魔導工場から僕はセリスに連れ去られた。
「ケフカ、話を聞いて欲しいの」
彼女が何を言いたいかは分かっていた。
「あなたも気付いてるんでしょう?こんなやり方間違ってるわ。
力は争いを生むだけなの。魔大戦を繰り返してはいけないわ。もう、止めましょう。」
そうか。君はねずみどもの話を真に受けたのか。
「あいつらの言う事を聞いて、帝国に牙を向けるなんて自分の人生に背く行為だとは思わないか?
僕らは大儀のために戦い続けているだけじゃないか。」
僕はもっともらしく詭弁を吐いた。
大儀なんて言葉、よく言えたもんだ。
「僕らはそのために、ルーンナイト、魔導士として生まれ変わった。
魔導の力を使って帝国を勝利に導くのが僕たちの宿命だ。
僕らの努力の結果、帝国は栄える事が出来たんだよ。」
「あなたがしているのは、ただの殺戮なのよ。
罪の無い人を傷付けては駄目なの。」
セリスは絞り出すように、叫んだ。
そう僕はただ人が苦しむ様を見たい。
そしてそれが喜びと化している。
人として外道であることは自覚している。
「お願い、耳を傾けて。」
「僕は、変わるつもりは無いよ。」
僕は告げた。
「私も連れていってくれませんか?」
セリスは言った。
君の気持ちが僕に無くても、少しでも傍にいてくれたら。
「セリス、僕らは命を賭けて戦ってきた。協力を感謝している。」
僕の心は浅ましく、セリスに去って欲しくなかった。
君がいなければ、僕は既に亡き者になっていたかもしれないし、
何より、僕に決心させてくれた。
僕は君の優しさを忘れない。
君がいたから、僕はここまで来れたんだ。
僕はもっと大きな力が欲しくて、魔大陸に行った。
君は仲間と大きな化け物と必死になって戦っていた。
そんなにまでして、止めたいか?
この間まで一緒になってやっていたじゃないか。
ほら、僕の力が如何に大きいか、君は分かっているよね。
君の心が僕に無くたって、ただ僕の傍にいてくれたらいいんだ。
そいつらを殺せば、君は戻ってこれるよ。
そして君は、僕が渡した剣で僕を貫いた。
彼女は僕の目を見ていた。
僕が怖い?
痛みと、衝撃。
血。
本当に刺した。本当に僕を殺そうとした。
カッと頭に血が上って、支配するのは、怒りと惨めさ。
みんな、消えたらいいと思った。