ひとしきり軽口を叩いてから、レオは尋ねる。
「30歳になられて、何か変わりますか?」
「?いや…。30だからといって変わったと思う事は特にない。任務だったり、何かターニングポイントを経て変わる事の方が大きい。」
ケフカは答えた。
「ターニングポイント…。」
レオはケフカの言葉を反芻する。
自分にとってのターニングポイントは何になるのだろうか。
レオにはまだ分からなかった。
「さて話をしようと思ったが、その紙の山は?」
ケフカは聞いた。
レオの机の周りに積まれている書類の山。
それは周囲と見比べても、異質な光景だった。
「事務官の、手伝いをしていましたので。」
ケフカに指摘されて、レオはしまったというような表情をする。
幾らなんでも沢山引き受けすぎたと今更になって気付いたのだ。
これでは本来の業務より他の部署の仕事を優先していると捉えられても仕方がない。
レオは後悔した。
1人で今日中に終わらせられる量ではない。
何ぶんケフカを待たせる事になってしまう。
どちらにしろ、迷惑がかかってしまうだろう。
レオの幾分慌てた風を感じて、ケフカは周囲の事務官の様子を見る。
彼らは廊下をバタバタと慌しそうに歩きまわり、猛然と作業をしているようだった。
今度の遠征に端を発する種々の手続きが多いのだろうと思う。
彼らはもともと人手が多いわけではない。
「仕方ない。手伝ってやる。」
ふうとため息をついて、ケフカは言った。
大方、事務官らが忙しそうにしている様子を、人の良いレオが気の毒に思い、手に余る量の仕事を引き受けてしまったのだろう。
(義理堅い奴。)ケフカは思う。
「そんな、手伝ってくださるなんて…。」
レオはケフカの申し出に驚く。
ただでさえ時間が無い中なのに、これでは余計な仕事を増やしてしまう事になる。
「しかしそれが終わらないと話が出来ないだろう。」
ケフカは言った。
「しかし。」
「そもそも、こっちの都合で大分君を待たせた。だから構わない。」
ケフカは言う。
「いや…。」
「ほら、何をすれば良い?」
言い淀むレオを余所に、ケフカは急かした。
「すみません、ええっと…。」
レオは急かされるままに、ケフカ手順を知らせる。