少しの沈黙が流れる。
「何もないさ。」ケフカは答えた。
そしてセリスに背を向けようとする。
「え、待って。」そっけない様子に、セリスは慌てた。
背を向けたケフカは「もう、良いか?」と言い、歩を進める。
「何もなかったはずがないわ。ケフカ、いつもと全然違うわ。」
セリスは言う。
ケフカは足を止める。
「何があったの?」セリスはもう一度言った。
「…俺に近づくな。」ケフカは低い声色で言った。
セリスにはケフカの言っている事が理解できない。
「?どういう意味。」セリスは聞いた。
「言葉のとおりだ。」
背を向けたまま、セリスに対して、ケフカは言った。
「急にそんな事を言われて、はい、なんて言えないわ。近づいたらいけないって、どうして。」
セリスは幾分大きな声を出した。
しかし、ケフカはセリスの問いには応えずに、立ち去ろうとした。
一歩、二歩、とケフカの背中が離れていく。
「待って。」
セリスはとっさに、ケフカの手を掴んだ。
形のはっきりとしない感情に突き動かされた。
手を掴まれてケフカは足を止めた。
だが、セリスは言葉を繋げる事が出来ず、静まる。
ほんの少し体温のやり取り。
ケフカは握られた手をそのままに、ゆっくりと向き直った。
そしてセリスの手を取って、静かに自分の手から外す。
向き直ったケフカの目をセリスは見ていたが、ケフカは無表情を装ってセリスの顔を見ていない。
「ケフカ。」セリスは、ケフカの名をただ呼んだ。
ケフカは何も応えずに、また背を向けてしまう。
ケフカは苦悩の表情を浮かべていたが、セリスからは伺いしれない。
「じゃあ。」
ケフカはそれだけ言って、立ち去ってしまった。
セリスは呆然と後姿を見送るしかなかった。
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