皇帝の間。
ガストラ皇帝とシドが対峙していた。
「珍しいなシドよ。どうした?まだ援助が必要か?」
ガストラ皇帝は、そう笑ってシドを揶揄した。
シドは近頃、自分からは滅多にここを訪れないが、魔導研究所の運営が軌道に乗る前は、
良く援助を申し出に来ていた。
ガストラはそのことを思い出していた。
「そのようなことは…。」
シドは幾分冷や汗をかいた。
金が用の時以外は、来ないと責められているように思えたからだ。
「陛下。ケフカ・パラッツォの事で伺いたい事がございます。」
シドは本題を切り出した。
「ケフカの件?」
ガストラは訝しげにシドの問いを反芻した。
シドは、ガストラが幾分探るような目つきをし椅子に掛けなおした事には気付かなかった。
「さて、申してみよ。」
ガストラは言った。
シドは、ケフカの魔導研究所侵入の顛末を話し出した。
「彼が研究室内で発見された時は、心神耗弱の状態でしたが、時間をおいて再び問いただしても、
ケフカ個人でした事だと言うばかりだったのです。」
「しかし、陛下の下した任務であれば、私の存じていないところだと思い、
もしかしたらと思い伺った次第です。」
「うむ。」
シドが話し終えると、ガストラは頷いた。
「話は分かった。しかし、そのようなことを命じてはおらぬ。」
ガストラはそう言いながら、また椅子に掛けなおした。
「うむ、そうですか。」
シドは言った。
「奇異だな。あそこに忍び込むとは、おかしなことをするものだ。」
ガストラは言う。
「はい。」
「しかし忍び込むとは、奴にしては解せぬ理由よ。お主の申す事は本当なのか?」
「は?」
ガストラの問いにシドは首を傾げた。
「余の記憶では奴が逆らった事は無い。主を疑うわけではないが。」
ガストラは少しバツが悪そうに言った。
「…。全て申し上げた通りでございます。」
「気を悪くしないでくれ。シドよ。余は皆が思っているより、あの男を買っているのだ。」
ガストラ皇帝は言った。
「シド。」
「はい。」
「実は、だ。」
ガストラは様子を変えて話し出した。
「実は、余も、奴の最近の挙動に違和感があってな、探らせていたのだよ。」
「えっ。」
ガストラの告白に、シドは驚いた。
「奴の部屋から奇声や大きな物音がすることがあると報告があったのだ。
それで、その近辺の挙動を探らせていた。」
「…。」
「その結果、奴が数日前に何日か行方を眩ませていたことが分かった。」
「それは…。」
「お主の話と、合致している。」
「…。」
「行方を眩ませてからは殆ど訓練や会議にも参加していない。
その間何をしているかと言えば、部屋に籠っているということだ。」
「お主も知っている通り、これまでそのようなおかしな挙動は無かった男だ。」
「ええ。」
「シドよ。ひょっとして、始まってしまったのではないかと思うのだが。」
ガストラは言った。
シドは皇帝の言わんとしている事を察して、ケフカの様子を思い出した。
思い当たる節がある。
「…。」
「奴と直接話がしたい。呼んで参って欲しい。」
皇帝は言った。