ケフカについて書きます。二次創作あり(文章)
小話「数年前121~123」更新しました。(2015年8月9日)
初めて見たのは羽の生えた小さな幻獣だった。
見た目は小さいが、人間で言えば成人並みの知性はあるようだ。
「怖い。ここから出して。助けて。」
小さな幻獣は恐怖で震え、涙を流して懇願する。
私は、それを切り刻むのに立ち会った。
幻獣から魔導の力を抽出し、その命を奪う。
戦争という免罪符を得て、僕たちは彼らを殺し続けた。
0歳人間。誰にも望まれずに生まれた赤子だった。
魔導を注入するも、それを受け入れる器が出来ておらず、次第に衰弱していった。
やがて心臓の鼓動は弱まり、泣く力も失った。
最後はガラス玉のような眼球は何も映さないまま。
肉体はミイラのようになって死んだ。
10歳人間。元は活発で健康な子供だった。
成長期と共に、魔導の力はどう変化するのか。それが実験の目的だった。
注入後、力は定着し、魔法を使うことが出来るようになった。
若年での成功が初だったこともあり、研究所は湧いた。
数日後、精神に異常が見られるようになった。
失敗と分かれば誰も見向きをしなくなる。
半年後、経過の観察を断念、 隔離。
遠方にある灰色の病院で死んだと聞かされた。
魔導の注入はその者の運命を変え、失敗は人生の破滅を意味する。
僕はそのことを誰よりも知っていた。
魔法の存在を認識するたびに、少しずつ何か切り刻まれるような気がする。
「魔法の使用時、君の主観で良いんだが、体にどんな変化が起こっていると思う?」
「元々眠っていた力、それを爆発的に高めて開放する、そんな感じがする。思ったよりも違和感が少ないから。」
「元々眠っていた力か、生来の魔導士との比較が出来れば、改善に繋がるかもしれない。」
1つ。
「ケフカ、好条件の個体が近日入りそうだ。まだ若く小さいが、どうだろう。」
シドはそう言って紙を一枚渡す。
「なるほど、個体に問題無いですね。問題は液の量でしょう。
僕を1とするとそれは0.5、入れるとしたら半分よりも少なく。
それよりも抽出液の鮮度が気になります。出来るだけ早い方が良い。」
また1つ刻まれる。
科学者として心を凍らせて、魔導の力を得た成功者として振る舞い、
全てを求められるままに、受け入れることが出来たなら良かった。
声が聞こえて、体の中の幻獣が、死んでいった者たちが、僕自身が、僕を責め立てる。
彼らは死んだのにどうしてお前は生きている?
彼らの目が、声が、意識が、幾重にも絡み付いて、僕を死へ誘う。
でも、僕は死ぬのが怖い。
彼らの声を聞きたくなくて、僕は今思えばおかしなことをしていたかもしれない。
気がつけば、僕は独りだった。
もがくほどに逃げられなくなる。
全てを失った僕に残されたのは魔導の力。
初めて戦場で魔法を使った時。
未知の力。効果は絶大で、敵だけでなく、帝国の者でさえ恐れおののいた。
僕は戦場で初めて、人を殺した。
また声が聞こえた。
(彼らは死んだのに、どうしてお前は生きている?)
あの羽の生えた幻獣か。死者たちか。
(まだ殺し足りないのか。)
この力を使って、殺すべき者を殺す、それが僕の生きる意味なのかもしれない。
私は他の命を貪って生きる。
(殺しすぎたお前が生きていて良いわけがない。)
魔導工場。傍らにはシド。
「ケフカ、あれから十年になるが…お前は変わったな。私もだが。」
シドが自嘲気味に口にした。
「過去を振り返るなど年寄りのようだな。それに私は変わってはいない。」
シド、その血塗れた手、花を愛でようと、セリスに触れようと罪は浄化できぬ。
生を貪る愚かな人間。お前も死ぬのだ、シド。
意思を交わした人間もどうせ死ぬ。
永遠なんてありはしない。
さあ、早く、世界を焼き尽くす道具を。
見た目は小さいが、人間で言えば成人並みの知性はあるようだ。
「怖い。ここから出して。助けて。」
小さな幻獣は恐怖で震え、涙を流して懇願する。
私は、それを切り刻むのに立ち会った。
幻獣から魔導の力を抽出し、その命を奪う。
戦争という免罪符を得て、僕たちは彼らを殺し続けた。
0歳人間。誰にも望まれずに生まれた赤子だった。
魔導を注入するも、それを受け入れる器が出来ておらず、次第に衰弱していった。
やがて心臓の鼓動は弱まり、泣く力も失った。
最後はガラス玉のような眼球は何も映さないまま。
肉体はミイラのようになって死んだ。
10歳人間。元は活発で健康な子供だった。
成長期と共に、魔導の力はどう変化するのか。それが実験の目的だった。
注入後、力は定着し、魔法を使うことが出来るようになった。
若年での成功が初だったこともあり、研究所は湧いた。
数日後、精神に異常が見られるようになった。
失敗と分かれば誰も見向きをしなくなる。
半年後、経過の観察を断念、 隔離。
遠方にある灰色の病院で死んだと聞かされた。
魔導の注入はその者の運命を変え、失敗は人生の破滅を意味する。
僕はそのことを誰よりも知っていた。
魔法の存在を認識するたびに、少しずつ何か切り刻まれるような気がする。
「魔法の使用時、君の主観で良いんだが、体にどんな変化が起こっていると思う?」
「元々眠っていた力、それを爆発的に高めて開放する、そんな感じがする。思ったよりも違和感が少ないから。」
「元々眠っていた力か、生来の魔導士との比較が出来れば、改善に繋がるかもしれない。」
1つ。
「ケフカ、好条件の個体が近日入りそうだ。まだ若く小さいが、どうだろう。」
シドはそう言って紙を一枚渡す。
「なるほど、個体に問題無いですね。問題は液の量でしょう。
僕を1とするとそれは0.5、入れるとしたら半分よりも少なく。
それよりも抽出液の鮮度が気になります。出来るだけ早い方が良い。」
また1つ刻まれる。
科学者として心を凍らせて、魔導の力を得た成功者として振る舞い、
全てを求められるままに、受け入れることが出来たなら良かった。
声が聞こえて、体の中の幻獣が、死んでいった者たちが、僕自身が、僕を責め立てる。
彼らは死んだのにどうしてお前は生きている?
彼らの目が、声が、意識が、幾重にも絡み付いて、僕を死へ誘う。
でも、僕は死ぬのが怖い。
彼らの声を聞きたくなくて、僕は今思えばおかしなことをしていたかもしれない。
気がつけば、僕は独りだった。
もがくほどに逃げられなくなる。
全てを失った僕に残されたのは魔導の力。
初めて戦場で魔法を使った時。
未知の力。効果は絶大で、敵だけでなく、帝国の者でさえ恐れおののいた。
僕は戦場で初めて、人を殺した。
また声が聞こえた。
(彼らは死んだのに、どうしてお前は生きている?)
あの羽の生えた幻獣か。死者たちか。
(まだ殺し足りないのか。)
この力を使って、殺すべき者を殺す、それが僕の生きる意味なのかもしれない。
私は他の命を貪って生きる。
(殺しすぎたお前が生きていて良いわけがない。)
魔導工場。傍らにはシド。
「ケフカ、あれから十年になるが…お前は変わったな。私もだが。」
シドが自嘲気味に口にした。
「過去を振り返るなど年寄りのようだな。それに私は変わってはいない。」
シド、その血塗れた手、花を愛でようと、セリスに触れようと罪は浄化できぬ。
生を貪る愚かな人間。お前も死ぬのだ、シド。
意思を交わした人間もどうせ死ぬ。
永遠なんてありはしない。
さあ、早く、世界を焼き尽くす道具を。
PR