しばらくして、博士が研究所から出てきてこちらに来たので、我々は立ち上がった。
「待たせたな。」博士は言った。
再び所内に通され、私たちは実験室に案内される。
「今日の作業は終わりだ。ご苦労だった。で、手伝いとは別に、また協力を仰ぎたいのだが。」博士は言った。
「?何ですか。」
「これを試してもらいたいのだ。」そう言って、博士は緑がかった液体の入った注射器を取り出した。
「これは?」
「これを注射すると魔導の力を受け入れる素質があるか、調べられる。」
博士は言った。
「この液体を注射した箇所に反応が出るのだ。その結果である程度、分かる。」博士は言った。
「これで良い反応が出なければ、その者は魔法が使えないということですか?」
「ああ。そうだ。残念ながら魔法は誰にでも使える力ではない。
同じ種族でも個体毎に定着率が違うのだ。人間も同じく向き不向きがある。」
「我々も試したが私は不適だった。しかし、確立はそれほど低くはない。所員にも何人か適正のある者がいた。どうだ、君たちも試してみないか?」
博士は言った。
各々が検査を受けることになった。
注射針を腕に刺し反応が現れるまで数分。結果を博士が見て回った。
博士は私の所に来ると声を上げた。
「おお君はかなり適正があるようだな。これほどはっきりとした反応が出た者はいなかった。」
「本当ですか?」まさか自分がと思う。
「案外、身近で魔導士が生まれるかもしれない。」
博士は言った。
結局私を含めた3人に適正があると認められた。
魔法が使えるようになりたいと言っていたドワイトは適正がないと分かり、歯噛みをして悔しがった。
注射をされた箇所が燃えるように熱い。
その熱さが魔導の力を身に宿す事が現実に近い物であるということを、認識させる。
そして適正があると言われた3人が、再び博士に呼ばれたのは約3ヵ月後のことだった。