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ケフカについて書きます。二次創作あり(文章) 小話「数年前121~123」更新しました。(2015年8月9日)
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 その日、彼は機嫌が良さそうに見えた。
鼻歌混じりで廊下を闊歩している、目立つ服装をした男。
歩きながらも、あれこれ思い浮かべているようで、落ち着きが無かった。
すれ違う人間は、慣れているようだったが、目を合わせるどころか、見る事もしなかった。

「ただいまー。」勢いよくドアを開けると、彼は部屋の奥に向け声をかけた。
少女がいた。椅子に行儀良く座っている。
背筋はきれいに伸びていて、手はきちんと膝の上に置いてある。
彼は少女の目の前まで来て、話しかけた。
「待ったかい?」
彼はしゃがみこんで少女の顔を見上げたが、彼女は真正面を見たまま、何も言わない。
「そうかー。」
彼はありもしない少女の応えに相槌を打った。
「僕におかえりなさい、って言ってごらん?」
彼は上機嫌そのものといった様子で促した。
「おかえりなさい。」
少女は言われたとおりに、彼の顔を見て、言った。
「良く言えたねー。」そう言って笑みを浮かべ、彼は少女の頭を乱暴に撫でた。
そのせいで長く下ろされた彼女の髪が少し乱れたが、彼はあまり気にしなかった。
「ちょっと待ってて。これ脱いでくるから。」彼は自分の上着を指して言った。
脱ぎながら急いで移動したもんだから、テーブルにドンとぶつかった。

その間も、少女はずっと同じ体勢、同じ表情で座っていた。

 
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  少女の額には金属の装飾具が嵌められていた。
あやつりの輪、といった。
身に付けた人間の意思を奪い、意のままに操る事の出来る道具。
元々は軍事用の名目で、彼ケフカが作った物だった。
少女は操られていた。

「元気にしてたかい?」
「ふーん、そう?それで?」
彼は何も言わない少女から、今日あったことを聞いて、会話をした。
途中、火傷しない温度のお茶を飲み、飲ませながら、それは続いた。
いつの間に少女は、彼の方を向いていた。

「そうだね。今度はね、北の国に行こう。」
彼は仕事のパートナーでもある彼女に、今後の予定を話し出した。
「君ならきっとやり遂げられる。」「ナルシェなんて君の力にかかれば、イチコロさ。」
彼女が不安がっていたので、彼は褒めて自信を付けさせようとする。
「どうしたの?そうか、女の子だもんね。少し怖いかもしれないな。」
「大丈夫、君はとっても強いんだ。」
彼は少女の手を取り、不安を取り去ってやるかのように、元気付ける。
「君は僕と同じだからねー。」
彼は立ち上がって、少女を眺めた。

「僕みたいな持ち主がいて、君は幸せだよ。」
そう呟いて、彼はゆっくりと、少女のその小さな顔を両手で包み込む。
あたたかな、体温。
ほんの少しウェーブの掛かった髪の毛を潜り、白く細い首に手のひらを添える。
そして力を込めた。
握りつぶすつもりで、ぎりぎりと締め上げた。
それでもあやつりの輪を付けられた少女は、身じろぎもしなかった。
ただ、少し苦しそうに、口を開けた。

少しして、彼は手に込められた力を抜いた。
真っ赤になっていた少女の顔色が、少しずつ元に戻る。
死んでしまうのが惜しくなった。
もう遊べなくなるのが、嫌だった。

「そうだ。今日は何をして遊ぼうか?あ、かわいい服を見つけたんだ。似合うかなー?」
気を取り直して彼は言う。
少女もまた、いつもの表情でおとなしく座っていた。
彼は包みを開け、買ってきた物を広げて見せた。
赤を基調とする花の模様が散りばめられた女の子らしい服。
それはケフカから少女に贈られた5番目の服だった。

  ケフカは私にとって「父親」のような存在だった。
生まれて間もなく帝国にさらわれ、ケフカに育てられた。
偶然、そのもとを離れ、仲間と呼べる人達に出会った。
彼らとの出会いにより、私は感情を持っていないことに気付かされた。
悲しかったら泣けばいい、楽しかったら笑えばいい。
赤ん坊でも出来る単純な行動。
でも、悲しいって何?楽しいって何?愛するって何?
そんな単純な事が、人間にとってはとても大事だ。
ケフカは様々な感情を表現してくれていたが、私にとってそれは一瞬の儚い物として位置付けられた。
怒り狂ったかと思えば、笑い、笑ったかと思えば、悲しみ、そうかと思えば無表情。
この人の表現の後には、決まって何も積み上がることは無かった。
相手がいても、ケフカは決して向き合ってはいないから、関係が築かれることはない。
独りよがりと捉えられる行動はただ疎まれるだけ。
離れて分かったことがある。
ケフカは楽しくもないのに笑い、腹が立ってもいないのに怒っていた。
笑い方は覚えていても、元になる感情を忘れてしまったのか。
他者と対峙する肉体と、本当の自分が、ばらばらなんだ。
悲しかったら泣けばいい、楽しかったら笑えばいい。
人間として生まれながら、人間として生き損なった、哀れな人。
あなたも誰かのために生きられたら良かったのに。
 
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