ケフカは隊の者との会話を終えて、部屋へと戻った。
数日ぶりに軍務に復帰したことで、無断で不在だったことの理由を隊の人間に何度か問われた。
しかし、理由は言えないとこちらが答えたことにより、隊の者は突っ込んで聞こうとはしなかった。
大方、連中は、皇帝をはじめ高位の幹部から、秘密裏に任務が下ったのだろうと想像したのだろう。
軍人でありながら魔法に関して誰よりも深く通じていることが、
他の者と比較してケフカが大きく秀でている面だった。
その知識や能力を買われて、特別な任務を下されることがよくあった。
もっとも、彼らは直接聞いて答えが得られなければ、近しい者に対しても聞いて回る。
おそらく、セリスにも聞いているだろう。
そうケフカは想像する。
(セリス…。)
ケフカはさっき話しかけてきたセリスを思い出した。
その時、
「………………。」
「…ッ。」
まただ。
またあの声が頭に響く。
闇の底から響くような、咆哮に近い幻聴。
鳴り響く、呼ぶような、責めるような、恨むような声。
ケフカは耐え難く、耳を塞いだ。
塞ぎたいのは耳なのか、頭なのか。
分からない。
「煩い。」
ケフカは呟いたが、声は治まる事はない。
断末魔のような嫌な声。
「やめろ。」
ケフカの声が次第に大きくなっていく。
「黙れ…。黙れ、黙れ、黙れ、黙れ!」
ケフカは大声を上げた。
ドアの外側の廊下を歩いていた人物は、ビクりとケフカの部屋の方を見た。
「ハァ、ハァ…。」
大声を上げた事で、幻聴は消えた。
あの声はケフカにしか聞こえない。
幻聴は魔導注入の副作用として認識されている。
それがやはり、今になって起こり始めているのだろうか。
考えたくなかった。
少し、落ち着いて、セリスの顔を思い出す。
さっきのセリスは、やや、ぎこちない顔をしていた。
ケフカは若干表情を曇らせる。
仕方が、無い。
今後、セリスに何かを教えたり、戦場で手助けすることもなくなるだろう。
今までは距離が近過ぎた。
今回はきっかけに過ぎず、遅かれ早かれ、離れることになっていた。
近過ぎた故に、いつの間にか無くてはならないものと認識し、依存していたのかもしれない。
ならば、離れた方が良い。
ケフカは思った。
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