魔導工場から僕はセリスに連れ去られた。
「ケフカ、話を聞いて欲しいの」
彼女が何を言いたいかは分かっていた。
「あなたも気付いてるんでしょう?こんなやり方間違ってるわ。
力は争いを生むだけなの。魔大戦を繰り返してはいけないわ。もう、止めましょう。」
そうか。君はねずみどもの話を真に受けたのか。
「あいつらの言う事を聞いて、帝国に牙を向けるなんて自分の人生に背く行為だとは思わないか?
僕らは大儀のために戦い続けているだけじゃないか。」
僕はもっともらしく詭弁を吐いた。
大儀なんて言葉、よく言えたもんだ。
「僕らはそのために、ルーンナイト、魔導士として生まれ変わった。
魔導の力を使って帝国を勝利に導くのが僕たちの宿命だ。
僕らの努力の結果、帝国は栄える事が出来たんだよ。」
「あなたがしているのは、ただの殺戮なのよ。
罪の無い人を傷付けては駄目なの。」
セリスは絞り出すように、叫んだ。
そう僕はただ人が苦しむ様を見たい。
そしてそれが喜びと化している。
人として外道であることは自覚している。
「お願い、耳を傾けて。」
「僕は、変わるつもりは無いよ。」
僕は告げた。
「私も連れていってくれませんか?」
セリスは言った。
君の気持ちが僕に無くても、少しでも傍にいてくれたら。
「セリス、僕らは命を賭けて戦ってきた。協力を感謝している。」
僕の心は浅ましく、セリスに去って欲しくなかった。
君がいなければ、僕は既に亡き者になっていたかもしれないし、
何より、僕に決心させてくれた。
僕は君の優しさを忘れない。
君がいたから、僕はここまで来れたんだ。


僕はもっと大きな力が欲しくて、魔大陸に行った。
君は仲間と大きな化け物と必死になって戦っていた。
そんなにまでして、止めたいか?
この間まで一緒になってやっていたじゃないか。
ほら、僕の力が如何に大きいか、君は分かっているよね。
君の心が僕に無くたって、ただ僕の傍にいてくれたらいいんだ。
そいつらを殺せば、君は戻ってこれるよ。
そして君は、僕が渡した剣で僕を貫いた。
彼女は僕の目を見ていた。
僕が怖い?
痛みと、衝撃。
血。
本当に刺した。本当に僕を殺そうとした。
カッと頭に血が上って、支配するのは、怒りと惨めさ。
みんな、消えたらいいと思った。

 

世界を旅すると、私たちが残した禍々しい爪痕が各所に残っていた。
行動を共にした仲間にも、永遠に癒えない傷を負わせていた。
父を殺された男、恋人が戦の犠牲になり亡くした男、家族をケフカに殺された男。
彼らの痛みさえもほんの一部で、私たちの罪深さを知った。
どの顔をして仲間と言える?
魔導工場。
私はケフカと二人で話がしたくて、外へ連れ出した。
その姿が血で真っ赤に見えたのは幻だったろうか。
ケフカを止めたかった。
そう遠くないところに、破滅が見えているから。
あなたがしているのはただの殺戮。
もう、やめましょう。
今ならまだ、間に合うから。
変わるつもりは無いとケフカは言った。
「私も連れていってくれませんか。」
私がケフカを止めるしかない。
ケフカは言葉を行動で示すように、サマサでレオ将軍を殺した。
空の大陸から落ちて、再び目覚めてしまったことに、私は絶望した。
記憶が何度も私を責めた。
ケフカから受け取った剣。
手はガタガタと震えていた。その剣でケフカを刺した。
手筋は乱れていて、いたずらに傷付けただけだった。
ケフカの目は見開いていた。
耐え切れなかった。
私は、おじいちゃんが亡くなった日、自殺を図り、死に切れなかった。
生はどこまでもついてきて、私を解放してはくれなかった。
真実に目を向けろ。
気付かない振りをしていた。
私がこの世ですべき事があった。
弱いあなた。優しいあなた。世界を絶望に貶めるあなた。
あなたを葬ることが私の使命。
もう、休みましょうケフカ。

 

僕は文字通り、世界を支配する神となった。
そこに至るまで大したことは無かった。
三闘神の力を我が物にしたことで、見た目は更に人間離れした。
この世の生き物を全て殺すことは容易だったが、それもおもしろくない。
次は幻獣界?興味はない。
セリスたちは僕が作った塔をクリアして、僕の元を訪れた。
仲間と共に。
決意の表情を浮かべてた。
ようやく、死ねる。
僕たちは死闘を繰り広げた。
この上なく楽しくて、久し振りに生きている実感がした。
強大な魔法が僕の皮膚を焼き、致命的な量の血も流れた。
鋭利な刃物が臓器を容赦なく突き刺した。
許容出来ない痛みが訪れたが、それが心地よかった。
次第に動かなくなる身体も、僕を連れていくシグナル。
気がつけば意識を無くしていたようだった。
温もりを感じて、目を開けた。
ああ、セリス。
泣くんじゃない。
ぽたぽたと温かな、大粒の涙が僕に降り注いだ。
「僕なんかのために泣かないで。」
僕は確かに幸せを感じた。
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