ケフカは、セリスが持っている箱を目ざとく見つけ、それに手を伸ばした。
「これは?」
骨ばった指が箱を取り、簡単にセリスの手をすり抜けていく。
ケフカはセリスに承諾を取らずに、無遠慮にそれを開けた。
中身を見て、ケフカの眉がピクリと動く。
「アン嬢からいただいた物…。」
セリスはやっとのことで声を発した。
「…お前に?」
耳元で、ケフカは呟いた。
セリスは無言で頷く。
「ふぅん。」
ケフカは首を傾げてため息をつく。
そして、ペンダントの入った箱を床に投げつけた。
ペンダントは箱から飛び出して、無残に地面に広がってしまった。
セリスはそれにも声も出すことが出来ないでいる。
「こんなくだらない物、お前には相応しくないよ。」
ケフカは動作に似つかわしくない柔らかな口調で言った。
「今日は、お前の生まれた日だろう?」ケフカは言った。
ケフカの言葉にセリスは耳を疑った。
ケフカは続けた。
「お祝いにこれをプレゼントするよ。」
ケフカは小さな箱を取り出して、開けた。
セリスが見たことの無い色をした、怪しく輝く宝石。
ケフカはその石を取り出してセリスに見せる。
宝石はペンダントの飾りで、鎖がジャラリと垂れ下がった。
「中をご覧?」
ケフカは囁いた。
セリスは操られているかのように、素直に石の中を見つめる。
石の中には小さな羽の生えた人型の影が見えた。
セリスにはそれが何なのか分からない。
「ピクシー。お前も知っている幻獣さ。」
ケフカは説明した。
「どうだい。僕ら人間にとっては永遠とも思える時間を、石に閉じ込められているんだ。」
「数百年もの間…。美しいだろう?」
ケフカは言った。
揺らめくような石の色と不思議な妖精の影に、セリスも美しいと思った。
が、セリスにはその石が、少し怖いように思われた。
「永遠に……、永遠の美しささ。」
ケフカはそう言うと、ペンダントをセリスの首元に撒きつける。
セリスはケフカに後ろ髪を上げられ、首筋に彼の手が触れても、されるがままであった。
ケフカは器用にセリスにペンダントを付けあげる。
「おめでとう、かわいいセリス。」
ケフカはそう囁いて、去って行く。
セリスはケフカの後姿を見つめながら、廊下にへたり込んだ。
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