日没をとうに過ぎた帝国軍施設のある一室。
レオは事務方の書類整理の仕事を手伝っていた。
歳末の様々な慌ただしさの中、将軍という身分のレオが忙しくないはずは無かったが、
彼は事務方にはいつも世話になっているという理由で、業務の手伝いを引き受けた。
それともう一つ、彼がまるで時間潰しとも言える行為をしている理由。
「レオ将軍、少し時間良いか?」
背後から声がして、レオは振り返り
「はい。」と 返事をする。
声の主はケフカ。
レオはケフカを待っていた。
「例の件だ。」
ケフカの用は以前から予定していた打ち合わせである。
ケフカもまた忙しくしており、今度の打ち合わせも、数度の延期を重ねていた。
ケフカは皇帝から直接用命を受ける事が多いが、最近はそれに拍車がかかっているようだった。
そのせいか、朝見かけた時には身に纏う雰囲気にピリピリとした緊張感が混じっていた。
しかし、今は幾分ほっとしているようだと、レオは感じた。
「あれ?」
手にしている書類をまとめるために、一瞬書面に目をやったレオはある点に気付く。
「どうした。」
ケフカは訝しげに聞いた。
「今日、誕生日では?」
レオはケフカの方を向いて聞いた。
「?」
不意の質問にケフカは一瞬思いを巡らせる。
さっきまで先々の予定に関する業務に忙殺されていたケフカは、日付の間隔が曖昧だった。
「…ああ。11月19日がそうだが。」
ようやく自らの誕生日を思い出して、ケフカは答えた。
「しかしそれを何故君が知っているんだ。」
ケフカは疑問を口にする。
レオに誕生日などを知らせた事などあっただろうか。
「これに書かれています。」
レオは例の書類をケフカに見せ、ケフカはそれを受け取る。
それは帝国軍に所属する人物の簡単なプロフィールが書かれた物で、そこには確かにケフカの誕生日が書かれていた。
「○○年生まれ…。」
「今日で30になる。」
レオは生年からケフカの年齢を推察するが、ケフカは先んじて答えた。
「30歳ですか。」
「ああ。三十路さ。…そういえば君は幾つだった?」
ケフカは自分の年齢に関しては興味無さ気な様子で、逆にレオの年齢を尋ねる。
「私は▽▽年生まれで、25歳になります。」
「そうか。」
ケフカはレオに対して、外見は老けているが年相応か。と思ったが口には出さなかった。
「シド博士は40から来るぞと言っていたな。」
ケフカは年齢の話題で思い出す。
「来る?」
「体に。だろう。博士のここ、見たか。」
ケフカは腹の辺りを押さえて言った。
「ああ……。」
シドの丸々とした腹を思い出して、レオは苦笑いする。
「年々大きくなっている。」
「そういえば。」
「研究所の白衣でも、もう隠しきれないと言っていた。」
「ぷ。」
レオは噴出した。