先の帝国軍遠征から数か月後。
セリスはある戦に参加し、その戦は数時間前に終了したところだった。
セリスは他の兵たちと一緒に、痛んだ剣の手入れをしていた。
「セリス、今日はきつかったな。あれ程魔法が回避されることなど、今まであっただろうか。」
横で、同期の兵がつぶやいた。
皆、疲弊した顔をしている。
「いえ…、なかったです。」
セリスは、少し思案を巡らせて答えた。
今回の戦の相手は格下ともいえる国だったが、帝国軍が用いる魔法の効果が低く、苦戦を強いられた。
格下であったので、ケフカが率いる強力な魔法戦士の隊は参加していなかったが、
それでも想定外の苦戦であった。
(敵の脅威が増している?)
セリスは感じた。
しかし、そのことに不気味さを覚えながらも、沈黙するしかないように思われた。
戦況は次第に激しくなっていったが、帝国による制圧も近いだろう。
少なくとも、セリスはそう思っていた。
しかし、今回の戦での苦戦を受け、その状況は崩れつつあると思い知らされている。
以前は帝国の力は他国と比べても圧倒的だったが、最近はそうではない。
魔法戦士が導入された当初に比べ、魔法への対策が取られだしているに違いなかった。
気が付けば、苦戦の知らせも珍しく無くなった。
セリス自身も戦いに身を投じることで、それを肌で感じることが多くなっていたし、
その状況を打破しなければならないと、様々な人が口にした。
(私たち一般兵は、強力な兵器の開発を待つしかないのか。)
セリスは自問する。
(違う。)
セリスは思っていた。
(魔法という力は何のために与えられたのか。私たち一人一人が、より、強くなるためではなかったか。
私はそれを生かすべきである。いつまでも、一兵士でいてはいけない。)
セリスの中で、そんな気持ちが芽生えていた。