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ケフカについて書きます。二次創作あり(文章) 小話「数年前121~123」更新しました。(2015年8月9日)
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私はガストラ帝国軍の衛生兵をしていた。

長年患っていた右足がいよいよ使い物にならなくなったので、
この度退役を決意した。
いざ辞めるとなると、なんとも時間が有り余るようになった。
手慰めに手記でも残そうと思い、ペンを取った次第だ。

あれは何年前だったか。
初っ端から記憶が曖昧だ。
兵達の間では語り継がれている酷い戦があった。
ガストラ帝国と某国との決戦。
それは永遠に続くのかと思われた泥仕合だった。
帝国軍は勝利を収めたが、それが時間にすればわずか二年間の出来事だった事に、今更ながら驚かされている。

勝利を収めた帝国にとって、戦果は非常に大きいものだった。
だが、犠牲もあまりに多かった。

私は戦争の終結時には、レオ将軍が率いる第三師団に所属していた。
第三師団に加入したのは戦争終結後を含むわずかひと月程であったが、私はこの人の事が好きになった。
レオ将軍はまだ年若かったが、噂の通り清廉な人柄とそれに由来する人望、
戦に於いては正々堂々としそれでいて勝利を収める手腕を持っていた。
所属する兵達の多くもこの人を慕っていただろう。

しかし此度の戦に於いて、犠牲者が全軍中で一番多かったのがここ第三師団であった。
衛生兵である私が第一師団からレオ将軍の第三師団に転属になった理由は、負傷者・犠牲者が非常に多いためであった。
第三師団に犠牲者が多かった理由の一つは、彼の若さに起因する経験不足であったと言われている。
また、レオ将軍は上層部の命令に忠実に従う気質を持っていた。
あまりにも正直な戦をしたのだろう。
今思えばそれも彼らしいが、当時師団は、沢山の仲間を失った我々は喪失感に苛まれていた。
あまりにも長い時間が過ぎ、多くの兵たちの亡骸をその場に打ち捨てざるをえなかったのだ。
私は加入して数日で、その過酷な状況に打ちのめされた。
まともに弔えなかった事、無残な姿を野ざらしにしてしまった事、亡骸の一部を除いて彼らをその場で処理せざるを得なかった事。
あの場にはそれらに対する後悔の念が、渦巻いていた。

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戦争終結後、あの時は私も仲間達を埋葬する作業に加わっていた。
そしてその隣にはレオ将軍が、同じく作業をしていた。
この様な事は本来将軍のすることではないが、彼は自分が許せなかったに違いない。
掘っても掘っても終わらない穴堀りと追加されていく亡骸。
私は感覚が麻痺していて、かつての仲間がまるで物のように思えていた。
時々見知った顔が出てくるが、顔を見ても思い出す事が無くなっていた。

「辛く無いか?」
それまで横で黙々と作業をしていたレオ将軍が私に話しかけてきた。
「……。」
私は咄嗟に何と答えて良いか分からず、押し黙った。
そちらを見ると、レオ将軍は、込み上げる感情を抑えているかのようだった。
レオ将軍は手を止めて話を続けた。
「君はツェン出身だったな。家族は?無事なのか。」
話しかけられたので私も手を止める。
この師団に加わって間もないのに、この人は私の出身地を知っていたことに驚く。
「ええ、無事です。妻と娘が1人と母が国にいます。」
私は答えた。
「そうか…。国に帰ったら元気な顔を見せてやろう。」
レオ将軍は少し悲しげに微笑んだ。
(皆、元気だろうか。)
将軍に言われて、何か月ぶりに家族の顔を思い出した。
「…ええ。」
私はそう答えながら、ぼろぼろと泣いていた。

「彼らの家族に会わせる顔が無い。」
レオ将軍は墓穴を見ながら言った。

あの戦いが終わって幾年か過ぎたが、レオ将軍は、未だに死んだ兵たちの家族の元に詫びに行っている。
一日二日で終えられる物ではない数だ。
恐らく、何年かかっても、自団の犠牲者の家族に会いに行くのを辞めないだろう。

私はレオ将軍の真っ直ぐさに惚れたと言って良い。
魔導の力を持たないレオ将軍に対して軍上層部からの風当たりは強いが、私はあの時からこの人を助けたいと心に決めた。


 

レオ将軍は、周囲を暖かく照らす太陽の様な人物だった。

対照的な人物像を有していたのが、ケフカ将軍だったと言える。
愚直な性質を持ったレオ将軍と比較して、彼は才能溢れる人物だった。

私は、戦争が始まった当初からレオ将軍の第三師団に行くまではケフカ将軍率いる第一師団に所属していた。

ケフカ将軍は若い頃に魔導の力を得ている魔導戦士である。
その特別な力を宿し魔法を使う事それ自体が才能であるが、その有無に関わらず、戦術面においても長けていた。
あの時の戦争においても第一師団は活躍を見せ、帝国軍の勝利に大きく貢献した。
犠牲者の数も、第一師団は魔導戦士を含む大きな軍団であったが、最も少なかった。

転属する少し前に、私はケフカ将軍自らが演説している所に居合わせたが、私はこの人は優れた指揮官なのだろうと改めて感じた。
「我が第一師団は帝国軍における最大であり最高の戦力である。」
あの時、彼が非常に良く通る声で話し始めたのを覚えている。
「ガストラ帝国の勝利の行方は我々に掛かっている。
良いか、今こそ諸君の力を存分に示せ。」
私は衛生兵で前線に立つ事が無いにも関わらず、気持ちの高揚を抑える事が出来なかった。
「私は諸君を率いて戦える事を誇りに思う。勝利をこの手に掴み取ろう。」
将軍が話し終えると、兵たちはオーッと掛け声を上げた。
空気がビリビリと震え、兵たちの士気が最高潮に高まった事を現した。

その後、戦が始まりものの数時間で第一師団に優勢になり、敵を敗退せしめた。

ケフカ将軍は、口数は多くなく、他人を寄せ付けない雰囲気も持ち合わせていたが、彼を崇拝するものもいた。
成功を勝ち取る優れた戦略が皆を引き付けたのではないかと思う。
私は、実はこの人が魔導の力を有している事自体に幾分抵抗があったが、それは口に出せる事ではなかった。

私はある女性士官の負傷の手当をしていた。

いつの間にか時刻は十二時を回っている。
このところ帝国軍優勢で戦争終結も終わりが見えていた。
活躍を見せたこの第一師団には、帝国に戻れば称賛が待っているだろう。
夜は穏やかなもので、あの緊張感が嘘のような静けさだ。

女性士官は矢で肩を射抜かれたという。
今は麻酔が効いて眠っている。
ある程度の手当は終わった。直に快方に向かうだろう。
(これがあの……。)
私はその顔をまじまじと見た。
前線に立つ女性は多くない。
まだ十代半ば、魔導の力を持っている、シド博士の養女のような存在、最近頭角を現している人物。
この人は有名人だ。
「しかし、若いな…。」
私は思わず呟いた。
女性士官、セリス・シェール分隊長。
その人の寝顔は子供そのもので、階級章を見なければ、新兵だと言われても分からないくらいだと、私は思った。

不意にトッと足音がして、ガサガサと人が通る音がした。
誰だろうと思い、入り口を見た。
幕をくぐって現れた姿に、私はあっと思った。
「ケフカ師団長閣下。」
私は立ち上がり、敬礼をした。
ここに師団長が来ることは異例だ。
「様子はどうだ。」
「はい、皆快方に向かっています。」
「そうか、手を止めさせて悪かったな。座って良い。」
ケフカ将軍はそう言って、ゆっくりと歩き回り始めた。
(どうして、急に来たんだ。)
私は不意の訪問に驚いていた。
深夜でその場にいる衛生兵の数は多くない。
目撃者は少ないだろう。
はういえばセリス分隊長はケフカ将軍に師事していると聞いたことがあった。
(まさか、心配になって来たのか?)
私は驚きと共にぎょっとする。
通常は師団の長が特定の者を見舞いに来るということはまずない。
特定の者に会いに来たとなれば、団の士気に関わるからだ。
テントの中には他にも怪我人はいたが。
しかし。
そんなことを思っていると、
「この後も頼んだ。」
そう言ってケフカ将軍はあっさりと立ち去っていった。

その数分後に交代の時刻になり、私はテントを出た。
冷たい空気が支配していた。
細い三日月が佇んでいた。

寝所に行く通りがかりに、ぼんやりとした明かりが見えた。
誰か眠れずに外に出たのかと思い、良く見ると、ケフカ将軍が一人、煙草を燻らせていた。
私は驚いた。
(もう数時間もすれば、戦いが始まるというのに、まだこんな所に?)
ケフカ将軍が、月を眺めながら、ふぅーっと煙を吐いた。
寒空の下、煙が広がるのが良く見える。
この人が煙草を吸っているのを今まで見たことは無い。
吸わない人だと思っていたが。
そんなことを思う。
周りはしんとしている。

ケフカ将軍は少しだけせき込んで、煙草を捨て踏み消した。
そして髪をかき上げて、また月を見た。
(眠れないのだろうか。)
(本当にセリス分隊長が心配で?)
指揮官としての姿とは打って変わった様子が意外で、ささいな邪推が現実味を帯びていく。
器用な人物だと思っていたが、案外そうでもないのだろうか。

ケフカ将軍は月の如き人物かもしれない。
満月のように大きくもあれば、三日月のように細くもある。

私はあの時、三日月のあの人を見たのだ。

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