「ブリザド!」
セリスは魔獣に向けて、渾身の力を込めて魔法を使った。
それが今のセリスに出来る最大限の攻撃だった。
魔法を受けた魔獣は一瞬仰け反った。
が、次の瞬間には頭をぶるりとさせ、復帰してしまう。
(私の魔法では1匹すら倒せない。)
絶望感が胸を過ぎった。
仲間とはぐれ、状況の判断を誤った代償は大きかった。
MPはもうすぐ底を尽く。
打撃に強い生物だ。剣では歯が立たないだろう。
エーテルはとうに無く、残るのはポーションが1つきり。
敵はまだ5体もいる。
絶対絶命。
八方塞がりな状況に、セリスは焦ることしか出来なかった。
そこへ、
「ブリザラ!」
背後から、魔法を唱える声がして、同時に魔獣を大氷塊が覆った。
聞いたことのある声だと感じた。
どぅん、とあれほどセリスが苦戦した魔獣が、いとも簡単に倒れた。
セリスは直ぐに後ろを振り返った。
魔法を放った人物が立っている。
ケフカだ。
ケフカは倒した魔獣をすり抜けて、こちらに走り寄り、二人は背中合わせになった。
「ここを乗り切るぞ。」
ケフカは短く言った。
「あ、あの…。」
セリスは今の状況を理解しきれず、ケフカにおずおずと話しかけた。
しかし、
「敵から眼を離して良いと誰から教わった?」
ケフカは冷たく言い放たれてしまう。
その言葉にセリスははっと我に返り、正面の魔獣を見据えた。
「お前はアイツをやりなさい。」
ケフカはセリスの正面の1体を指差し、命じた。
「はい。」セリスは身が引き締まる思いで答えた。
「回復はしない。一気に蹴りをつける。いいな。」
「分かりました。」
「心してかかれ。」
その一言でセリスは目の前の敵に集中した。