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ケフカについて書きます。二次創作あり(文章) 小話「数年前121~123」更新しました。(2015年8月9日)
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私はある女性士官の負傷の手当をしていた。

いつの間にか時刻は十二時を回っている。
このところ帝国軍優勢で戦争終結も終わりが見えていた。
活躍を見せたこの第一師団には、帝国に戻れば称賛が待っているだろう。
夜は穏やかなもので、あの緊張感が嘘のような静けさだ。

女性士官は矢で肩を射抜かれたという。
今は麻酔が効いて眠っている。
ある程度の手当は終わった。直に快方に向かうだろう。
(これがあの……。)
私はその顔をまじまじと見た。
前線に立つ女性は多くない。
まだ十代半ば、魔導の力を持っている、シド博士の養女のような存在、最近頭角を現している人物。
この人は有名人だ。
「しかし、若いな…。」
私は思わず呟いた。
女性士官、セリス・シェール分隊長。
その人の寝顔は子供そのもので、階級章を見なければ、新兵だと言われても分からないくらいだと、私は思った。

不意にトッと足音がして、ガサガサと人が通る音がした。
誰だろうと思い、入り口を見た。
幕をくぐって現れた姿に、私はあっと思った。
「ケフカ師団長閣下。」
私は立ち上がり、敬礼をした。
ここに師団長が来ることは異例だ。
「様子はどうだ。」
「はい、皆快方に向かっています。」
「そうか、手を止めさせて悪かったな。座って良い。」
ケフカ将軍はそう言って、ゆっくりと歩き回り始めた。
(どうして、急に来たんだ。)
私は不意の訪問に驚いていた。
深夜でその場にいる衛生兵の数は多くない。
目撃者は少ないだろう。
はういえばセリス分隊長はケフカ将軍に師事していると聞いたことがあった。
(まさか、心配になって来たのか?)
私は驚きと共にぎょっとする。
通常は師団の長が特定の者を見舞いに来るということはまずない。
特定の者に会いに来たとなれば、団の士気に関わるからだ。
テントの中には他にも怪我人はいたが。
しかし。
そんなことを思っていると、
「この後も頼んだ。」
そう言ってケフカ将軍はあっさりと立ち去っていった。

その数分後に交代の時刻になり、私はテントを出た。
冷たい空気が支配していた。
細い三日月が佇んでいた。

寝所に行く通りがかりに、ぼんやりとした明かりが見えた。
誰か眠れずに外に出たのかと思い、良く見ると、ケフカ将軍が一人、煙草を燻らせていた。
私は驚いた。
(もう数時間もすれば、戦いが始まるというのに、まだこんな所に?)
ケフカ将軍が、月を眺めながら、ふぅーっと煙を吐いた。
寒空の下、煙が広がるのが良く見える。
この人が煙草を吸っているのを今まで見たことは無い。
吸わない人だと思っていたが。
そんなことを思う。
周りはしんとしている。

ケフカ将軍は少しだけせき込んで、煙草を捨て踏み消した。
そして髪をかき上げて、また月を見た。
(眠れないのだろうか。)
(本当にセリス分隊長が心配で?)
指揮官としての姿とは打って変わった様子が意外で、ささいな邪推が現実味を帯びていく。
器用な人物だと思っていたが、案外そうでもないのだろうか。

ケフカ将軍は月の如き人物かもしれない。
満月のように大きくもあれば、三日月のように細くもある。

私はあの時、三日月のあの人を見たのだ。

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