2時間後。
室内の人は事務方の人間を含め、数える程になっていた。
2人の作業も終わりに差し掛かり、レオはほっとしていた。
「手伝わせてしまってすみません。」
「いや、気にするな。…んっ。」
ケフカはレオの言葉に応えようとするが、不意にせき込んでしまう。
「失礼。」
ケフカは顔を横に向けて謝った。
「いえ。」
レオが見ている分には、ケフカは先ほどから咳払いを何度もしていた。
少し喉が痛んでいるのだろうか。
そういえば日が落ちてから、寒さが急激に厳しくなってきた。
この部屋の暖房は夜間ある程度の時刻になると停止する仕様で、夜になると屋内とはいえ壁や床から冷気が伝わってくる。
細身のこの人には寒さが堪えるのかもしれない、とレオは思った。
「宜しかったら、この後、後輩に飯を奢らせてもらえませんか?」
レオは言った。
「は?」
レオの突然の提案にケフカは驚き、少し素っ頓狂な声を上げる。
「え?」
レオはケフカの反応に若干面を食らい、二人は顔を見合わせた。
「あの…。」
レオは自分の言葉が無意識に出てしまった事に気付いたが、もう後の祭りだった。
「この後、打ち合わせをすると言ったはずだが。」
ケフカは言う。
「…でも、ここは寒いですし、それに誕生日ですから。」
自分が背負ってしまった余計な仕事を手伝わせている今の状況で、それは言うべき事だろうか。
レオは内心そう感じながらも、口を告いだ言葉は意思に反していた。
「…良いですか?」
そう言ってレオはケフカの様子を窺う。
叱責されても仕方無いと思いながら。
「……。」
ケフカは少し考えて
「ふん、分かった。」と答えた。
レオの表情に喜色が浮かぶ。
「良かった。」
レオの提案を受けて、ケフカは朝から何も食べていなかった事を思い出した。
「さっさと終わらせて、君が連れていってくれる所で話そう。」
「ええ。」
「さて、30の誕生日に何を奢ってくれるんだろうな。この忙しい時に俺の手を煩わせた訳だから、さぞや…。」
ケフカは悪戯めいた様子で言う。
「あ…はは…は…。」
ケフカのプレッシャーに、まだ大してプランの無かったレオは焦りを感じ始めた。
「楽しみだ。」
ケフカは頬杖をついて、にやりと笑った。
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