数時間経って作業がひと段落し、博士は飲み物を振舞った。休憩中でも話題は魔導研究で持ちきりだった。
「まさかあの魔導研究所に入れるとは思わなかった。」
「そうだな。極秘施設なのに中を見せてもらえるなんて。」
そんな中、博士は皆に手招きをした。
「実験室を見せてやろう。来たまえ。」
博士の申し出に、私たちは一瞬戸惑った。
帝国の第一級の機密である。畏れ多かった。
「いえそれは…。」
「構わない。既に完成しているからもう周知の物になる。」誰かが遠慮を口にするが、博士は言った。
博士の類に無い申し出に、断る理由もなく、我々は博士について行った。
実験室の扉を博士が開き、ギイと重い音が立つ。
目の前に広がる光景は、異質だった。
今までに見たことの無い、不可思議な形をした機械設備と、無数の動物。
「うわ…」皆が感嘆の声を漏らした。
「私の実験にはこれくらいの設備と実験体が必要だ。」博士は言った。
入り口にほど近いところに、やや大きい鳥が一羽籠に入れられていた。
「博士、これも実験体ですか?」
「よく聞いてくれた。私はフェニックスと呼んでいるが、これは良いぞ。」
そう言って博士は机の陰から木の棒を取り出した。
「下がりなさい。危ないぞ。」博士はニヤリと笑い、そして檻を叩いた。
我々は驚いて、後ずさる。
鳥は当然暴れだし、ぎゃあぎゃあと激しく鳴いた。
そして大きく口を開いたかと思うと、ゴウと炎を吐いた。
「!!」
突然のことに、皆、驚愕し声が出なかった。
髪の毛が焼けた者もいるのか、やや焦げた匂いがした。
「博士!これは…」
「驚いたか?モンスターではないぞ。そこらのただの鳥を捕まえて、魔法を授けたのだ。」
「すごい…」我々は驚嘆していた。
「ふふ、どうだ。これが魔導の力だ。実験は成功を積み重ねている。この上も無く理想的にな。」
そう言って博士は笑った。
-------------