30秒後。
ソファに小さく座っているケフカと仁王立ちしているセリス。
「いったい、どういうつもりですか?」
セリスは問いただした。
ケフカには今のセリスがヒルギガースくらいの大きさに見えている。
さすが女性とはいえ将軍を務めているだけのことはある、威圧感が違う。
と、ケフカは思う。
ケフカは、かくかく云々と…説明(もとい言い訳)を始めた。
1.今、6時までに皇帝に提出しなければならない書類を作成していること。
2.作成するために集中しなければならなかったが、髪の毛がとにかく邪魔ではかどらなかったこと。
3.そもそも髪を切る時間が無かったこと。(理容院の件は割愛した)
4.おまけに髪を結うリボンも無かったこと。
5.本当に仕方なく、今日偶然届いたリボンを借用してしまったこと。
等、切々と訴える。
一通り説明をしてケフカは「すまない、買って返す…。」
と言ってリボンをスルリと外す。
緊急だったとはいえ、冷静になって勝手に借用した事を反省し、凹んでいるように見える。
セリスは呆れたようにため息をつく。
とにかく、色んなことがたくさん重なって、
よりにもよって今日ケフカの所にリボンが間違って届けられてしまったようだ。
そういえば、ケフカが遠征に行く直前に皇帝に無茶振りされていたことを思い出した。
かなり忙しかったことは間違いない。
「そこまで聞いたら怒る気も失せちゃった。」
一通り事情を聴いたセリスは、ヒルギガースではなく、いつものセリスに戻っていた。
「リボンはわざわざ買って返さなくても大丈夫よ。見られたのは恥ずかしいけど。」
返して。
ケフカの手から見えているうさぎのボンボン。
セリスはそれを見られたのが今でも恥ずかしい。
「本当に助かったよ。」
ケフカはそう言って、セリスにリボンを手渡した。
リボンが無ければ作業ははかどらず、間に合わなかっただろう。
「6時までに出さないといけないなら、そろそろ行かないといけないんじゃ…?」
セリスは言った。
気が付けば、6時まであと10分しかない。
ケフカは「あ”」というような声を上げた。
「行ってくる。そうだ、聞きたいことがあったと言っていたな。戻ってからでも良いか?」
ケフカは言った。
「良いわ。」セリスは言う。
「分かった。待っててくれ。」
ケフカは部屋から出て行った。
ケフカが出たのを見送って、セリスは一度自室に向かう。
スケジュール的にケフカは明後日の月曜日までは忙しいだろう。
リボンが無ければ不便だろうから、持っているリボンを幾つかあげようと思う。
人がいなくなったケフカの部屋のカレンダー。
カレンダー上は11月19日ケフカの誕生日を示していたが、
それに気付いたのは、夜2人で食事をしている時だった。
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