魔導研究所仮眠室。
普段は人のいないこの部屋で、ケフカは横たえていた身体を起こして笑っていた。
「私で、最後ですね?」ケフカがそう言った横でシドは立ち尽くしていた。
その表情は青ざめ、唇は戦慄いている。
ケフカのいう「最後」。
シドだけがその意味を思い知っていた。
「…今更な話、ですがね。」ケフカはまたくっくと笑った。
シドは過去の行いを責められていると感じた。
シドは握り締めた手をわなわなと震わせ、口を開く。
「仕方が無かったのだ。実験は、進めなければならなかった。」
シドは切れ切れに声を発し始める。
ケフカは緩慢な様子でその方を見やっている。
シドは続けた。
「実験の期日は定められていた。我々はそれを守らなければならなかった。そうでなければ支援を打ち切ると陛下に。」
シドは呻く様に告白し、苦悶の表情を浮かべた。
あの時、何故、陛下の申し出を断る事が出来なかったのか。
後悔の念が押し寄せていた。
「全てを決めていたのは皇帝だった。」
ケフカはぼそりと呟いた。
シドは続けた。
「君達の前に行なった10名への実験では、魔導を宿した者もいた。成功する可能性も高いはずだった、
だが、予後が良くない者もいて、その原因は突き止めなければならなかった。…しかし、陛下との約束の期日が近づき、私達は原因を解明出来ぬまま、君らに…。」
そこまで吐露するとシドは声を詰まらせた。
「……そして、失敗を。」
ケフカは呟いた。
「ああ。」と、シドはうわ言のように返答する。
「…研究所にいる間に調べました。その10人の実験の経過と結果をね。」
ケフカは言った。
「知らなければ良かったと思った。私達は信じていた。事実を知るまでは。」
「…。」
「シド博士が無謀な実験を行うはずが無いと思っていた。」
ケフカは言った。
「…申し訳、無かった。」
シドは頭を垂れ、それは数十秒間戻ることは無かった。