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ケフカについて書きます。二次創作あり(文章) 小話「数年前121~123」更新しました。(2015年8月9日)
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‐数時間後、帝国領内。

ケフカを長とした帝国軍は、前線に到着していた。
(アイツか。)
ケフカは敵襲の要であろう人物の様子を探った。
それはロッドに鎧といった奇妙ないでたちをした人物。
その男はロッドを掲げ、何かを叫ぶ。
するとゴウと火柱が天を突いた。
「あっ、あれは・・・!?」
セリスが驚いて、ケフカの顔を見た。
(驚くのも無理はない。)
ケフカは思う。
「帝国式の魔法だ。」
ケフカは答えた。
ロッドの男が使った魔法は、帝国式と呼ばれる魔法の形式だった。
「まさか、そんな。」
敵が、帝国軍出身者のみが修めているはずの技を披露した。
即ちそれは、敵が帝国軍を裏切った者であることを意味していた。
「・・・!」
セリスだけでなく、他の者も動揺を隠せないでいる。

裏切り者の存在は帝国軍の暗部だった。

味方に動揺が走る中、威力の強い火柱が再び上がった。

敵の攻撃は(動揺している暇があるのか?)と嘲笑うようだった。
魔法はファイアに違いない。
しかし、魔法の威力が明らかに高く、経験の浅い者が受ければ戦闘不能になりかねない強力な物だった。
(装備で魔力を高めているのかもしれない。)
ケフカは思った。
見慣れぬ形をしたロッドもその一部かもしれない。

「セリス、お前たちは防御と回復に徹するんだ。」
ケフカはそう告げ、セリスは、分かりましたと答えた。
「ロッドを持っている者が魔法を使う。あいつの魔法は強力だ。優先して倒す。」
強力な魔法を目にした者達からはピリピリとした緊張感が伝わる。
「行くぞ。」
ケフカは、数人を選抜し号令をかけた。

その直後だった。
まっすぐに、後方にいるセリスの方へ火球が飛んだ。
「セリス!」
ケフカは振り返った。
「!」
セリスが気付いた時には、火球はもう間近に来ていて回避は難しい状況だった。
セリスは、手にしている剣を咄嗟に目の前に差し出し、火球を受け止めた。
シュウと音がして、どういう訳か剣に当たった魔法は消えた。
「…大丈夫です!」
ダメージを覚悟していたセリスはぽかんとしていたが、我に返って声を出した。
ケフカは様子を窺うが、セリスはどうやら無傷のようで攻撃に転じる。

ケフカが率いる帝国軍は速攻を狙った。
魔法を使う、敵にしてみれば主力の者に攻撃が集中しだしたことで、相手の陣地が焦りだした。
ケフカにはあのような強力な魔法を使う者が何人もいるとは思えなかった。
ロッドの男を倒せば、敵を壊滅に導くことが出来ると踏んだのだった。
帝国軍の猛攻で敵の魔法使いはあっけなく倒れた。
それをきっかけにして、帝国軍の後列の者も攻撃に加わる。
帝国軍は勝利を収めた。
 

 

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帝国軍は勝利を収めたが、皆勝利の喜びに浮き立つ事はなく沈黙していた。
若輩の者には深刻な表情をしている者もいる。

「あの男は元々我々の仲間だったということですか?」
沈黙を破ってセリスはケフカに問うた。
「ああ。」
ケフカは言った。
「魔導戦士の導入が始まって10年以上になる。そういう者がいてもおかしくはない。」
ケフカは言った。
「何故、帝国を裏切る行為を。」
セリスは厳しい表情をしていた。
国に忠誠を誓ったはずの帝国軍人…魔導という力を授けてもらった者が帝国を裏切るなど、
セリスには考えられない事だった。
セリスだけではなく、他の数人もケフカの方を真剣な表情をして見ている。
「…帝国軍は決して甘い組織ではない。それは魔導戦士に限らずだ。
一度は忠誠を誓っても、厳しさに耐えられず去った者が、反旗を翻したのかもしれない。」
ケフカは言葉を選んで答えた。
セリスだけでなく、他の者もため息をついてうな垂れた。

ケフカはいつか来るであろう時が来たのだと思っていた。
奴は、帝国の魔導戦士だった。
ケフカは、自らに課した誓約を反故にして逃げ出した者たちの存在を知っている。
魔導実験は皇帝陛下の命令で行われたが、無理やりされた訳ではない。
実験を拒む権利も有していた。
だが彼らは魔導戦士が背負わなければならない過酷さに耐えかねて、逃げ出し帝国を裏切った。
そして反帝国組織を作り、攻めてきた。
「また、このような事が起こるかもしれない。お前たちの目で確かめるんだ。」
ケフカは言った。
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あれからひと月が経った。
我々は相も変わらず、戦場に身を置いている。
「任せて!」
前方にいたセリスが声を上げ、駆け出して剣を振り上げる。
敵の放った魔法が刀身に吸い込まれた。
「かかれ!」セリスが号令をかけ、兵たちは一斉に走りだす。
魔法を食らう可能性が無いと兵士たちは分かっていたので、皆生き生きと躍動した。

我々はあの技に魔封剣と名前を付けた。
文字通り魔法を封じる剣。
元帝国軍魔導士対策として、魔法を使われてもダメージを受けないようにする手段が必要だった。
古い文献には魔法への耐性を増幅させる魔法や装備品の存在、
または魔法を跳ね返す代物もあったと記されているが、未だそれは伝説の域を出なかった。
まだガストラ帝国は他を圧倒していない。
どこかにあるかもしれない幻の武器を探す時間も兵も、我々は持っていなかった。

先の戦で手がかりを見つけた「魔封剣」。
我々は可能性を感じ実戦で使える物にしようと試みた。

魔法と剣技を磨いてきたセリスは、魔法を恐れず挑んだ。

他にも候補を募ったが、手を上げるものは少なかった。
また「魔封剣」を何度か試した結果、魔法に耐性を持つ魔導戦士で無ければダメージを受けると分かり、
候補者は減った。
魔法を剣で受けるなど、気概と剣の技に長けていなければ出来ないことだったのだ。
身体で魔法を受けてしまえば、それは即ち終わりを意味する。
退いた者たちの判断は誤ってはいない。

セリスだけが魔封剣を物にし、使いこなせるようになった。
その様に他の兵は少なからず畏敬の念を抱いたようだった。
他の兵を率いたセリスが魔封剣で魔法を剣先で吸収し、引き受ける。
その間、自分は攻撃に参加出来ないが、他の者へのダメージが無くなる。
魔封剣は皆の身を雷から守る、避雷針の様な技だった。

帝国軍は圧倒的な強さを見せつけて勝利した。
魔法を使う敵は少ないが、セリスがいれば勝利できるだろうとケフカは思った。

戦いも終わり、我々は一息付いていた。
「魔封剣にもだいぶ慣れてきました。あの程度でしたら抑えられます。」
そう言ってセリスは髪をといた。
長い髪がなびく。
魔法を使う相手に対して、敗北を喫すことはほぼなくなっていた。
その要はセリスだ。
敵の魔法を防ぐことが出来るのは、帝国においてセリスしかいない。
「あれなら一軍を統率出来る。」ケフカは呟いた。
魔法の重要性が増していく中では、その存在は大きな物となるだろう。
「セリス」
「君を将軍に推薦しよう。」
ケフカが声をかけ、そのように言うと、セリスはぱっと振り向いた。


セリスがケフカに師事して、わずか半年。

「セリス・シェール、本日より将軍の地位に任ずる。」
帝国軍昇進式。
「は。」
顔を上げたセリスの顔は、誰よりも厳しく、他の新しく任ぜられた将軍たちに引けを取らなかった。
これまでの功績が認められ、史上最年少の将軍が誕生した。
「良かったな。」
式を終えたセリスにケフカは声をかけた。
「はい。」セリスは緊張から開放された様子で、頬がわずかに紅潮していた。
「これから忙しくなる。」
「分かっています。」
ケフカが言うと、セリスはしっかりと答えた。

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数ヶ月ぶりに大遠征が行われることになった。
皇帝を初め、将軍の面々ら、帝国軍幹部が顔を揃えている。
ここは作戦会議の場。
大遠征ともあって皇帝がイニシアチブを取る。
「セリス・シェール、以前マランダの遠征に参加していたな。」
皇帝は言った。
「はい。」セリスは答える。
「マランダ軍には、魔導師がいます。」参報が口を開く。
「魔導師か…。」面々の顔が険しくなり、セリスの方を向く。
皇帝は言った。
「「魔封剣」があれば、問題無いだろう。セリス・シェール、行けるな。」
「はっ。」セリスは言った。
「ケフカ、お前も近隣の隊を任せる。我々の魔導の力を思い知らせてやれ。」
「分かりました。」ケフカは答えた。
「常勝将軍。頼んだぞ。」皇帝はセリスを見て言った。

セリスは将軍になってから、華々しい経歴を樹立してった。
[常勝将軍]その通り名が示すとおり、セリスが指揮を執れば負けることはなかった。
誰もが勝利を疑いもしない。


数日後、マランダの戦場にセリスはいた。

負ける時は得てして予想外のことが起こる。

セリスが率いる隊は苦戦を強いられていた。

セリスの相手は、未知の敵かと思う程に強い。
相手の攻撃・魔法が強力だったわけではない。
その防御力が高く、一人を倒すだけで異常とも言える時間を費やざるをえなかった。
魔封剣で魔法を封じるよりも、一人でも多く早く倒すしかない。
セリスは魔法を封じる術を持ち、土地勘もある。
そんなセリスが指揮官であるにもかかわらず、自らが前線に向かわなければならないほど、隊は追い込まれていた。

 


「来い!」
セリスは気丈に相手を挑発する。
あっという間に数人の敵が背後に回った。
セリスは舌打ちをする。
我々の兵が減っている。
ブリザドを唱え、背後の敵を突き刺すと、血が降りかかる。
セリスはその飛沫が目に入らぬようにした。
一人倒してもまたすぐに次が来る。
「かかれ!」
セリスは号令をかけ、自らもとっさに敵の攻撃を剣で受ける。
それを何度か繰り返すと剣が折れた。
「くっ。」
もう一本の剣を抜き、応戦する。
一つ一つの攻撃が酷く重く感じられる。
「将軍!こちらへ!」
敵の猛攻をほんの少ししのいだ隙を見て、セリスは前線から退く。
次第にセリスも隊も疲弊していった。

辺りが暗くなり、次第に皆の動きは緩やかになっていった。
完全に辺りは闇となり、停戦する。
日没を迎えた頃にはセリスの声は枯れ、疲れ果てていた。
セリスらは隊の陣地に戻る。
戦死者も出ていて、怪我人は多数いた。
テントを開けると、呻き声が響いていて、手当てを待つ者とする者でごった返していた。
セリスも治療に加わる。
次々に怪我人が運ばれ、その様はまさに惨状。
戦力は大きく削がれている。
不利な状況だと思った。

ようやく、手当てのめどが付く。
「援軍を。」セリスは伝達を依頼して、奥に下がった。

我々は防具に関しては劣っているかもしれない。
ならば、兵力を補充して押すまで。
セリスは、自分を奮い立たせた。

つかの間の時間、一人になる。
暗闇が救いだった。

もし日の長い季節だったら、負けていた。

(明日は勝てないかもしれない。)
奮い立たせた気持ちが、すぐに不安に変わりそうになる。
酷く一日が長い。

援軍を待つ間、テントの奥でセリスは明日どうすれば勝てるのか、考えを巡らせていた。
が、良い案は浮かばない。
時刻は既に日付を跨ぎ、眠気こそ無いが、全身は疲労感に襲われていた。
「セリス将軍。ケフカ様が。」
ケフカと聞いて、セリスは立ち上がった。
ケフカの隊は既に勝利を収めている。援軍を連れてきたのだ。

「入るぞ。」声がして、その姿が見える。
酷く久しぶりに顔を見た気がした。
「外でも出よう。」
目が合うと、ケフカは言った。
セリスは自分が浮かない顔をしていたのかもしれない、と思った。

夜営の為につけている火が赤く燃えていた。
見張りの兵たちが、数人見える。
セリスはケフカの後をついて行く。

「場所を貸してくれ。夜営を代わるからお前たちは休んで良い。」
ケフカは見張りの兵士に声を掛けた。

「策を立て直そう。」隣り合って座る。
「第一隊は…。」
セリスは現状の報告を始め、考えた作戦をいくつか伝えていく。
「勝てない敵ではないな。」ケフカは言った。

ひゅん、と一瞬。
夜空に流れる線が目の端に見えた。

 


流れ星だ。
大して気にも留めず話を続けるが、一筋、二筋、次々と星が流れていく。

数十年に一度訪れる、流星群の時だった。
あまりたくさん流れる星に、二人は沈黙した。
「…消そう。」
ケフカは言って、夜営の火を消した。
ケフカも流星を見ていたのだろう。
火を消したことで周囲は真っ暗になるが、天は明るかった。
星と月がはっきりと見える。
空が澄んでいる。

まるでここに降り注ぐかのように、星は流れた。

「ああ、きれいだ。」ケフカは呟いた。
「ええ。」セリスは言った。

絶え間無く流れる星。
静かだった。
日中、本当にここは戦場だったのだろうか、と思えるほどに。

あれ?と思う。
いつの間にかセリスは自分が泣いていることに気が付いた。
辛い訳ではない、嬉しいことがあったわけでもない。

セリスは自分がただ、ほっとしたんだと気が付いた。

ようやく、流れ星は止んだ。
どれくらい星を見ていたのだろう。

ケフカが再び火を点し、明かりが周囲を照らす。

ケフカはセリスの顔を見て言う。
「軍人が易々と涙を見せるな。」ハンカチを差し出してくれる。
「俺には見せても良いが。」
ケフカは言った。

「指揮は引き続き執るんだ。俺はお前の指揮のとおりに動く。」
「お前なら出来るさ。」
ケフカはセリスの目を見て言った。
強い目。

セリスは、ケフカの言葉で力が宿った気がした。

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マランダ軍は総力を結集させ、兵の数は膨れ上がっていた。
セリスとケフカは自軍を従え、それを見ていた。
セリスの手は緊張と興奮でかすかに震えた。
ケフカが口を開く。
「数が増えようと…」
「関係ない。」
思っていた言葉をセリスが言った。
思いは一緒だった。
「出撃を開始します。」
セリスはケフカを見る。
「武運を祈ります。」セリスは言った。
「ああ、指揮は頼んだ。」ケフカは答える。
そしてケフカたちは自軍を離れ、前線へ向かった。


ケフカは大抵は長として隊全体を指揮をする立場にあったが、当作戦でケフカは前線を務める。
それは前日、セリスと交わした作戦だった。
 

セリスとケフカの隊の戦いは、帝国対マランダの勝敗を決める戦いとなった。
「魔封剣!」セリスは後方で援護をしながら指揮を執る。
ケフカは相手の魔法が封じられたのを確認し、唱えた。
「ブリザラ!」
ケフカの魔法は広範囲に及ぶ。多くの敵が倒れた。

接近戦となり、武器を無くした敵が破れかぶれに、ケフカに殴りかかる。
ドスりと鈍い痛み。身体に衝撃が走る。
「っつ」一瞬呼吸が止まるが、拳程度では致命傷にはならない。
「…きかないな!」
密接した敵を振りほどき、ケフカは魔法を唱えた。
「ドレイン!」
敵の体力を奪い、自らのものにする魔法。
不意に魔法を食らった相手はぐらりとよろめいた。
対照的にケフカのダメージは、まるで無かったかのように消え去った。
(動ける。)
ケフカはにやりと笑みを浮かべ、敵を蹴り倒した。
「今だ、いけ!」
ケフカは周囲を鼓舞した。
統率する立場にはなってはいるが、戦場に立てばやはり強い。

 


作戦は成功した。
マランダ軍は撤退し、マランダが帝国領傘下となるのも時間の問題となった。
「ケフカ。」セリスはケフカを見つけて声を掛ける。
べっとりとケフカの髪の毛に付いていた。
「血がついているわ。」
「敵のだ。」そう言って拭う。
ケフカの口の端からは血が流れ、あちこちに傷や痣が出来ている。
戦闘の激しさを物語っていた。
「怪我が。」
「たいしたことない。…君は返り血が酷いな。」
「そうですね。ですが、私は無傷です。今、ケアルを。」
セリスの言葉をさえぎるように、すっと手が差し出された。
「よくやった。」ケフカは言う。
私はその手を握り返した。
「ありがとうございました。」私は言った。

この人がいなければ、この戦いは勝てなかった。
ケフカは笑顔で、私も自然と笑みが零れた。

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私は数日前からマランダ市街に入っていた。
残党の討伐が任務だった。
「ケフカよ、こういう仕事はお前に頼むに限るな。」
皇帝は命じる際、そう言った。

マランダ市街では戦にならなかったので、街は比較的落ち着いていた。
しかし、大勢の帝国軍が既に駐留を始め、物々しい雰囲気をかもし出している。
[世界で一番美しい街]
ここはかつてそう呼ばれた土地だった。
優美だったであろうその気配は、今は身を潜め、重々しい緊張感にあふれている。

街の中心部に構えた帝国軍の本拠地に、私は向かっていた。

建物に隠れていたが、何か動く影が見えた気がした。
動物にしては大きい、おそらく人だろう。
「貴様、そこで何をしている。」
私が声をかけると、影は動きを止めた。
紺色の皺くちゃになった衣服。
帝国兵ではない。
「動くな。大人しくしていれば、手荒なことはしない。」
私はゆっくりと近づいた。
「手を頭の後ろで組め。」
そう伝えたが、影は動かなかった。
「もう一度言う、手を頭の後ろで組め。従わなければ、」
言いかけた所で、人影は勢い良く立ち上がり、こちらに向かって突進してくる。
想定出来る動きだったので、落ち着いて交わす。
相手の懐から何かが落ちる。
相手がこちらを向いたので、人物の全貌が見えた。
 


十歳になるかならないか位の少年だ。
物騒な代物が地面に投げ出されていた。
「爆弾か。」
 ケフカは拾い上げ呟いた。
「こんなちゃちな物で、果たして何人殺せるか。」
 ケフカは爆弾を眺めて言う。
古典的でいかにも手製といった作りをした代物。
一方、少年は追い詰められた表情をしている。
「抵抗するんじゃない。大人を怒らせるな。」
 ケフカは言った。
しかし、子供は聞く耳を持たなかったようで、ついにナイフを取り出した。
ふう。ケフカはため息をついた。
少年はわめきながら振りまわしだす。
相手は子供だ。勝てないと分からせなければ。
咄嗟に目の前に差し出された刃を手で握る。
少年の動きが止まった。
刀身を伝って血が流れたが、気にはならない。
少年は必死にナイフを私から引き離そうとするが、わざと強く握り動かないようにする。
少年は怯えて泣きそうになっている。
ケフカは言った。
「私の名前はケフカだ。私が憎ければ他ではなく私を狙え。」
少年がびくついている隙に、ナイフを取り上げて、後頭部を撃ち気絶させた。

本部へ入ろうとしていた兵に声をかける。
「この子供を預かってくれ。事情は後で説明する。頼んだ。」
 ケフカは少年を横たえて立ち上がった。

この顔に見覚えがあった。
武器屋の息子だ。

 


その足で武器屋を訪れると、意外なことに、店内に店主はいた。
「あなたも過激派だったとは。」ケフカは言った。
「人は見かけによらないと言うでしょう。」
武器屋の店主は、口元に蓄えた髭を歪めた。
しかし、目は笑っていない。
以前顔を合わせた時には穏やかな印象だった。
「息子を預かっている。二度と会えなくなるが良いのか。」
 ケフカは尋ねた。
「かまわない。」
店主は携えていた剣をゆっくりと抜いた。

「…抜くか。」決心の変わることの無い店主を認め、ケフカも剣を抜く。
民間人が勝つことは万が一にもない。

剣が、店主の肉体を貫き、勝負は一瞬で付いた。
 ケフカが刀身を抜くと、衣服が血で侵食されていく。
人体を通り抜ける感覚がした。
店主はまもなく急激な失血で動けなくなり、跪いて倒れた。
まだ、かろうじて息がある。
「思い残すことは?」
「息子を許して欲しい。」か細い声で店主は答えた。
店主の目から徐々に光が失われていく。
「分かった。」ケフカが答えると、しばらくして店主は絶命した。
床に倒れている店主を避け横切ろうとすると、鏡台の上の写真立てが目に入った。
さっきの少年と店主、そしてその妻だろうか、女性が写っている。
写真の彼らは仲むつまじく笑っていた。
ここは彼らの家だ。
妻はどこへ行ったのだろうか。
そんなことを思う。

ケフカは写真立てを伏せ、その場を後にした。
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武器屋のドアを後ろ手に閉め、階段を下りる。
手の傷が少し痛んだ。
数段降りたところで、帝国兵が数名、市街に入るのが見えた。
その中に小柄が女性の姿。
ティナだ。
帝国兵数名に囲まれて歩いている。
以前から痩せていたが、顔色は悪くあの時よりも更に細くなったようだ。
階下に降りていく。
「ケフカ様。」帝国兵もこちらを向いて、敬礼をした。
「ご苦労。」声をかける。
「娘はどうしたんだ?」
 ケフカはティナをちらりと見るが、ティナは俯いている。
「陛下のご命令があり、掃討に参加させろと。」
皇帝の考えそうなことだ。
「そうか。」
相変わらず、皇帝は魔導の娘に執着している。
「しかし、問題がありまして。」兵は言った。
「問題?」
「この娘、最近、まともに働かないのです。ご覧ください。今も…。」
ティナは私の視線から逃れるように帝国兵の後ろに隠れようとしている。
その怯える様は、これから掃討に加わる者には見えない。
「確かに様子がおかしいな、何かあったか。」
「いえ、特には。遠征に何度か連れて行っただけです。戦場に来ると途端にこの有様で…。とても使えたものではないので困っています。」
「野良犬の掃除にくらいしか、使えません。」
帝国兵たちは訴え、呆れた表情をした。
「迷惑をかけるが、しばらくは我慢してくれ。」ケフカは兵を宥める。
ティナを見たが、相変わらず人影に隠れている。
「わざわざ市街にいらっしゃるとは、どうかされたのですか?」
兵は言った。


「反政府派を1名始末した。」
ケフカが言うと、彼らはおぉ…と声を上げた。
ケフカは続けた。
「武器屋の店主だ。子供が本部にこれを仕掛けていたのを見つけてな。店に行ったら白状した。」
「さすが、ケフカ様。」
「これは…爆弾ですか。」
「ああ、他の民家にもあるかもしれない。」
「あいつら、まだ隠れていたとは。」
「爆弾の件は我々が洗います。犬でも連れてきましょう。」
「ああ、あとは頼んだ。」


「ティナ。久しぶりだな。」
声をかけたが、ティナは俯いて、何も言わなかった。
「おい、礼をしろ。」帝国兵がいらついて言ったが、反応は無かった。
「まあ良い。」
ケフカがそう言って立ち去ろうとすると、ティナはびくりと反応して、顔を上げた。
目が合った。
緑色の目が真っ直ぐに私を見ている。
ケフカは、自分の心臓が大きく打ったのを感じた。
胸騒ぎを覚え、背筋がざわめく。
この感覚、どこかで。
そう思って、記憶を辿るよりも早く、ティナが口を開いた。
「この人…怖い。」
ティナはケフカを睨んでいた。
(怖い?私が?)
「何故だ?」ケフカは声を出していた。
「ケフカ様を忘れたのか。この間まで一緒にいたではないか。」
「いや…違う。前と違う人みたい。」
ティナはそう言いながら、後ずさる。
「おかしくなったか。」
帝国兵はティナの言動に驚いていた。
 


「…怖い。」
尚も言い続けるティナ。泣きそうな顔をしている。
「無礼な奴だ。」兵が手を振り上げた。
「止めろ。手荒な真似はするな。」
ケフカは言った。
「この娘は数人程度なら一瞬で殺す。」
「むう…そうは見えないですが…。」そう言って兵は引き下がる。
ケフカは怪我をした手を上げて言った。
「これのせいかもしれない。」
殆ど手当てをしていないので、血がまただらだらと流れだしていた。
「……怖い。」ティナはまた呟いた。
「血を見ると辛い記憶が蘇るのかもしれない。」
ケフカは言った。
「ケフカ様、怪我をされていたとは。気付きませんでした。医療班を呼びましょう。」
兵は慌てて言った。
「呼ばなくても良い。」
ケフカは兵に伝えながら気付いていた。
ティナはただケフカの顔を凝視していて、傷に見向きもしていない。
「勝手に行くさ。」
ティナが怯えて震えていたので、声を掛けるのを止め、その場を後にした。

連中に背中を向けるが、ティナの視線が突き刺さっているのを感じる。
人間を刺した感覚、傷の痛み、怯えた瞳、胸のざわめき。
何故、今、自分が焦燥に駆られなければならないのか分からず、歩を早めるしかなかった。

----------------------------------------------------------------------
 


-------------------
「お疲れ様でした。ケフカ様。」
「ああ。」
数日間の駐留を終え、私はベクタに戻った。
遠征もひと段落し、城内はマランダから戻ってきた兵たちでごった返している。

武器屋の息子は孤児院に預けた。
子供だったので爆弾を仕掛けた事は罪には問われない。
父親が死んだと聞いて、取り乱したそうだが、結局手配した孤児院に大人しく入ったという。
恨まれても構わなかった。
帝国軍の一員である限り、それは「よくあること」だった。
武器屋の息子には辛い思いをさせていると思うが、一方で仕方の無いことと思う。

[怖い…。]
ティナの言葉を思い出す。
他人を殺しておいて、仕方無いとは。
帝国の支配を優先し、子を持つ親を殺しながら大した感情も抱かなかった。
我ながら冷徹だと思う。
ティナはそれを見抜いて、怯えたのかもしれない。
そうケフカは思った。

部屋に戻ると手紙が何通か溜まっていた。
手紙をテーブルに置いて、手のひらに巻いた包帯を外す。
マランダにいる時から、傷は膿んでいた。
「ケアル。」
自分に回復の魔法をかけた。
青白い光が手のひらを包み、すぐに消えた。
「痛。」
ケアルをかけても相変わらず傷はズキズキと痛みを伝える。
手当てもしていたが、未だに良くならない。
何故か、ケアルが自分には効かなくなっているような気がしていた。
以前はそのような事は無かったし、もう治っても良いはずだ。
ケアルの効果が無いのは気のせいではない。
魔力が落ちているのかと思ったが、攻撃魔法は問題無く、寧ろ強まっている。
また、他者に対してケアルは効果があり、自分にだけ効かないのだ。
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