‐数時間後、帝国領内。
ケフカを長とした帝国軍は、前線に到着していた。
(アイツか。)
ケフカは敵襲の要であろう人物の様子を探った。
それはロッドに鎧といった奇妙ないでたちをした人物。
その男はロッドを掲げ、何かを叫ぶ。
するとゴウと火柱が天を突いた。
「あっ、あれは・・・!?」
セリスが驚いて、ケフカの顔を見た。
(驚くのも無理はない。)
ケフカは思う。
「帝国式の魔法だ。」
ケフカは答えた。
ロッドの男が使った魔法は、帝国式と呼ばれる魔法の形式だった。
「まさか、そんな。」
敵が、帝国軍出身者のみが修めているはずの技を披露した。
即ちそれは、敵が帝国軍を裏切った者であることを意味していた。
「・・・!」
セリスだけでなく、他の者も動揺を隠せないでいる。
裏切り者の存在は帝国軍の暗部だった。
味方に動揺が走る中、威力の強い火柱が再び上がった。
敵の攻撃は(動揺している暇があるのか?)と嘲笑うようだった。
魔法はファイアに違いない。
しかし、魔法の威力が明らかに高く、経験の浅い者が受ければ戦闘不能になりかねない強力な物だった。
(装備で魔力を高めているのかもしれない。)
ケフカは思った。
見慣れぬ形をしたロッドもその一部かもしれない。
「セリス、お前たちは防御と回復に徹するんだ。」
ケフカはそう告げ、セリスは、分かりましたと答えた。
「ロッドを持っている者が魔法を使う。あいつの魔法は強力だ。優先して倒す。」
強力な魔法を目にした者達からはピリピリとした緊張感が伝わる。
「行くぞ。」
ケフカは、数人を選抜し号令をかけた。
その直後だった。
まっすぐに、後方にいるセリスの方へ火球が飛んだ。
「セリス!」
ケフカは振り返った。
「!」
セリスが気付いた時には、火球はもう間近に来ていて回避は難しい状況だった。
セリスは、手にしている剣を咄嗟に目の前に差し出し、火球を受け止めた。
シュウと音がして、どういう訳か剣に当たった魔法は消えた。
「…大丈夫です!」
ダメージを覚悟していたセリスはぽかんとしていたが、我に返って声を出した。
ケフカは様子を窺うが、セリスはどうやら無傷のようで攻撃に転じる。
ケフカが率いる帝国軍は速攻を狙った。
魔法を使う、敵にしてみれば主力の者に攻撃が集中しだしたことで、相手の陣地が焦りだした。
ケフカにはあのような強力な魔法を使う者が何人もいるとは思えなかった。
ロッドの男を倒せば、敵を壊滅に導くことが出来ると踏んだのだった。
帝国軍の猛攻で敵の魔法使いはあっけなく倒れた。
それをきっかけにして、帝国軍の後列の者も攻撃に加わる。
帝国軍は勝利を収めた。