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ケフカについて書きます。二次創作あり(文章) 小話「数年前121~123」更新しました。(2015年8月9日)
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夜。私は眠る心境になかった。
殺して欲しかった。
それを一番望んでいたのに。
何故、生きる事を許されてしまったのか。
自分の中にある狂気を抑えられないことも、分かっていた。
分かっていたのに、それに身を委ね、
破壊する事、他の命を奪う事で自分の存在意義を確認していた。
いや、確認する振りをしていた。
そんなことをしても意味がない。
分かっていた。
自ら命を絶てば、全ては止められた。
でも、それをしなかったのは自分。
自分が可愛いあまり、他人を犠牲にしてきた。
あの時死んだ方が、どんなに楽だったろうか。
過去を苛んでも浮かんでいる月は冷たく明るかった。

「眠れないの?」
寝返りを打つ音が気になったのか、セリスが話しかけてきた。
私は、眠くは無い、と答えた。
「ここで療養している人の世話をしながら、生計を立てているの。
ここではとても穏やかな時が流れているわ。」
セリスは私のベッドに近づいてなんとは無しに言う。
月明かりに照らされて、施設は黒い大きな影を作っている。
「外も、きっと昔より平和さ。」
私は外を眺めて言った。
ベクタのサーチライトも、常に鳴り響いていた工場の音も今は無い。
しんとした闇。
「まるで、嘘みたい。」セリスは言った。
「嘘じゃない。現にこうして生きているんだ。」
私は言った。
生き長らえたこの身が疎ましくて、投げやりだった。
セリスは少し表情を曇らせ、私の手を握った。
そして、俯く。
「あなたは以前のあなたを、憎んでるかもしれない。
でも、私はあなたが戻ってくれて、嬉しい。とても嬉しいの。」
そう言って顔を上げたセリスは、泣いていて、私はとても驚いた。
「もう、どこにも行かないで。」
セリスは堰を切ったかのように、泣き止まない。
私は言った。
「いつまでも、そうやって甘ったれて。
そんなんじゃ、先が思いやられる。」
今度泣いたら、俺は怒るから。
そう呟いて、私は気がつけばセリスの頭を撫でていた。

ボーン、ボーン、と古い時計が時間を告げる。
「あ、12時。今日は、誕生日よ。」
そう言ってセリスは微笑んだ。
もう、何年もその言葉に用は無く、忘れていた。
「おめでとう。」
これを。と言ってセリスは薄い板のような物を渡した。
月明かりでは見えなくて、ランプを付ける。
見覚えのある赤い花を押し花にし、それを栞にした簡素な物。
「しばらくは暇だろうと思って。本を読む時に使えれば良いかなと。」
本当は、あなたが起きてから渡そうと思ったんだけど。
私は、少し驚いていて言葉が出ない。
「花は頂き物なの。あなたが昔好きだった花よ。」
覚えてる?
名前も知らない花だったが、私は、思い出した。
生家の周囲に、毎年咲く花だ。
何十年も前の事の様に、酷く懐かしい。
「ありがとう。」
セリスは目を丸くした。
「その言葉を聞けるなんて。」
私もその反応に驚く。
「俺もこんな時間を過ごせることになるとは思わなかった。」
ええ。
「俺たちは、もう二度と過ちを繰り返してはいけない。」
私は言った。
「そうね。もう、絶望はしたくないもの。」
そう呟いたセリスの横顔を、私は愛おしく思った。
 

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