二週間前。
ケフカはある娘といくらかの兵を従え、焦土と化した町を歩いていた。
娘の名はティナという。
齢は十を少し過ぎた頃で、見た目はただの子供であったが、「普通」ではなかった。
娘の父親は幻獣、母親は人間。
幻獣と人間のハーフだった。
何故、その娘とここにいるのか。
この町は帝国軍との戦の前線に位置する。
戦況はまだ結しておらず、小競り合いが続く。
娘が使う魔法。
その力がどれ程、敵に通用するのか。それを試すためだった。
まずは帝国の小隊と合流すべく、状況を把握している小隊長を目的に歩く。
歩を進めるに連れて、徐々に周囲は騒がしくなる。
傷を負った者とそれを気遣う者。
帝国兵たちの会話が耳に入る。
重症を負っている一般兵がいる。
「おい、大丈夫か?」「ポーションを使え。」
「あともう少しだ。頑張れ。」
彼らの会話を、娘はちらちらと見ていた。
「あ、ケフカ様。」
小隊長がこちらに気づき、声をかけてきた。
「酷い有様だな。」ケフカは辺りを見回した。
煙が立ちこめ、家々は崩れている。
帝国の兵はもちろん、巻き添えになった一般人がちらほら倒れている。
「ゲリラです。あいつら大人しくしていれば良いものを。」
小隊長は舌打ちをした。
「怪我人が多数出ているようだな。ここは我々の隊に任せ、救護にまわって良い。」
ケフカは言った。
小隊はかなりの深手を負っている。
それならば自分が連れてきた隊と役割を入れ替えた方が良いと考えた。
「いや、そういうわけには。」
小隊長は少し拒んだ。
しかし、
「戦況は変わった。臨機応変に動いた方が良い。」
ケフカがそう言うと、小隊長はあとは頼みましたと声を発し、その場を去った。