帝国軍遠征
ケフカとセリスは見つけた洞窟で一夜を過ごし、夜が明ける前に帝国軍陣地へと向かって出発した。
長く降り続いていた雨は止んでいたが、12月の早朝、気温は低い。
セリスは昨日の行軍と遭難で疲弊している様子だった。
多少の怪我も負っている。
二人は数時間を費やして、陣地にたどり着いた。
陣地に到着後まもなく、ケフカはセリスを連れて救護班の元へ向かう。
セリスの足元が少し覚束ない。
「大丈夫か?」
道中ケフカはセリスに尋ねた。
セリスは、問題ありませんと答えた。
が、顔色が悪い。
まもなく救護班の人間が二人に気付いて駆け寄り、セリスは治療のために預けられた。
ケフカはテントの中に連れられていくセリスを見送り、一息ついた。
隊の者が止めるのを聞かずに、合流して早々にセリスの捜索に出たため、任務が残っている。
ケフカは自分の居場所に戻ろうと思う。
その途中、隊の者とすれ違いケフカは捕まった。
「ケフカ様、ようやくお戻りになったのですね。セリス・シェールの件は我々にお任せ下さいと申し上げたのに…。」
神経質そうなその男は、ケフカに洩らした。
「過ぎたことだろう。セリス・シェールは昔から知っているし、シド博士と懇意にしているから、
私も探すべきだと思ったのだ。」
ケフカは伝えた。
「それは我々も存じていましたが…。」
男は物申したいのか、ブツブツと言う。
「無事見つかったのだから、それで良いではないか。」
ケフカは言う。
「とにかく、今後こういった事は謹んでいただきたいです。」
「分かったから。」
ケフカはしつこい物言いに、少しうんざりしながら答える。
ようやく男が去り、ケフカはふぅとため息をついた。
男が去ってから、途端に種々の業務が降りかかりケフカは忙殺された。
しかし、それが今のケフカには心地良い。
何も考えずに済むと思った。
数時間後、仕事がひと段落した。
ケフカは席を立ち、外に出る。
外は湿った冷たい風が吹いていた。
周囲は湿地帯で見るべきものは少ない。
その中でケフカはふとした瞬間に、魔導の娘ティナを思い出してしまう。
そして、自分のした行動に幾分戸惑いを覚えていることに気が付いた。
ティナに下手な同情をしたことにより、結果的に見放してしまった。
娘を見放したという罪悪感が、年の頃の似たセリスを助けさせたのだろうか。
そんなことを考えた。
セリスの捜索はケフカがせずとも良かったのに、動かずにはいられなかった。
自らの行いが、理に適っていなくて、余りにも小手先だと思った。
そんなことをしても、何かが好転するはずはない。
ただ、出来た空白を埋めたかったのかもしれない。
ケフカは思った。