今の時間帯にケフカが自室にいるとは思えなかったが、セリスは他を探す前に建物の奥にあるケフカの部屋に寄ろうと思った。
扉の前に立って、すぅと深呼吸をする。
扉を叩こうとして、鍵が真新しくなっているのに気が付いた。
(壊れたのかな。)
鍵は以前シドが扉を破ろうとして壊したものだったが、セリスは何も知らなかったのでたいして気には留めなかった。
トントンと扉を叩く。
反応は無かった。
(やっぱりいない。)
セリスは少し中の様子を探るがケフカがいる気配は無かった。
不在であることは予想通りだったが、セリスは少し落胆した。
セリスは部屋の前を去り、建物の出入口へと歩を向けた。
確信はあまりなかったが、何となくこの建物にはいない様な気がした。
途中、同僚の将軍に会い、セリスはケフカの居場所を聞いた。
ケフカの名を出すと、某将軍はあからさまに顔をしかめた。
某将軍は大任を受けたセリスに、まずはおめでとうと声をかけてから、話を始めた。
前々からおかしいとは思っていたが、陛下の直属の魔導士になってから拍車がかかったようだ。
あの男は軍の任務を軽んじて自らの立身出世の事ばかりを考えているようだ。
シド博士と陛下に付きっきりで、我々の方は見向きもしない。
事実、あの男は魔導士になってから一度も元の部下達に顔を見せていない。
考えられぬ。
奴は陛下の評価を受ける事に執心しているのだ。
このままではいずれ軍に悪い影響を与えることになるのではないか。
某将軍は余程腹に据えかねていたのか、ひとしきり愚痴を吐くと、少し申し訳なさそうな顔をした。
これから任を負うセリスを不安にさせたのではないかと今更になって気が付いたのだ。
「役に立てなくてすまないな、セリス将軍。大変だと思うが頑張ってくれ。」
そう言うと、某将軍は去った。
セリスはありがとうとざいますと応えて見送る。
どういう訳かケフカの評判が良くないようだとセリスは感じた。
以前からケフカは陛下を初めとする政府の高官から特務を受けることがあり、時に隊を離れる事があった。
しかし、それだからと言ってケフカが軍の任務を軽んじているとはセリスは思えなかった。
特務を終えれば、部隊の者に目をかけ、離れていた事を感じさせないようにしていたし、部下からの求心力も強かった様に思う。
(確かに最近は不在である事が多かったけど。でもどうして。)
セリスはケフカに非があるとは露程も思っていなかった。