セリスは周りに誰もいなくなった時を見計らい、ケフカに話しかけた。
「ケフカ。」
セリスに気付いたケフカはちらりと見る。
「昨日のことなんだけど。どうしても、納得が出来ないの。」
セリスは少し緊張しながら言った。
「ケフ…」
セリスが口に出すと、ケフカは視線をセリスの背後に向ける。
セリスはつられて、後ろを向く。背後には他の隊の将軍が歩いてくるのが見えた。
ケフカはセリスの姿がまるで目に入っていないかのように、後ろの者に話しかけ、横を過ぎて行き、
あっけなく、セリスの前からいなくなった。
セリスはいなくなったケフカを認識し、呆然とした。
(本当、だったんだ。)
うまく働かない頭で、セリスはぼんやりと思う。
(あんな一言で、終わってしまった?)
昨日の夜の一方的な言葉。
今のセリスには振り返ってケフカに向かって問いただす勇気が無い。
どこか、また以前のように接することが出来るのではないかと期待していたのかもしれない。
その期待が砕かれた。
セリスは背後にケフカの声を聴きながら、重い足を一歩ずつ踏み出し、その場から遠ざかっていく。
少しずつ、ケフカの声が遠ざかる。
何か理由があるならば、言ってくれると思っていた。
そんな関係を築けていたのではないかと思っていた。
でも、それは私が思い込んでいただけかもしれない。
セリスの脳裏を掠める。
ケフカにとって私は単に後輩の一人に過ぎなかった。
なまじ距離が近かっただけに、実際は疎ましく感じていたのかもしれない。
たまたま同じ力を持っていて、その縁で軍人として一人前に育ててもらった。
ケフカにとって、それは軍人として至極当然な義務的な行為に過ぎなかった。
今まで重ねてきた会話も、関係も、ケフカにとってはそうだったのかもしれない。
(私だけが信頼関係を築いていると過信していたのかもしれない。)
セリスはうな垂れて、室内へ戻った。