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ケフカについて書きます。二次創作あり(文章) 小話「数年前121~123」更新しました。(2015年8月9日)
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戦いは今、終わりの時を迎えた。

皆の緊張が少しずつ解かれていく。
静かに、セリスの剣は手から滑り落ち、ガチャリと音を立てた。

瓦礫の塔は主の力を失い、崩れようとしている。
大・小様々な大きさのガラクタたちが、降る。
足元がぐらぐらと激しく揺れた。

彼らの目の前には伏した男がいた。
かつて魔法の神だった男だ。
強大だったその力は全て失われ、動くことも出来ず、
その姿はもはや人と変わらない。
授けられた大きな翼は消え、その抜け落ちた白い羽根はゆっくりと、
塵と化していった。
息はあったが、瀕死だった。
そのまま塔に残っても、負った傷により、やがて死に至るだろう。
または塔の崩壊に巻き込まれる運命にある。
「皆、早くここを出よう!」
フィガロの若き国王エドガーは仲間に声を掛けた。
皆、脱出するために、その場を去ろうとする。
それとは反対の方向にセリスは歩いていた。
ふらふらと伏した男、ケフカの方へ。
「何をしているんだ。まさか、助けたいとでも言うつもりか?」
普段は紳士たるこの王もさすがに気が高ぶっていて、口調が厳しい物になった。
結末が近づくにつれ、セリスの様子がおかしくなっていたのに、気づいていた。
「私はここに残るわ。」
セリスは振り向き、強い口調で言った。
何を言っているんだ。
エドガーは大きな声を出した。
「君がここで死んでしまっても、何にもならないんだよ。」
「下手な同情は止めるんだ。」
「同情じゃないわ。この人の事を知っているのは、私だけだから。」
だから、私だけ行く訳にはいかないの。
セリスは言った。
「残念だが、君の願いでも叶えられないね。」さあ、早く。
「お願い一緒にいさせて。」
「仲間を置いて行ける訳がないじゃないか。」
エドガーは急かしたが、セリスは動こうとしなかった。
「兄貴。」側で見ていたマッシュは言った。
「親父を殺したのも、こいつかもしれないんだよな。
本当のことは分からないけど、俺はずっと憎んでいた。
けど実験の犠牲者だと知ったら、分からなくなってしまった。
俺たちが裁いて良いんだろうか。」

 

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(この男も実験の犠牲者で、同情すべき点はあるかもしれない。)
それは、セリスやベクタの兵の話を聞いた時から気づいていたことだ。
私たちは、知っていてなお、倒すという手段を取った。
そうしなければ世界に未来は無く、それが正義だと信じる他無かったのだから。

セリスはケフカを見とめながら、言った。
「私がこの人と同じ過ちを犯していたかもしれない。私も同罪なの。」
カイエンが見かねた様子で口を開いた。
「そなたは自らの罪を認め、逃げずにこの戦いに加わった。
もはや罪の無いそなたを置いていく事は出来ぬ。」
セリスに動く気配は無かったが、塔の崩壊は刻一刻と近づく。
決断しなければならなかった。
「分かった。セリス。」
すぅーと息を吸い込んでから、エドガーは言った。
「ケフカも連れて帰ろう。」
「俺たちの大切な物は、もう壊せはしない。」
マッシュは言った。

 危機からようやく難を逃れたファルコン号。
力を使い果たしたティナは眠りにつき、皆が彼女を見守っていた。
セリスは一人、ケフカを看ていた。
「罪を憎んで、人を憎まずか。」
カイエンは呟いた。
「セリス、鬼だと言われてもいい。
この男が毒をドマに流さなければ、シュンも、ミナも死ぬことはなかったのだ。
この男がいなければ、皆幸せだった。そう思うと私は、やりきれない。
今、とどめを刺せと言われれば、迷い無くこの男を殺すことが出来る。
残された者は、きっとこの男を憎んでいる。
そなたが生かしたのは、そのような男だ。
失った者は二度と帰っては来ない。
そのような者もいるという事を忘れないで欲しい。」
カイエンの言葉を、皆じっと聞き、セリスは頷いた。

ケフカは慈悲深い者たちにより、命を救われた。
ここはフィガロの端にある、ある施設。
病で余命が幾ばくない者が隔離されている場所。
ここでは、皆死を静かに待っていた。
セリスとケフカは、その施設内でも更に奥にある小さな建物にいた。
そこはもう何年も使われていなかった所だ。
フィガロ国王は監視する事を条件に、私財で治療を施し、
そのおかげで、ケフカは一命を取り留めた。
長い間、昏睡状態にあった。
男がようやく目覚めたのは、暖炉に火が入り始めた頃だった。

 「ここは?」
私は久しぶりにその声を聞いた。
彼は薄く目を開けて、私に問いかける。
「フィガロよ。」
私は手を握り微笑んだ。
彼は何かを言いかけて、また疲れたように目を閉じた。
私は手を握ったままうな垂れた。

翌日、とても晴れていて、ケフカは再び覚醒した。
「目が覚めたの?」私は言った。
「どうして、」
「どうして、俺は死んでいないんだ。」戸惑った様子で言う。
「覚えているの?」私は聞いた。
「ああ。何もかも。」ケフカは言い、私はそう、と答えた。
「皆が、あなたを許すと。」
私が伝えると、ケフカは少し顔に怒りを滲ませた。
「下らないことを。」
そう言って、窓の方に顔を向けてしまう。
ケフカは滔々と話し出した。
俺は何千幾万の命を奪ってきた。
魔導の力を持つ娘にあやつりの輪を付け、たくさんの人を殺めさせた。
フィガロに火を放ち、ドマには毒を流した。
三闘神を復活させた。
皇帝を殺した。
塔から無差別に殺した。
皆俺が犯した罪だ。ケフカは抑揚無く言った。
この人は、元に戻っている。
「でもそれは、あなたがしたくてしたことではないでしょう。」
私はいたたまれなくなって言った。
「お前は、俺の事が分かっていない」
「俺はその時確かに、やりたくてやっていたんだ。」
ケフカは言った。
「あまり、自分を責めないで。」
私は言った。
 

夜。私は眠る心境になかった。
殺して欲しかった。
それを一番望んでいたのに。
何故、生きる事を許されてしまったのか。
自分の中にある狂気を抑えられないことも、分かっていた。
分かっていたのに、それに身を委ね、
破壊する事、他の命を奪う事で自分の存在意義を確認していた。
いや、確認する振りをしていた。
そんなことをしても意味がない。
分かっていた。
自ら命を絶てば、全ては止められた。
でも、それをしなかったのは自分。
自分が可愛いあまり、他人を犠牲にしてきた。
あの時死んだ方が、どんなに楽だったろうか。
過去を苛んでも浮かんでいる月は冷たく明るかった。

「眠れないの?」
寝返りを打つ音が気になったのか、セリスが話しかけてきた。
私は、眠くは無い、と答えた。
「ここで療養している人の世話をしながら、生計を立てているの。
ここではとても穏やかな時が流れているわ。」
セリスは私のベッドに近づいてなんとは無しに言う。
月明かりに照らされて、施設は黒い大きな影を作っている。
「外も、きっと昔より平和さ。」
私は外を眺めて言った。
ベクタのサーチライトも、常に鳴り響いていた工場の音も今は無い。
しんとした闇。
「まるで、嘘みたい。」セリスは言った。
「嘘じゃない。現にこうして生きているんだ。」
私は言った。
生き長らえたこの身が疎ましくて、投げやりだった。
セリスは少し表情を曇らせ、私の手を握った。
そして、俯く。
「あなたは以前のあなたを、憎んでるかもしれない。
でも、私はあなたが戻ってくれて、嬉しい。とても嬉しいの。」
そう言って顔を上げたセリスは、泣いていて、私はとても驚いた。
「もう、どこにも行かないで。」
セリスは堰を切ったかのように、泣き止まない。
私は言った。
「いつまでも、そうやって甘ったれて。
そんなんじゃ、先が思いやられる。」
今度泣いたら、俺は怒るから。
そう呟いて、私は気がつけばセリスの頭を撫でていた。

ボーン、ボーン、と古い時計が時間を告げる。
「あ、12時。今日は、誕生日よ。」
そう言ってセリスは微笑んだ。
もう、何年もその言葉に用は無く、忘れていた。
「おめでとう。」
これを。と言ってセリスは薄い板のような物を渡した。
月明かりでは見えなくて、ランプを付ける。
見覚えのある赤い花を押し花にし、それを栞にした簡素な物。
「しばらくは暇だろうと思って。本を読む時に使えれば良いかなと。」
本当は、あなたが起きてから渡そうと思ったんだけど。
私は、少し驚いていて言葉が出ない。
「花は頂き物なの。あなたが昔好きだった花よ。」
覚えてる?
名前も知らない花だったが、私は、思い出した。
生家の周囲に、毎年咲く花だ。
何十年も前の事の様に、酷く懐かしい。
「ありがとう。」
セリスは目を丸くした。
「その言葉を聞けるなんて。」
私もその反応に驚く。
「俺もこんな時間を過ごせることになるとは思わなかった。」
ええ。
「俺たちは、もう二度と過ちを繰り返してはいけない。」
私は言った。
「そうね。もう、絶望はしたくないもの。」
そう呟いたセリスの横顔を、私は愛おしく思った。
 

 眠りについたはずなのに、いつの間にか私は、自らが作ったあの塔にいた。
遠くに、かつては国だった集落が、まばらに見える。
ここは世界で一番高い塔。
鳥も届かない。天が近い。けれど何も無い。
あれほど憎かった下界が、いくら壊しても、つまらない。
あれほど飛んでみたかった空を、いくら自由に飛んで回っても、退屈。
なんだ、神とは満ち足りた存在じゃなかったのか。
まだだ。まだ何か足りなかった。
私はある集落に狙いを定めて、魔法を放った。

目覚めると木製の天井。
見ていたのは、夢という名の過去の記憶だった。
魔法の感触が今なお、手に残っている。
私は何をしたのか。
私は右手を額に乗せて目を閉じる。
あの時、神は存在せず、その審判もないのだと気づいたのだ。
他者が許したとしても罪は罪。
今度こそ、私が自らを律しなければならないと思う。

部屋は静かでセリスは今、いない。
私はそのことにほっとした。
履物に足を入れふらつく足で、施設を目指す。
少しの道のり、裏口は無防備で、鍵もかかっていない。
広いその建物内は静かだった。
人気は無く、私の足音だけが反響する。
手すりに手を掛け、階段を一つずつ上った。
行き止まりに屋上へのドア。
それを開けると、肌寒い風が吹き込んでくる。
空が澄んでいた。

私は今、満ち足りている事に、戸惑った。

犠牲にした者たちに対し申し訳無かったと、ただただ侘び、
最後の時間をくれたセリスに感謝をする。

鳥の鳴き声、木々のざわめき、人の息づかい。

これが私が飛びたかった空かもしれないと思った。
 

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